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……罪な人
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「一年待ったわ。でもダメだった。魔がさしたと言われたらそれまでだけど、不倫は悪いことだって分かってるけど、千秋君に縋ってしまった。千秋君に優しくされて、私の事を分かってくれるのは千秋君しかいなかった」
美奈子の口から千秋をずっと千秋君と呼ばれても、美紅はもうなにも感じなかった。
ただ、自分勝手な美奈子に対する怒りだけは収まらない。
「……それでもあなたがした事は絶対許せない。どうして人のものばかり欲しがるんですか?」
一番聞きたかった事を美紅は尋ねる。
「たっ君に恋人がいる事は、ちゃんと知ってましたよね?」
「……ええ。知ってました。でも亘理さんは魅力的だったんです。初めは外見がとても好みだった。でも恋人を大事にする内面とか知るうちに、私のことも……あなたのように愛してくれると思ったから」
龍彦なら年下で若くて、セックスレスに悩まされることもないと思ったとは、さすがの美奈子も言えなかった。
美紅は美奈子の勝手な言い草を聞いていて苛つく。
美奈子の考えはおかしいと思った。
「あなたのようにって、私のなにを分かってるんですか?あなたと私は違うんですよ?」
一緒にされたくないと美紅はきっぱり反論した。
「確かに私とあなたは違います。でも、亘理さんと恋人になれたら、裕介の時とは違って、きっと幸せになれると思ってしまいました」
美奈子がどうしてそう思えるのか美紅は不思議だった。
裕介は確かに静かな人だが、優しくて思いやりがある人だと美紅は思っている。
今だって沙優に対してとても紳士的で、好きになった相手に不義理をする様には見えない。
「裕介さんとあなたの夫婦生活のことは分からないけど、結婚していた時は、裕介さんはきっとあなたのこと信じて大切に愛してくれていたと思います。それなのに裏切ったのはあなたですよ」
裕介との結婚生活に後悔しているような美奈子の言い方に、裕介と美奈子の夫婦生活のことは分からないが、美紅は裕介の肩を持ってしまった。
「そうね。裏切ったのは私だものね」
美奈子は裕介の事を思い出しながら、女としての自分のプライドを傷つけられた事を思い出していた。
週に一度のセックスならまだ我慢できた。でもレスになって自分から、裕介を求めることが出来なかった。途中で辞められてしまうのが嫌だった。
キスして抱きしめられるだけじゃ、優しい愛撫だけでは納得できなかった。
体の奥底まで、深く激しく痺れさせて欲しかった。
「裕介に千秋君のことがバレて別れて、千秋君も結局私から離れて。突然一人になって寂しかった。そんな時に亘理さんと知り合って、振り向かせたいって思ってしまったの」
千秋のように、龍彦も自分に対して好意を持ってくれるのではないかと美奈子は思った。今までの恋愛経験からも、振り向いてもらえる自信もあった。
「千秋さんとの事は、もう私も何も言うつもりはありません。言ったところでどうにもならないし」
美紅の本心だった。
その事で美奈子を今更責めても、龍彦を愛してしまった以上、千秋とヨリを戻すこともないのだから。
美奈子の口から千秋をずっと千秋君と呼ばれても、美紅はもうなにも感じなかった。
ただ、自分勝手な美奈子に対する怒りだけは収まらない。
「……それでもあなたがした事は絶対許せない。どうして人のものばかり欲しがるんですか?」
一番聞きたかった事を美紅は尋ねる。
「たっ君に恋人がいる事は、ちゃんと知ってましたよね?」
「……ええ。知ってました。でも亘理さんは魅力的だったんです。初めは外見がとても好みだった。でも恋人を大事にする内面とか知るうちに、私のことも……あなたのように愛してくれると思ったから」
龍彦なら年下で若くて、セックスレスに悩まされることもないと思ったとは、さすがの美奈子も言えなかった。
美紅は美奈子の勝手な言い草を聞いていて苛つく。
美奈子の考えはおかしいと思った。
「あなたのようにって、私のなにを分かってるんですか?あなたと私は違うんですよ?」
一緒にされたくないと美紅はきっぱり反論した。
「確かに私とあなたは違います。でも、亘理さんと恋人になれたら、裕介の時とは違って、きっと幸せになれると思ってしまいました」
美奈子がどうしてそう思えるのか美紅は不思議だった。
裕介は確かに静かな人だが、優しくて思いやりがある人だと美紅は思っている。
今だって沙優に対してとても紳士的で、好きになった相手に不義理をする様には見えない。
「裕介さんとあなたの夫婦生活のことは分からないけど、結婚していた時は、裕介さんはきっとあなたのこと信じて大切に愛してくれていたと思います。それなのに裏切ったのはあなたですよ」
裕介との結婚生活に後悔しているような美奈子の言い方に、裕介と美奈子の夫婦生活のことは分からないが、美紅は裕介の肩を持ってしまった。
「そうね。裏切ったのは私だものね」
美奈子は裕介の事を思い出しながら、女としての自分のプライドを傷つけられた事を思い出していた。
週に一度のセックスならまだ我慢できた。でもレスになって自分から、裕介を求めることが出来なかった。途中で辞められてしまうのが嫌だった。
キスして抱きしめられるだけじゃ、優しい愛撫だけでは納得できなかった。
体の奥底まで、深く激しく痺れさせて欲しかった。
「裕介に千秋君のことがバレて別れて、千秋君も結局私から離れて。突然一人になって寂しかった。そんな時に亘理さんと知り合って、振り向かせたいって思ってしまったの」
千秋のように、龍彦も自分に対して好意を持ってくれるのではないかと美奈子は思った。今までの恋愛経験からも、振り向いてもらえる自信もあった。
「千秋さんとの事は、もう私も何も言うつもりはありません。言ったところでどうにもならないし」
美紅の本心だった。
その事で美奈子を今更責めても、龍彦を愛してしまった以上、千秋とヨリを戻すこともないのだから。
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