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……罪な人
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千秋は業務提携先の、東堂ホールディングスの環と飲みに行く約束をしていたので待ち合わせ場所の店へ入った。
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
ビールで乾杯して、千秋と環は雑談に花を咲かせる。
「真壁さん。一応、報告しておきますね」
話が一旦落ち着いた時、千秋は美紅のことを話そうと襟を正す。
「なになに?彼女ができたとか?」
改まった感じにニヤニヤして環は尋ねた。
「違いますよッ。俺のことじゃなくて、美紅のことです」
もう美紅のことは話題にしないと環は決めていたので、それなのに何の報告が有るのかと環はキョトンとする。
「俺、ちゃんと美紅を諦めました」
「はい?まだ諦めてなかったの?西川さんて、結構引き摺るタイプだったのね」
環の突っ込みに、確かにねちっこいタイプだなと、それが災いして美紅を失ったのだからと、千秋は自分でもそう思いながら自虐的に笑った。
「正直、美紅の今の男から美紅を奪いたいと足掻いてました。勝算はもちろんゼロだったんですけどね」
チャレンジャーだなと環は内心思った。
「美紅ちゃんから聞いてるけど、彼氏ってあの亘理君でしょ。よく勝算あると思ったね」
辛口だなと千秋は苦笑する。
「それでも諦めきれなかったから。でも、もう全て終わりました。だから全て断ち切ります。今は素直に美紅と亘理に幸せになって欲しいと思ってます」
そう語る千秋に環は微笑む。
「そう思えるようになって良かった。西川さんも、次は後悔しないようにね」
釘を刺されて千秋はあははと笑う。
「真壁さんこそ東堂常務とはどうなんですか?」
プライベートな話を突っ込まれて環はウッとなる。
「もう随分と、常務から熱烈にアピールされてるって有名ですからね」
仕返しとばかりに千秋は口撃する。
「ジュニア、常務とはどうにもならないわよッ。良いの。私は仕事と目の保養が有れば生きていける」
そう言い切る環に、全く勿体無いなと思いながら千秋は笑う。
「私はさ、結婚だけが幸せだとも思ってないし、独身でいることが幸せだとも思ってもいない。自分のスタイルに合っているのが幸せで、自分らしくありたい。美紅ちゃんも、今そうやってイキイキとしてるもの」
環らしいと千秋も納得し、美紅も充実しているんだと安心した。
「美紅ちゃんの事も決着ついたのなら、西川さんも次に向かわないとね。結局あなた達の間に何があったかは分からないけど、もう二度と同じ過ちを繰り返さないようにね」
厳しいながらも環の瞳は暖かくて、千秋はホッとして頷いた。
「そうですね。俺は美紅を悲しませてしまったけど、背負っていく罪は消えることはないけど、自分がした事の責任は、これからは逃げずに取っていきたいと思います」
これからもずっと孤独が続き、美紅に対して自分のした事に後悔しながら生きていくんだろうと千秋は思いながら、今は美紅が幸せになったことを本心で祝福した。
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
ビールで乾杯して、千秋と環は雑談に花を咲かせる。
「真壁さん。一応、報告しておきますね」
話が一旦落ち着いた時、千秋は美紅のことを話そうと襟を正す。
「なになに?彼女ができたとか?」
改まった感じにニヤニヤして環は尋ねた。
「違いますよッ。俺のことじゃなくて、美紅のことです」
もう美紅のことは話題にしないと環は決めていたので、それなのに何の報告が有るのかと環はキョトンとする。
「俺、ちゃんと美紅を諦めました」
「はい?まだ諦めてなかったの?西川さんて、結構引き摺るタイプだったのね」
環の突っ込みに、確かにねちっこいタイプだなと、それが災いして美紅を失ったのだからと、千秋は自分でもそう思いながら自虐的に笑った。
「正直、美紅の今の男から美紅を奪いたいと足掻いてました。勝算はもちろんゼロだったんですけどね」
チャレンジャーだなと環は内心思った。
「美紅ちゃんから聞いてるけど、彼氏ってあの亘理君でしょ。よく勝算あると思ったね」
辛口だなと千秋は苦笑する。
「それでも諦めきれなかったから。でも、もう全て終わりました。だから全て断ち切ります。今は素直に美紅と亘理に幸せになって欲しいと思ってます」
そう語る千秋に環は微笑む。
「そう思えるようになって良かった。西川さんも、次は後悔しないようにね」
釘を刺されて千秋はあははと笑う。
「真壁さんこそ東堂常務とはどうなんですか?」
プライベートな話を突っ込まれて環はウッとなる。
「もう随分と、常務から熱烈にアピールされてるって有名ですからね」
仕返しとばかりに千秋は口撃する。
「ジュニア、常務とはどうにもならないわよッ。良いの。私は仕事と目の保養が有れば生きていける」
そう言い切る環に、全く勿体無いなと思いながら千秋は笑う。
「私はさ、結婚だけが幸せだとも思ってないし、独身でいることが幸せだとも思ってもいない。自分のスタイルに合っているのが幸せで、自分らしくありたい。美紅ちゃんも、今そうやってイキイキとしてるもの」
環らしいと千秋も納得し、美紅も充実しているんだと安心した。
「美紅ちゃんの事も決着ついたのなら、西川さんも次に向かわないとね。結局あなた達の間に何があったかは分からないけど、もう二度と同じ過ちを繰り返さないようにね」
厳しいながらも環の瞳は暖かくて、千秋はホッとして頷いた。
「そうですね。俺は美紅を悲しませてしまったけど、背負っていく罪は消えることはないけど、自分がした事の責任は、これからは逃げずに取っていきたいと思います」
これからもずっと孤独が続き、美紅に対して自分のした事に後悔しながら生きていくんだろうと千秋は思いながら、今は美紅が幸せになったことを本心で祝福した。
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