田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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8ずるい・エビチリ

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付き合い始めて初めての夕飯。
今日も仲良く買い物から帰ってきた諭と田辺。
冷蔵庫に田辺は食材をしまう。

「今日は何作るんですか?」

海老を見ながら田辺は尋ねる。

「海老マヨとエビチリ、どっちにしようかと悩んでエビチリに決めた」

エビチリの素を見せながら諭は言う。

「へー。エビチリなんて作れるんですね」

「だから、これを混ぜればOKなんだなぁ」

田辺はエビチリの素の箱を取り上げる。

「えーと、海老は殻を剥いて背腸を取り、良く汚れを落として水気を取ります。片栗粉をまぶして油で揚げて」

「嘘ッ!そんなに面倒なことすんのかよッ!ただ炒めて素を絡めるんじゃなかったのかよッ」

びっくりして諭は、田辺からエビチリの素の箱を取り返す。

「うわぁ。ちゃんと読んでなかったぁ。えー、片栗粉なんてないよぉ。買いに行かなきゃ」

諭が困った顔をしていると、田辺は屈んで諭のほっぺにキスをした。
びっくりして諭は田辺を見る。

「なッ!……………急になんだよッ!」

真っ赤になってキスされたほっぺを手で覆って田辺を見る。

「あたふたする諭先輩が可愛いって思って」

普通にサラッと言う田辺。
ほっぺにキスだけで舞い上がる諭。

「だって、田辺、海老が好きって言ってたからッ。どうせなら、付き合って初めての夕飯は、好きな物で作ってあげたいって」

真っ赤になって照れながら言う諭。
田辺は優しい目で諭を見た。
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