田辺君はずるいから

19ずるい・初デート

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「映画面白かった！やっぱり映画館は良いねッ！」

嬉しくてはしゃぐ諭。

「確かに面白かったけど、俺は諭先輩の方が楽しかった」

ニヤリと笑って田辺が言うと、諭は真っ赤になる。



2人が座ったのは、田辺が用意してくれたカップルシートだった。
座り心地の良いソファのようなシート。
背もたれが高くて、隣の席とも仕切られているので完全に独立している。
専用ラウンジで寛いだ後、ウェルカムドリンクのシャンパンを座席に持ってくることもできて、諭にとってまるで次元の違う体験だった。
ドキドキしながらシートに身を沈め、映画が始まって直ぐ、田辺が諭の手を握って来た。

「田辺……………手」

小声で田辺に囁く諭。

「暗いから良いでしょ？ダメですか？」

ダメなんて事は全くなく、逆に嬉しい諭。
自然とお互い寄り添い、諭は田辺に寄りかかる。
田辺は諭に腕を回し、諭の頭を撫で続けた。
諭も最初は周りが気になったが、そのうち映画の内容が楽しかったのと、田辺のおかげでリラックスもできて、特別な時間を楽しめた。



「こんな素敵なデート、初めてだしッ！田辺、上手すぎじゃん！」

嬉しかったものの、田辺のスマートさにまたまた諭は嫉妬する。

「そうですか？カップルシートって初めてだったから、どんなもんかと思ってたけど、諭先輩が楽しんでくれたなら良かったです」

余裕の笑みで田辺が初めてのことをしたと言うと、諭は嫉妬した事が恥ずかしくなった。


もう、本当に毎日ずるいよッ！
部屋だったら抱きついてるもん！


別の意味で悶々とし始める諭だった。