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27ずるい・寂しい
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姉の結婚式に出席するために、久しぶりに実家に戻った諭。
「って、明日結婚式だってのに、なんで酒盛りしてんの?」
流石に姉の姿はないが、諭の両親と父親の妹夫婦が大いに盛り上がってる。
「諭も飲めッ!ほらほら!」
叔父がビールをグラスに注いでくれるが、溢れるので諭は慌てる。
「叔父さん!もう酔ってるじゃん!」
「全くよー!娘なんてさぁ!結局外に出ていっちまうもんなー!」
寂しくてクダを巻く父親を見て諭は優しい目を向ける。
「諭!お前もどうせ東京から戻って来ないんだろ?」
父親が諭に向かって絡んでくる。自分に降りかかり諭は引き気味になる。
「どうせ、ねーちゃん近くに住むんだから良いじゃん!俺も年取ったらちゃんと戻るからッ!」
ずっと田辺が浮かんで、実家に戻るとは素直に言えなかった。
「うちの仁哉だって、いつこっちに帰ってくるか分かりゃしない。盆暮れだって戻って来やしねー」
従兄弟の仁哉の話になって、同じ東京にいても、もうずっと会ってないなと思った。
田辺と仁哉は会っているが、その後まだ会う機会がなかった。
「ねぇ!もうそろそろ寝たほうが良いよッ!俺、先に部屋に戻るからね!」
面倒臭くなってきて諭は退散する事にした。
花嫁の父も大変だと、少しだけ父親が可哀想だと思いながらも笑ってしまった。
【起きてる?晩ご飯ちゃんと食べた?】
自分の部屋のベッドの上で諭は田辺にLINEをする。
既読がすぐにつき、ポンと返信が来た。
【食べました。味が染みてて美味しかったですよ】
遠くにいても繋がってると思うと諭はホッとする。
【諭先輩の部屋の写真送ってください。どんな部屋か興味ある】
部屋の中の写真かぁ。と思いながら部屋を見渡す。
机はもう処分したので、ベッドとテレビと本棚しかない。
諭は数枚写真を撮るとLINEに載せた。
【ここでずっと生活してたんだ。俺も諭先輩の実家にいる気分になれました】
それを読んで、諭は微笑んだ。
そして電話をかける。
「もしもし。寂しい?」
クスクス笑いながら諭は尋ねる。
田辺は無言。
「おーい、なんか言ってよぉ。俺は早く田辺に会いたいよ。早く明後日になって帰りたいよ」
正直に素直に諭は言う。
『俺も早く会いたいです。帰ってきたら抱き潰します』
ご機嫌斜めの声に諭は笑う。
「うん。日曜日、お昼過ぎには帰るね」
『…………寂しいです』
田辺の弱々しい声に諭は胸が切なくなる。
「もう。ずるいよぉ。そんな声で言うなよぉ」
一気に諭も寂しくなる。
素直な田辺が愛おしくて仕方ない。
「大好きだよ」
『大好きです』
その後、田辺の寝息が聞こえるまで、諭は電話を切れなかった。
「って、明日結婚式だってのに、なんで酒盛りしてんの?」
流石に姉の姿はないが、諭の両親と父親の妹夫婦が大いに盛り上がってる。
「諭も飲めッ!ほらほら!」
叔父がビールをグラスに注いでくれるが、溢れるので諭は慌てる。
「叔父さん!もう酔ってるじゃん!」
「全くよー!娘なんてさぁ!結局外に出ていっちまうもんなー!」
寂しくてクダを巻く父親を見て諭は優しい目を向ける。
「諭!お前もどうせ東京から戻って来ないんだろ?」
父親が諭に向かって絡んでくる。自分に降りかかり諭は引き気味になる。
「どうせ、ねーちゃん近くに住むんだから良いじゃん!俺も年取ったらちゃんと戻るからッ!」
ずっと田辺が浮かんで、実家に戻るとは素直に言えなかった。
「うちの仁哉だって、いつこっちに帰ってくるか分かりゃしない。盆暮れだって戻って来やしねー」
従兄弟の仁哉の話になって、同じ東京にいても、もうずっと会ってないなと思った。
田辺と仁哉は会っているが、その後まだ会う機会がなかった。
「ねぇ!もうそろそろ寝たほうが良いよッ!俺、先に部屋に戻るからね!」
面倒臭くなってきて諭は退散する事にした。
花嫁の父も大変だと、少しだけ父親が可哀想だと思いながらも笑ってしまった。
【起きてる?晩ご飯ちゃんと食べた?】
自分の部屋のベッドの上で諭は田辺にLINEをする。
既読がすぐにつき、ポンと返信が来た。
【食べました。味が染みてて美味しかったですよ】
遠くにいても繋がってると思うと諭はホッとする。
【諭先輩の部屋の写真送ってください。どんな部屋か興味ある】
部屋の中の写真かぁ。と思いながら部屋を見渡す。
机はもう処分したので、ベッドとテレビと本棚しかない。
諭は数枚写真を撮るとLINEに載せた。
【ここでずっと生活してたんだ。俺も諭先輩の実家にいる気分になれました】
それを読んで、諭は微笑んだ。
そして電話をかける。
「もしもし。寂しい?」
クスクス笑いながら諭は尋ねる。
田辺は無言。
「おーい、なんか言ってよぉ。俺は早く田辺に会いたいよ。早く明後日になって帰りたいよ」
正直に素直に諭は言う。
『俺も早く会いたいです。帰ってきたら抱き潰します』
ご機嫌斜めの声に諭は笑う。
「うん。日曜日、お昼過ぎには帰るね」
『…………寂しいです』
田辺の弱々しい声に諭は胸が切なくなる。
「もう。ずるいよぉ。そんな声で言うなよぉ」
一気に諭も寂しくなる。
素直な田辺が愛おしくて仕方ない。
「大好きだよ」
『大好きです』
その後、田辺の寝息が聞こえるまで、諭は電話を切れなかった。
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