田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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28ずるい・離れるの禁止

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田辺の宣言通り、真昼間から抱き潰された諭は、幸せそうな顔で眠っている。
田辺はだるい腰を支えながらシャワーを浴びて、腰にバスタオルを巻いただけの姿でベッドに腰かけた。


まーったく、幸せそうな顔して寝てるよ。


田辺はフフフと笑って諭の髪を撫でる。


たった2泊離れただけでこんなに恋しくなるとか、俺、どうしちまった?
帰ってきた顔見ただけで、めっちゃ欲情するとか、俺から離れたことが許せないとか、これって俗に言う独占欲ってヤツ?


「こんなに本気にさせるとか、マジ責任とってくださいよ」

撫でていた髪に顔を近付けてキスをする。
自分の香りのする諭が愛おしくて仕方ない。

「んんッ」

田辺の熱で諭は目をうっすら開ける。

「た、なべ?」

まだ開ききってない目を細めながら笑顔になる諭。

「大丈夫ですか?」

「だいじょーぶ。じゃない!もうッ!気持ち良すぎて、死んじゃうかと思っただろッ!」

諭の表現に田辺はプッと笑う。

「死ぬわけないでしょ。大袈裟だな」

田辺は諭にキスする。
柔らかな諭の唇と舌を堪能。

「…………やっぱり、死んじゃいそう」

唇が離れると、田辺を見つめながら諭が笑顔で言う。

「だから、大袈裟ですよ」

「幸せすぎて、胸がキューンってなる。ドキドキって早くなる。心臓止まりそう」

田辺は聞きながら、目は諭に釘付けになる。

「こんな風にする、田辺はずるい」

諭は笑顔のまま、田辺の首に腕を回して抱きつく。
田辺はフッと微笑むと、諭を抱きしめて髪を撫で続けた。
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