田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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39ずるい・モテる彼氏

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「あー!菱田君!」

八尋はキャンパス内を歩いていると、諭に声をかけられた。

「あ、内名さん。こんにちは。先日はごちそうさまでした」

「いえいえ。あの後まだ2人で盛り上がってたの?先に帰ってごめんね」

諭の顔を見ているだけで田辺を思い出して、八尋は真っ赤になる。

「いえッ!内名さんは田辺さんと」

「ん?」

諭の笑顔に、場所もそうだが、それ以上突っ込んで聞けなかった。

「あ、いえ、あの後内名さんはどうしたのかなって思って」

「えっと、田辺の部屋に、泊まった」

頬を染めて恥じらう諭。
その顔にドキンとする八尋。


うわッ!
めっちゃかわええ!
あんな写真見たせいか、普段の内名さんでも十分かわええッ!


諭を見てハァハァしだす八尋。
その時、背中に激痛が走った。

「あうッ!」

変な声を上げて八尋は前のめりになる。

「てめぇ。何、諭先輩に対してだらしねぇ顔してんだよ」

八尋の背中に蹴りを入れたのは田辺だった。

「ちょっと!何するんですかッ!だいたい背中から来てて、俺がだらしない顔してるかなんて分かんないでしょうがッ!」

「背中を見ていただけで分かる」

絶対嘘だと冷ややかな目で八尋は田辺を見る。

「良いか?俺の断りなく、諭先輩に半径5m以内に近づくんじゃねぇ」

それは無理だろうと諭も苦笑い。

「もう、田辺、だめだろ。菱田君大丈夫?」

諭が八尋の背中をさする。
田辺はプイッと横を向く。

「大丈夫です。優しくしないでください。目の前の鬼が怖いんで」

八尋が田辺に向かって言うと、田辺は仁王立ちで怒りオーラが漂っていた。

「あははは。菱田君、ごめんね。ほら、田辺、行くよ。全く、蹴ったりしたらダメだろッ」

可愛い顔で少し唇を尖らせて、田辺に対してプンプンしてる顔の諭に八尋はキュンとなる。
諭と田辺はそのまま八尋から離れて行った。


うはッ!
やべぇ。
マジ可愛いわ。
あの可愛さはずるいだろッ!


2人を見送りながらそう思った八尋。
こうしてまた1匹、諭にハマる輩が増えたのだった。
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