甘い蜜と苦い蜜

五嶋樒榴

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始まりとは

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私達夫婦は結婚して12年。私は35歳、夫は37歳。子供は娘の麻奈がもうすぐ12歳。
気がつけばもう5年は、夫とセックスレス。
出産した後、夫はとても淡白になった。
時間が経ってくると、それも仕方ないと諦めた。
仕事も忙しいし、ちゃんと私と娘を養ってくれてるんだからと言い聞かせた。

そんな時、知ってしまった夫の別の顔。
夫に女がいたこと。

相手の女は、私よりも1つ下。
同じ会社の女だった。
淡白になった夫の行動を考えると、私の妊娠中に関係が始まったのかと勘繰ってしまう。
相手の女も結婚している。でも未だ子供はいない。




見なければ幸せだったのかしら。
夫のスマホなんて。
でも、見たくて見たわけじゃない。
光った時、目が行ってしまった。
いつもはカバーをかけている画面が、珍しくむき出しになっていたから。

【今夜、大丈夫です】

たったそれだけが画面に浮かび上がった。
仕事のLINだと思った。

でも、女のカンが働いた。

朝からシャワーを浴びてきた夫がリビングに戻ってきた。

「何かLIN入ってたよ。朝早くから珍しいわね」

私が言うと夫は剥き出しの画面を見て少しビクッとなった。

「ああ、そう?誰かな」

いつもと同じなんだろうけど、私には声が焦ってるように聞こえる。

「……………あー、今夜残業だわ」

「残業?」

私は送られたLINの文章と夫との会話に違和感があった。

「まだ決定じゃないけど、多分ね。だから夕飯はいいよ。どっちにしろ外で食ってくるから」

夫はそう言うと、冷蔵庫から牛乳を出してグラスに入れた。


多分、なんだ。


私はそう思って夫を見る。

「今夜、大丈夫です。って、誰?」

私の言葉に夫は止まった。
まさにフリーズした。

「……………何が?」

夫の声が掠れた。

「さっき来たLINよ」

私は冷静に言った。

「そんなLIN来てたか?見逃したかな」

夫はそう言ってわざとらしくLINを見る。
言い訳を考えているんだろう。





これ以上夫に問い詰めて修羅場になるのも嫌だったから、私は後は興信所の力を借りた。


そして女の正体を掴んだのだった。
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