2 / 206
●終の住処●
プロローグ
しおりを挟む
2021年。
蝉の鳴き声が、まるでこの世の終わりを告げるが如く激しく鳴り響いている。
「まーったく、本当に暑くて堪らんわ」
桑畑征治は隣に並んで歩く、50過ぎの幼馴染の石塚克夫の玉のような汗が、もうだいぶ薄くなって地肌の見える頭皮から吹き出している様を見ながらぼやいた。
「温暖化だからしゃーないさ。東京から来る下見の客は、何時に三島に着くって言ってたっけか?」
石塚はスマホの画面で時刻を確認しながら桑畑に尋ねる。
「確か、11時過ぎに到着するってお前が言ってたじゃねーか。駅からはタクシーで来るんだろ?あと30分ぐらいで到着するだろ」
桑畑は答えるとカバンから鍵を取り出し、玄関のドアの鍵穴に鍵を差してドアを開ける。
「建物は取り壊すって言ってたな。建物の滅失登記は秀樹先生の所か?」
桑畑は石塚に確認しながら、家の中にどんどん入っていく。
「まーだ先方が買うかどうかも決まってないのに、お前は相変わらずせっかちだな。って秀樹先生にあの家の相談してるんだろ?」
やっとタオルで頭の汗を拭きだした石塚も、笑いながら桑畑の後を付いて家の中に入った。
「相談したところでどうにもならんさ」
吐き捨てる様に桑畑は言い、エアコンのスイッチを入れた。
ブーンと室外機が回り始める。
「しかし、俺もまさかお前に売った家が欠陥住宅だとは思わなかったよ。その償いじゃないけど、ここは強気で売ってやるからな」
ドヤ顔で石塚は言い切ると、持ってきた使い捨てのスリッパを四足並べた。
「あ、冷たいモン買ってこようと思ってすっかり忘れとった」
桑畑が思い出したように石塚を見る。
「いいらぁ?どうせじっくり見るのは土地だけだし」
1番汗をかいている石塚は面倒臭そうに答える。
「それでも家にも上がってもらうんだし、俺も喉渇いたし、コンビニで買ってくるわ」
「じゃあ、俺はビールでも頼むわ」
ガハハと石塚が笑いながら、使い捨てスリッパを履いて部屋の奥へ入っていく。
桑畑は玄関に戻り、下駄箱の上に有る皮の手袋をはめると、傘立ての中のゴルフクラブを手に持った。
思い詰めた顔でグッとグリップを握り、そして石塚の背後に静かに近づいて行く。
目標を定めると桑畑は声を張り上げる。
「お前に飲ませるビールはこの先もねーんだよッ!」
桑畑はゴルフクラブを上に振りかざすと、桑畑の声で振り返った石塚の頭目掛けて振り落とした。
蝉の鳴き声が、まるでこの世の終わりを告げるが如く激しく鳴り響いている。
「まーったく、本当に暑くて堪らんわ」
桑畑征治は隣に並んで歩く、50過ぎの幼馴染の石塚克夫の玉のような汗が、もうだいぶ薄くなって地肌の見える頭皮から吹き出している様を見ながらぼやいた。
「温暖化だからしゃーないさ。東京から来る下見の客は、何時に三島に着くって言ってたっけか?」
石塚はスマホの画面で時刻を確認しながら桑畑に尋ねる。
「確か、11時過ぎに到着するってお前が言ってたじゃねーか。駅からはタクシーで来るんだろ?あと30分ぐらいで到着するだろ」
桑畑は答えるとカバンから鍵を取り出し、玄関のドアの鍵穴に鍵を差してドアを開ける。
「建物は取り壊すって言ってたな。建物の滅失登記は秀樹先生の所か?」
桑畑は石塚に確認しながら、家の中にどんどん入っていく。
「まーだ先方が買うかどうかも決まってないのに、お前は相変わらずせっかちだな。って秀樹先生にあの家の相談してるんだろ?」
やっとタオルで頭の汗を拭きだした石塚も、笑いながら桑畑の後を付いて家の中に入った。
「相談したところでどうにもならんさ」
吐き捨てる様に桑畑は言い、エアコンのスイッチを入れた。
ブーンと室外機が回り始める。
「しかし、俺もまさかお前に売った家が欠陥住宅だとは思わなかったよ。その償いじゃないけど、ここは強気で売ってやるからな」
ドヤ顔で石塚は言い切ると、持ってきた使い捨てのスリッパを四足並べた。
「あ、冷たいモン買ってこようと思ってすっかり忘れとった」
桑畑が思い出したように石塚を見る。
「いいらぁ?どうせじっくり見るのは土地だけだし」
1番汗をかいている石塚は面倒臭そうに答える。
「それでも家にも上がってもらうんだし、俺も喉渇いたし、コンビニで買ってくるわ」
「じゃあ、俺はビールでも頼むわ」
ガハハと石塚が笑いながら、使い捨てスリッパを履いて部屋の奥へ入っていく。
桑畑は玄関に戻り、下駄箱の上に有る皮の手袋をはめると、傘立ての中のゴルフクラブを手に持った。
思い詰めた顔でグッとグリップを握り、そして石塚の背後に静かに近づいて行く。
目標を定めると桑畑は声を張り上げる。
「お前に飲ませるビールはこの先もねーんだよッ!」
桑畑はゴルフクラブを上に振りかざすと、桑畑の声で振り返った石塚の頭目掛けて振り落とした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
淡色に揺れる
かなめ
恋愛
とある高校の女子生徒たちが繰り広げる、甘く透き通った、百合色の物語です。
ほのぼのとしていて甘酸っぱい、まるで少年漫画のような純粋な恋色をお楽しみいただけます。
★登場人物
白川蓮(しらかわ れん)
太陽みたいに眩しくて天真爛漫な高校2年生。短い髪と小柄な体格から、遠くから見れば少年と見間違われることもしばしば。ちょっと天然で、恋愛に関してはキス未満の付き合いをした元カレが一人いるほど純潔。女子硬式テニス部に所属している。
水沢詩弦(みずさわ しづる)
クールビューティーでやや気が強く、部活の後輩達からちょっぴり恐れられている高校3年生。その美しく整った顔と華奢な体格により男子たちからの人気は高い。本人は控えめな胸を気にしているらしいが、そこもまた良し。蓮と同じく女子テニス部に所属している。
宮坂彩里(みやさか あやり)
明るくて男女後輩みんなから好かれるムードメーカーの高校3年生。詩弦とは系統の違うキューティー美女でスタイルは抜群。もちろん男子からの支持は熱い。女子テニス部に所属しており、詩弦とはジュニア時代からダブルスのペアを組んでいるが、2人は犬猿の仲である。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる