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番外編・今宵満ちる月
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「何かあったの?今夜はなんだか寂しそう」
ドライマティーニを一口飲むと、このバーの常連のしほなはマスターを見つめた。
「そうですか?それは失礼しました」
妖しくマスターは微笑むが、最後の線香花火を終えた様な、少しだけ物悲しい微笑みの様だった。
「中秋の名月だからでしょうか。美しい月の引力に心を持っていかれたのでしょうか」
マスターの答えに、しほなはフッと笑う。
「それだけキザな台詞が出るなら大丈夫ですね。私の思い違いだったかも」
しほながドライマティーニにまた口を付けると、マスターはしほなをジッと見つめた。
「しほなさんは、遠くへ行かないでくださいね」
マスターの台詞に、しほなは、え?と言う顔をした。
「私、どこか遠くに行くって言いました?」
訳がわからずしほなはマスターを見つめるが、謎を投げかけておきながら、マスターは何も言わずただ微笑むだけ。
「もう。いつも肝心な事は黙秘ですか」
慣れたものでしほなも追求せずにただ笑う。
「遠く遠く離れても、心はなかなか離れないことを知りました。とても強い精神力なのか、赤い糸の繋がりなのか。でも、その気持ちに終止符を打った方がいます」
アフリカに旅立った彼を思いながら、マスターは何か言いたげな瞳でしほなを見つめ続ける
「それは切ないね」
ポツリとしほなも相槌のように呟いた。
「でもね、別れは出会いの始まりだと思いませんか?」
マスターが、熱い眼差しでしほなを見つめる。
しほなも恋人との別れを経験して、新たな出会いでマスターと知り合った。
もちろん、まだお互いの気持ちは発展途上。
だがマスターの言葉に、しほなはドキドキと胸がときめく。
この言葉が意味するものが、しほなはどう理解していいのか分からなかったが、この先マスターとの未来がゼロではないとしほなは思った。
「そして出会いは、必ずしも終わりだけではないですからね」
マスターは優しい笑顔でしほなに言う。
そう、出会いは色々な可能性を秘めている。
実を結ぶ恋もあれば、結ぶ事なく終わる恋もある。
遠く離れた空の下で、愛した人を思い続けた彼がいる。
愛する彼を待ちながらも、やはり愛だけに縋れなかった彼女がいる。
このバーに訪れる恋は、数えきれない喜怒哀楽をこれからも紡いでいくのであろう。
別れは出会いの始まり。
いつか、きっといつか、彼や彼女にも、また新たな実がなる日が訪れるのだろう。
ドライマティーニを一口飲むと、このバーの常連のしほなはマスターを見つめた。
「そうですか?それは失礼しました」
妖しくマスターは微笑むが、最後の線香花火を終えた様な、少しだけ物悲しい微笑みの様だった。
「中秋の名月だからでしょうか。美しい月の引力に心を持っていかれたのでしょうか」
マスターの答えに、しほなはフッと笑う。
「それだけキザな台詞が出るなら大丈夫ですね。私の思い違いだったかも」
しほながドライマティーニにまた口を付けると、マスターはしほなをジッと見つめた。
「しほなさんは、遠くへ行かないでくださいね」
マスターの台詞に、しほなは、え?と言う顔をした。
「私、どこか遠くに行くって言いました?」
訳がわからずしほなはマスターを見つめるが、謎を投げかけておきながら、マスターは何も言わずただ微笑むだけ。
「もう。いつも肝心な事は黙秘ですか」
慣れたものでしほなも追求せずにただ笑う。
「遠く遠く離れても、心はなかなか離れないことを知りました。とても強い精神力なのか、赤い糸の繋がりなのか。でも、その気持ちに終止符を打った方がいます」
アフリカに旅立った彼を思いながら、マスターは何か言いたげな瞳でしほなを見つめ続ける
「それは切ないね」
ポツリとしほなも相槌のように呟いた。
「でもね、別れは出会いの始まりだと思いませんか?」
マスターが、熱い眼差しでしほなを見つめる。
しほなも恋人との別れを経験して、新たな出会いでマスターと知り合った。
もちろん、まだお互いの気持ちは発展途上。
だがマスターの言葉に、しほなはドキドキと胸がときめく。
この言葉が意味するものが、しほなはどう理解していいのか分からなかったが、この先マスターとの未来がゼロではないとしほなは思った。
「そして出会いは、必ずしも終わりだけではないですからね」
マスターは優しい笑顔でしほなに言う。
そう、出会いは色々な可能性を秘めている。
実を結ぶ恋もあれば、結ぶ事なく終わる恋もある。
遠く離れた空の下で、愛した人を思い続けた彼がいる。
愛する彼を待ちながらも、やはり愛だけに縋れなかった彼女がいる。
このバーに訪れる恋は、数えきれない喜怒哀楽をこれからも紡いでいくのであろう。
別れは出会いの始まり。
いつか、きっといつか、彼や彼女にも、また新たな実がなる日が訪れるのだろう。
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