転生騎士団長の歩き方

Akila

文字の大きさ
30 / 100
1章 ようこそ第7騎士団へ

29 トレバーって誰?

しおりを挟む
「… 何から突っ込んでいいか分からないわ」

ユーグさんは頭を抱えてしまった。クリスタルさんもうつむいて苦笑いである。

「ラモン様、隠し武器? のお話は後程する事にして、まずはこの中から一つお選び下さいね?」

「は、はい。何かすみません」

少し恥ずかしくなった私は、3枚のデザイン画に食い付く。もうねぇ、それぐらいしか出来ないんだよ、誤魔化すには。

しばらくデザイン画とにらめっこしていると、男性がお茶の替えとお菓子を持って来た。

「あぁ。ユーグナー様、お菓子をご用意しましたの。それで、少しよろしいでしょうか? 紹介したい者がおります」

「ん? いいわよ」

ユーグさんは、デザイン画と葛藤している私を見ながら一息ついていた。

「この度、見習いを卒業して私の下に着く事になりましたおいのトレバーです」

「へぇ、甥ねぇ。そう言えば後継者が居ないと嘆いていたわねぇ」

「えぇえぇ。お恥ずかしいですわ。ようやっと形になりまして… まだまだヒヨっ子には変わりはないのですが、そろそろ本格的に仕事を教えようかと思いまして。こうしてお得意様に紹介して回っておりますの。トレバー、挨拶を」

「お時間頂きありがとうございます。トレバーです。まだまだ未熟者ですがよろしくお願いしま…」

私は何か聞き覚えのある声だな~っと、何気なく顔を上げたタイミング、最後の『す』でトレバーと目が合った。

「あっ! あなた!」

私は驚きのあまりガバッと立ち上がってしまった。

「え?」

2人で見つめ合ってポッカ~ンだ。固まった2人は次の声が出ない。

「あら? お、お知り合いなのかしら?」

クリスタルさんは手に頬を当てて首を傾げる。ユーグさんもハテナになっている。

まずい、何か喋んないと…

「知り合いではございません。ただの知人の知人です」

「何その変な感じの繋がり… 正直に言いなさい」

「いや~。正直と言う程のモノでもないと言うか…」

私が言葉を濁していると、トレバーが先に言い訳を始める。しまった。

「叔母上。この方は知人の紹介で先日お茶をしまして… その、ご縁がなかったと言う事で私がお断りをした・・・・・・・・んです。と言いますか、君はどうしてここに居るんだい? あぁ、そうか、ユーグナー様の護衛か? 確か騎士と言っていたな。こんな所まで僕を追って来るとは… 仕事をダシに使ってはいけないよ。本当に困った方だ」

「はぁぁぁぁぁぁ?」

『ふっ』とキザに微笑みながら首を横にフリフリするトレバー。こいつドツキたい! マジでドツキたい! 

「え? トレバー、お客様の前よ? そんな言い方…」

「何々? どう言う事なのぉ?」

ユーグさんは半笑いだ。めっちゃ面白がっている。

てか、トレバー。いいよ~、そんな態度で丸めこようとするんだ。しかもそのシナリオ、ヤバいんだけど。護衛じゃないんだよ、私は。だからここでの発言権は自由なんだよ! よしよし、本当の事を言ってやろうじゃない!

「ははは。ユーグさん、私の思い違いでした。この方は、ほら、ユーグさん所のミゲル先輩のお友達で、確かにお茶はしましたが… 私には『トーイ』と名乗っていました。そしてこうも言っていましたね、『クリス商会の息子』だと。だから違う人ではないですか?」

「ふ~ん」

と、ユーグさんは思わぬ名前とあべこべな内容に、冷たい視線でトレバーを見た。

「で? もちろん続きがあるのよねぇ?」

「えぇ。私が『クリス商会』を知らないと言ったら田舎者だと揶揄やゆされまして。おまけに女性騎士だと伝えたら、腰掛けだの男漁りだの、最後にはバカだから騎士になったんだろう? と言われてですね~」

チラッと、トレバーを見ると下を向き握り拳をプルプルしている。

「~ あまりの言い草に私、キレてしまいまして、へへ。帰ろうとしたらさらに小突かれてしまって。流石にムカついたので頭から水をかけてやりました。その場に同席していた女友達も両肩を抑えられたので、投げ飛ばしていましたが。ふふ。しかし、それは『クリス商会のご子息のトーイ』と名乗る男性でしたよ?」

ふん。どうだい! なんか言い訳あるか?

最初、クリスタルさんは信じられないと言う風な顔で聞いていたが、今は般若が隠れた引き攣り笑顔になっている。

「へぇ~。クリスタル、あなたって息子が居たのね?」

「いえ。私には息子は断じて居りません」

「い、いえ。叔母上! 嘘です! 私が投げ飛ばされるなど… この女の言う事を信じるのですか?」

え? そこ?

「グッ… トレバー、いえトーイ・・・。口を閉じなさい。命令よ」

グッと拳を握って歯を食いしばりながら私を睨むトレバー。

「クリスタル? 何か弁明は?」

ユーグさんは柔らかい雰囲気だったのが一転、冷たい殺気を薄~く静かにクリスタルとトレバーに送っている。ドーンとまた違った殺気だ。怖い。

「はい。弁明の余地はございません。ラモン様にはご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」

と、クリスタルは頭が床につきそうなくらいの礼をする。

「ユーグさん、私からいいですか?」

「いいわよ。でもわかっているわね? 騎士われわれがバカにされたんだから」

「はい。クリスタルさん、顔を上げて下さい」

そう言っても、クリスタルさんは顔を上げない。

「トレバーと私の出来事は私達の問題です。しかも私もやり返してますしね。あの日の出来事はもう決着がついてます。私がムカついたのは平気で嘘を吐いたからです。しかも、この場で。ですので私も意地になってしまって… それに、クリスタルさんには今日偶然、ユーグさんの紹介で会ったんですし、この件もやはりトレバーの問題です」

「ちょっと、ラモン。お咎め無しはダメよ」

ユーグさんはまだ怒っている。ユーグさんに睨まれたトレバーは下を向いている。

「それはそうです。てか、ユーグさんもすみません、私のせいで変な恥をかかせてしまって」

私はユーグさんに立ち上がって礼をする。

「いいわ… それで? 落とし所は?」

「まずはトレバー、謝って」

「な、なぜ私が…」

まだトレバーは納得がいかないのか、空気が読めないのか…

「はぁ、あなたプライドだけは高そうだもんね。嘘まで吐いて… めっちゃ態度デカかったし… そう言う事なら命令するわ」

トレバーは『はぁ?』と言う顔でやっとこっちを見た。

「私、王都第7騎士団団長ラモンが命ずる、トレバー、我々騎士を侮辱した事、更に話を偽証した事を今ここで謝罪しなさい」

「だ、団長!!!」

トレバーは、あまりの衝撃に、心臓が飛び出てしまったのかその場で気を失った。

「あっ、あれ? 嘘! ユーグさん、ど、どうしましょう?」

「いいわ。放って置きなさい。クリスタル、2度とソレの顔は見たくないわ」

「もちろんです、申し訳ございません。ラモン様、本当に重ねて申し訳ございませんでした。アレが居る以上、ご不快でしょうから、他のお店を紹介させて頂きます。もちろんそのお店でのドレスはプレゼントさせて下さい。お好きなモノを、せめてものお詫びでございます」

「いえいえいえ、そんな。せっかくユーグさんが考えてくれたドレスなんです。私はこのドレスを着たいですよ。もう気にしていませんので。トレバーさんには別途謝罪に来るように言付けて下さい。それで結構です」

「そんな… それでは私共の面目次第もございません」

パンパンとユーグさんが柏手を打つ。

「はいはい、このままじゃ平行線だわ。私が話を着けましょう。クリスタル、あなたは顧客の為に次代をあの甥にしない事、無料でラモンのドレスこの3点を全部作る事。私にもタキシードを1着作るように。それで手打ちよ。言っても、これはあなたの甥とラモンの問題だしね、これで十分でしょ」

「まぁ! ユーグナー様、寛大な沙汰にお礼申し上げます。ラモン様もありがとうございます」

クリスタルさんはようやく顔を上げ、この案で同意してくた。よかった。

てか、ドレス、しかも高級ドレスゲット~!
しおりを挟む
感想 251

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

処理中です...