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2章 王城と私
15 就任の挨拶
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いよいよ第3の初日だよ~。
一応、今日は団長服を着てみた。ここ数日、第7の時のように騎士服のシャツとズボンで、王城内をウロウロしていたら従事長に怒られた。
『王城ですよ? 時と場所を選んで下さい! 礼節です!』
次に、平騎士時代の制服でウロウロしていたら、今度は侍女長のアビーにも怒られた。
『あの~、ラモン団長。言い辛いのですが、そのお召し物は少しくたびれ過ぎていると言いますか… ピシッとした団長服はないのでしょうか?』
「どう? ドーン、似合う? 汚しそうで怖いけど…」
「よくお似合いです。普段はジャケットは着用しなくてもいいですよ。ベストで十分です」
「そう? 良かった~。これ1着しかないし毎日だとヨレヨレになりそうでさぁ。ベストでいいなら、シャツとズボンにベストで良くない?」
「ええ。問題ないかと」
え~! いいの? ドーンが言うから間違いないよね。でも従事長に怒られた… ま~いいや。またそん時はそん時で。
「初日だし、たまにはピシッとするのもいいか」
第3の休憩所に非番の者達を集め挨拶をする。これを今日は3回やる。
「敬礼」
ビシッとそろった隊員達。制服もきちんとボタンをしてるし、シワ一つないキレイな服。髪も顔も清潔でキラキラして見える。第7のおっさん共とエライ違いだな~。
「直れ。初めまして。新しく第3の団長に就任したラモンです。長らく尽力されたユーグさんの跡を引き継ぎ、皆さんと共に第3を盛り立てたいと思います」
し~んと真っ直ぐ前を見ている隊員達。聞いてるのか? 聞いてないのか… 反応が全く無いので分かり辛いな。
「では、まず私の側近を紹介しますね。今後は何かあったらこの者達に言って下さい。副団長のドーン、側近、キリス、ゲイン」
ちょっとザワザワし始めた。やっぱり違う派閥同士が側近に選ばれるのって違和感あるのかな?
「静かに。みなさんご存知の通り、このキリスとゲインは家の事情で対立する派閥同士です」
ザワザワ。
「私は家の事情を仕事場に持ち出して欲しくはありません。私自身が派閥云々の世界に無縁だからと言うものありますが、騎士の本分を思い出して下さい。家は必要ですか? あなた達は何を志し、騎士になったのでしょう? 第3の隊員達は仲間ですよ。ですので、これからはしょうもない歪み合いはしない事。今日より、家がどうのこうので騒ぎを起こしたものは懲罰を与えますので注意して下さい」
より一層ザワザワし始めた中で一人だけ手を挙げる青年がいる。
「どうぞ、そこの人」
「はい。私は派閥に所属していません。この人事は差別的です。いざこざを避けるのなら、あえて派閥代表を手元に置くのではなく、無所属の者こそ側近にするべきではありませんか?」
はい、キタ~。キタキタ~。こう言うタイプ来ると思った。
「そうね。じゃぁ無所属代表はドーンにでもしようかしら? ぶっちゃけそんなの誰でもいいんだけど? と言うか、あなた、今の発言が差別的なのは分かってる?」
「は?」
「無所属と主張した段階であなたも入っているのよ。無所属と言う派閥に。本当に派閥なんて無関心な人は、何も言わないし考えもしないわ。だって、それ自体に興味がないから。『私は無所属だ』と声を大にして言ってる時点で、無所属派の派閥なのよ。それを差別? あなたこそ区別し差別してるのよ?」
「な! そんな詭弁!」
「私もちょっと理屈っぽいかなとは思うけどね。でも、そう言う事よ。一番ややこしいのが『無所属派』じゃない? それに、この2人を手元に置くのにはきちんと理由があります。事務処理能力もさることながら、騎士としての実力もあるからです。各派閥の人間が慕うのも分かるわ。正しく実力を伴う騎士だからみんな憧れるし、リーダーに押し上げるのよ。私は、この第3から派閥を無くし、より良い職場環境を作りたいと思います。だから、この2人は必要な人物って訳です。分かってくれたかな?」
パチ… パ… チ
まばらな拍手が聞こえる。みんな混乱しているな。さっきの青年は友人かな? ヒソヒソと仲間同士で話している。
「徐々にでもいいから意識を変えていってね。表面上は今日からよ、絶対に争わない事。以上、解散」
チラッとキリスとゲインを見ると、無表情で前を向いて腕は後ろで直立不動。
う~ん。
変わるかな? まぁ、この2人に期待しよう。
この数日で分かった事がある。警備の組み合わせや仕事の時間など、上手い具合に派閥がかち合わない様に工夫されていた。相当、考えるのに時間がかかっただろう。ユーグさん達の、その努力を台無しにしたくないけど、来月からは私がランダムに組んだ勤務体制でやってもらう。
キリスとゲインはそこからが大変だろう。お手並み拝見だね。
「ドーン、これあと2回あるのよね?」
「そうですね」
「面倒臭いね」
「ふふふ」
私達の会話を聞いていたキリスとゲインは、声にはしなかったが目を見開いて驚いていた。
「あなた達、こんな発言で驚いていたら身が持たないわよ? 今までの立派な団長像の常識を修正してね。難しく考えないでいいの」
そう、シンプル イズ ザ ベスト。って、服装は怒られたけどね。へへ。
一応、今日は団長服を着てみた。ここ数日、第7の時のように騎士服のシャツとズボンで、王城内をウロウロしていたら従事長に怒られた。
『王城ですよ? 時と場所を選んで下さい! 礼節です!』
次に、平騎士時代の制服でウロウロしていたら、今度は侍女長のアビーにも怒られた。
『あの~、ラモン団長。言い辛いのですが、そのお召し物は少しくたびれ過ぎていると言いますか… ピシッとした団長服はないのでしょうか?』
「どう? ドーン、似合う? 汚しそうで怖いけど…」
「よくお似合いです。普段はジャケットは着用しなくてもいいですよ。ベストで十分です」
「そう? 良かった~。これ1着しかないし毎日だとヨレヨレになりそうでさぁ。ベストでいいなら、シャツとズボンにベストで良くない?」
「ええ。問題ないかと」
え~! いいの? ドーンが言うから間違いないよね。でも従事長に怒られた… ま~いいや。またそん時はそん時で。
「初日だし、たまにはピシッとするのもいいか」
第3の休憩所に非番の者達を集め挨拶をする。これを今日は3回やる。
「敬礼」
ビシッとそろった隊員達。制服もきちんとボタンをしてるし、シワ一つないキレイな服。髪も顔も清潔でキラキラして見える。第7のおっさん共とエライ違いだな~。
「直れ。初めまして。新しく第3の団長に就任したラモンです。長らく尽力されたユーグさんの跡を引き継ぎ、皆さんと共に第3を盛り立てたいと思います」
し~んと真っ直ぐ前を見ている隊員達。聞いてるのか? 聞いてないのか… 反応が全く無いので分かり辛いな。
「では、まず私の側近を紹介しますね。今後は何かあったらこの者達に言って下さい。副団長のドーン、側近、キリス、ゲイン」
ちょっとザワザワし始めた。やっぱり違う派閥同士が側近に選ばれるのって違和感あるのかな?
「静かに。みなさんご存知の通り、このキリスとゲインは家の事情で対立する派閥同士です」
ザワザワ。
「私は家の事情を仕事場に持ち出して欲しくはありません。私自身が派閥云々の世界に無縁だからと言うものありますが、騎士の本分を思い出して下さい。家は必要ですか? あなた達は何を志し、騎士になったのでしょう? 第3の隊員達は仲間ですよ。ですので、これからはしょうもない歪み合いはしない事。今日より、家がどうのこうので騒ぎを起こしたものは懲罰を与えますので注意して下さい」
より一層ザワザワし始めた中で一人だけ手を挙げる青年がいる。
「どうぞ、そこの人」
「はい。私は派閥に所属していません。この人事は差別的です。いざこざを避けるのなら、あえて派閥代表を手元に置くのではなく、無所属の者こそ側近にするべきではありませんか?」
はい、キタ~。キタキタ~。こう言うタイプ来ると思った。
「そうね。じゃぁ無所属代表はドーンにでもしようかしら? ぶっちゃけそんなの誰でもいいんだけど? と言うか、あなた、今の発言が差別的なのは分かってる?」
「は?」
「無所属と主張した段階であなたも入っているのよ。無所属と言う派閥に。本当に派閥なんて無関心な人は、何も言わないし考えもしないわ。だって、それ自体に興味がないから。『私は無所属だ』と声を大にして言ってる時点で、無所属派の派閥なのよ。それを差別? あなたこそ区別し差別してるのよ?」
「な! そんな詭弁!」
「私もちょっと理屈っぽいかなとは思うけどね。でも、そう言う事よ。一番ややこしいのが『無所属派』じゃない? それに、この2人を手元に置くのにはきちんと理由があります。事務処理能力もさることながら、騎士としての実力もあるからです。各派閥の人間が慕うのも分かるわ。正しく実力を伴う騎士だからみんな憧れるし、リーダーに押し上げるのよ。私は、この第3から派閥を無くし、より良い職場環境を作りたいと思います。だから、この2人は必要な人物って訳です。分かってくれたかな?」
パチ… パ… チ
まばらな拍手が聞こえる。みんな混乱しているな。さっきの青年は友人かな? ヒソヒソと仲間同士で話している。
「徐々にでもいいから意識を変えていってね。表面上は今日からよ、絶対に争わない事。以上、解散」
チラッとキリスとゲインを見ると、無表情で前を向いて腕は後ろで直立不動。
う~ん。
変わるかな? まぁ、この2人に期待しよう。
この数日で分かった事がある。警備の組み合わせや仕事の時間など、上手い具合に派閥がかち合わない様に工夫されていた。相当、考えるのに時間がかかっただろう。ユーグさん達の、その努力を台無しにしたくないけど、来月からは私がランダムに組んだ勤務体制でやってもらう。
キリスとゲインはそこからが大変だろう。お手並み拝見だね。
「ドーン、これあと2回あるのよね?」
「そうですね」
「面倒臭いね」
「ふふふ」
私達の会話を聞いていたキリスとゲインは、声にはしなかったが目を見開いて驚いていた。
「あなた達、こんな発言で驚いていたら身が持たないわよ? 今までの立派な団長像の常識を修正してね。難しく考えないでいいの」
そう、シンプル イズ ザ ベスト。って、服装は怒られたけどね。へへ。
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