交通事故

ベルゼビュート

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交通事故

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 「聞いてくれる?この間事故に合っちゃってさ……」
 「ふーん。マジで?」
 「マジマジ。ほんとショックだったわ」
 「え、ちなみにどんな事故やったん?」
 「あ、聞きたい?」
 「そりゃまーね」
 「良いよー。っつってもあんまし覚えてないし大丈夫?」
 「うわwwwかわいそー被害者」
 「一週間くらい前のことなんだけど~」

 その時あたし、交差点の前で信号待ってたのよ。事故に合ったのは大学生くらいの男なんだけど、杖を持ってて。若いのに杖使ってるって、足でも悪いんかなーと思って、そのまま放置してたってわけね。でさ、こっからがメインなの。赤信号だから待たざるを得ないじゃん?そしたらさあ、いきなりあたしのスマホが鳴り出したの。なんか電子音で恥ずかしかったから、急いで引っ張り出そうとカバン開けたのね。なのに、ストラップかなんかが引っかかって出てこないの。うわ恥ずい!って思って、やっとこさ引っ張り出せたわけ。そしたら『非通知』って書いてあって、マジで何なのって思いながら切ってしまい直したのよ。
 そしたら……、急ブレーキの音と鈍いドンって感じの音がして、前見たら大学生っぽい男が跳ね飛ばされてて。自殺だったのかなぁ?後で警察に話聞いたけど即死だったんだって。

 「で、聞きたい?その男が誰なのか……」
 「え、だれだれ?」
 「冨士田。小6のときにあんたを散々からかってたあの冨士田だったの」
 「えっ、富士田が杖?」
 「そこツッコんじゃうー?ってかあいつ、最近ストーカーに悩まされてたらしいよー。あ、もうすぐ十二時じゃん!夜も更けてきたしもう寝よっか」
 「夜ふかしは肌に悪いもんね」
 「そうね~。じゃあお休み」
 電話が切れた。

 「非通知電話、私がかけたんだよ」





 目が見えなくなっていた富士田は、視覚障害者のシンボルともいうべき白い杖を持っていた。その事実を数年前に知った『私』は、富士田を徹底的にストーキングし、生活リズムを把握した。そして、富士田と『あたし』が同じ交差点にやってきたときに『あたし』に用意しておいたもう一つのスマホから非通知電話をかけて、富士田に信号が青になったと錯覚させ、自ら道路に飛び出させて偶然に見せかけて殺害した。遠い昔の復讐を果たしたのである。
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