ゲームスタート時に死亡済み王女は今日も死んだふりをする

館花陽月

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聖女ルルドの恋模様

音楽祭は奈落の底から②

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「アリア様、おはようござます!!」
「教室までご一緒させてもらっても宜しいですか??」

ブルネットの髪を奇麗な貝殻の髪留めで2つに纏め、黄色い垂れ目の可愛らしいクラスメイトの
メアリー=モルトン伯爵令嬢と、シルバーブロンドの肩までの髪に青い瞳と大きな赤いリボンで長い髪を
1つに纏めているイリス=ダルトワ侯爵令嬢が笑顔で手を振っていた。
聖女ルルドの恋模様でもこの二人はルルドと仲良し設定で物語にもよく登場していた。
モルトン伯爵家はアーリシャス王国建国時からの名門貴族で、ダルトワ公爵家も各国の王族との縁を繋ぐ
名門貴族家系で2つの家門は最近勢力を伸ばしているみたい。

4人で並んで廊下を歩くと健康観察室の前を通った。

ドアが空いていたので、その間からチラッと中の様子を確認すると長い指を悩まし気に組んで
廊下側を見ていた白衣姿の男性と目が合った。

・・・セイン=グリンドール。
主席医師。聖女ルルドの恋模様の攻略対象の4人目。
爽やかで知的な20代後半のアーリシャス王国で神の手と言われる腕を持つ男性医師。

「・・得体が知れないわ」
吸い込まれそうな青い瞳と見つめ合った。
私は眉をピクリと動かすと目を細め、きゅっと唇を引き締めた。

その言葉が聞こえたように一瞬驚いたように目を見開いたセイン=グリンドールは
次の瞬間に口角を上げて微笑んだ。
セインの表情に背筋に走った悪寒にふるっと震えた私は、健康観察室を振り返った。
出てくる気配はなかったけれどセインルートでは何度もデッドエンドを繰り返した私は不安が過った。

セインはお父さんを目の前で亡くした過去があって、人を助けたいと医師になったけれど
何を考えているか分らない。感情を見せない笑顔の仮面を被った優秀でハンサムな容姿もあり学園の生徒達の憧れの存在だった筈だけど・・。
「・・・あの笑顔、全く心が動いていないのよね」
「アリア様??どうかしましたか??」
不思議そうにイリスが首を傾げていた。
私は首を左右に振ると、気を取り直して速足で教室に向かった。
廊下に並ぶ大きな窓からは明るい陽射しがよく入る。
近づいていく教室の中からは、いつも以上に騒がしい声が廊下まで聞こえていた。

「うっ嘘でしょう!?私のパートナー、ケイドル様ですわ!!もう、死んでもいいです・・。」
「・・・外れだ。アリア様か、カリーナ様とご一緒のペアになりたかったのに」
「まぁっクレトス様のペアは、エミリー=ハリソン様ですわ。そう言えばエミリー様はクレトス様のご婚約者候補のお一人でしたよね・・。これ、本当に偶然なんですの?」
教室に着くとザワザワと黒板に張り出された紙の前で生徒達が黄色い声や奇声を上げていた。
広く白い天井と長い大学のようなテーブルと長椅子が前からずらりと並んでいる。

不思議そうに首を傾げていた私と横にいたカリーナの前に、黒板の群れの中から一人の男子生徒が前に出てきて片手を折った恭しい礼をした。
爽やかな笑顔で微笑む男性は、ブルネットの髪に緑色の瞳を嬉しそうに輝かせて人懐こい笑顔を見せた。

「カリーナ様、ジェイク=レイカードと申します。貴方の音楽祭のペアは僕に決まったよ。どうぞ宜しくお願いします!!」
「・・え?音楽祭のペア・・ですか??」
「そう。毎年、音楽祭では2名がペアで合奏か合唱を披露するんです。
僕は歌は得意ではないけど、楽器なら幼少から嗜んでます。カリーナ様の足を引っ張らないように頑張りますね」
「あ、はい・・。こちらこそ。どうぞ宜しくお願い致しますわ」
驚いた表情のカリーナだったが、差し出されたジェイクの握手に答えて微笑んだ。
ジェイクは人好きそうな可愛らしい子犬のような表情でにっこり微笑んた。
「アリア様のペアはカイン様でしたね・・。カイン様はピアノの評判は存じております。アリア様も、幼少の頃にグランデリアの祭典で一度美しい歌声を聞いたことがあります。お二人の発表も楽しみにしてますね。」
「私のペアはカイン様なんですね。・・良かった、少し気が楽になったわ。私が言うのも烏滸がましいですが・・。カリーナ様をどうぞ宜しくお願い致しますね。」
「烏滸がましいだなんて・・!!嬉しいですわ、アリア様!!お二人がペアなことは分かっていましたけど・・。カインお兄様をどうぞ宜しくお願いします!!」
「・・え、ええ。分かっていたの?」
カインと私がペアな事は分かっていたってどういう事かしら・・。
カリーナの発言に疑問は残ったが、それよりもカリーナの隣で落ち着いた笑顔を見せる少年に見覚えがあった。
彼は聖女ルルドの恋模様の5人目の攻略対象。
スポーツが得意で運動神経が抜群なイグナス王国の公爵家の跡取り
子犬系イケメンのジェイク=レイカード。
聖ルルでは、体育祭イベントで一緒に実行委員をしていく内にルルドと距離を縮めていくはず・・。
楽器の演奏も嗜む中身もハイスペック男子・・。と、脳内にメモをした。
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