ゲームスタート時に死亡済み王女は今日も死んだふりをする

館花陽月

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聖女ルルドの恋模様

波乱の体育祭は窒息注意⑥

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「・・・なぁ、不味くないかこれ??」「聞いてないぞ・・。この展開」

あ、頭が痛い・・。
何だかヒソヒソ声が・・。
「・・誰か・・ゴホッ!!ゴホッ」
息を吸い込むと、むせ込んで息苦しい・・。
気が付くと両腕を背中で縛られていた。

応援席に戻ろうとした所で、魔術師の衣装をきた人物達に囲まれてしまったのは
覚えがある。
部屋には何か違和感があった。
燃えている匂いがした。

顔を上げると、炭のような部屋の中央に積まれ煌々と燃えている。
鉄壁の外には見張りがいる様子だった。

暗がりの中で、天窓が1つだけ見える。
私は痺れかかった身体を必死に起こそう顔を上げた。
「・・え?クレトス!?ちょっっ、何でいるのよ!?ゴホッ」
少し離れた場所に、何故かクレトスも両腕を縛られたままで意識を失って寝そべっていた。

一酸化炭素中毒を狙っているんだ・・。
学園で雇った魔術師の服装で潜入して閉じ込めるなんてこんな手の込んだ殺害方法、聖ルルになかった。
死角ばっかりのゲーム、全然読めないっ!!
いっそ、このまま目を閉じて死んだふりをしたらいいかしら?

でも、私が死んだふり=仮死になってしまったら・・。
クレトスは死んでしまう!

「ねぇ起きて・・。クレトス!!」

咄嗟に、回復と授業で出したばかりの氷塊を出す呪文をイメージして部屋の中央に向かって落とした。

「クレトス・・。お願い・・。起きて!!ゴホッゴホ、クリ・・」

私は名前を何度も呼び続けていた。


<クレトス視点>

障害物競争に参加するアリアを応援席を立った彼女の後ろから気づかれないように付いていく。
目を覚ましたアリアが今も命を狙われ続けている事に気がついていた。
何気ない日常を変わらず彼女に見せてあげる事が一番だと話し合い、気づいていない振りをしている。

大切なアリアを、それぞれがそれぞれの方法で彼女を守ることを心に決めているんだ。

障害物競走が終わった後、応援席まで送ろうとしたアドルファスに断りを入れてアイツが聞き入れたのは
俺が傍で見守っていた事に気が付いたからだった。

応援席まで、人の多い観客席を人込みをかき分けながら進んでいく内に急にアリアの姿が消えた。
カインに魔法で合図を出した俺は、消えた場所の先にある倉庫の前でアリアを探していた。

後ろから何者かに殴られて気を失った。

気がつくと、目の前には顔面が蒼白になったアリアが両腕を縛られた姿勢で転がっていた。
慌てた俺は、名前を呼ぼうと息を吸うとゴホゴホッと肺のあたりが苦しくなってむせ込んだ。

部屋の中央には、燃えカスのような炭の塊がビショビショに水浸しになっていた。
それでも、部屋は息苦しく頭がボーッとしている。
動かそうにも、指も痺れが出ていた。

暗闇の中で天窓の光だけが頼りだった。
鉄で出来た扉は閂のような物で外から塞がれているのだろう。

アリアの元にズルズルと身体を捩って引き摺りながら近づいていく。
手足が冷たいコンクリートの床に擦れて痛みが走った。

長いプラチナブロンドが流れるようにコンクリートの床に広がっていた。

大好きなアレクサンドライトの瞳は重く閉じられていた。
美しい光を集めたサラサラの長い髪に触れたくてぎゅっと唇を噛んだ。

「アリア・・!?起きてよ・・。死んでは駄目だ!!」

瞼が熱くなる。
また、彼女を目の前で失うのは耐えられない・・!!
やっと、大好きな彼女に会えたのに


彼女と初めて会ったのは、4歳の彼女の誕生日の前日だった。

帝国会議に出発する父と、珍しく父と一緒に出掛ける支度をしていたアドルファスを
見かけた僕は、僕も連れて行って欲しいとお願いをした。

「仕方ないな・・。お前たち2人を連れて行く事にする」

何度も断り続ける父に諦めないで頼み続けた。
根負けをした父の困ったような顔が今でも忘れられない。
会議に向かう長い場所の道のりの途中で父が僕たちに諭した。
自分達が行く国は数年前まで敵国であったこと。
その戦争は、帝国会議が行われる場所であるグランデリアが急に我がアーリシャス王国に宣戦布告をし、魔術師を投入して凄惨な攻撃を仕掛け数多の民が犠牲になった話を聞いた。

アドルファスと、僕は静かに父からの話を聞いて過去の歴史を受け入れた。

バランスを保ち、平和を築いていたこの大陸に戦火を齎した事や、
僕たちの身にも何が起こるか分からない事も・・。

命がけの旅になってしまうかもしれない事実を告げら僕は恐ろしくなった。
アドルファスだけは、ただ黙って父の話に頷いていた。

そして、終戦のきっかけになった女神セレンティカの再来と呼ばれる聖女アリア姫が
グランデリアの王宮にいる事を聞いた。

初めて戦争の勉強を学んだ時、グランデリアの王族の理不尽な宣戦布告と侵略の
歴史を知った時、かの国を僕は憎んだ。

聖女が生まれたから戦争が終わる・・。
なら何故、そんな卑怯な戦争を仕掛けたのだと家庭教師に聞くと、苦く笑って何も答えなった。

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