転生伯爵令嬢は、裏切り者からの寵愛に戸惑う。

ファーマーズラボラトリー。

ファーマーズラボラトリー④

おうっ・・！！

レオの蛍光灯も絶好調だ。

爽やかな笑顔で、殴られる感じと一緒だわ・・。

久しぶりでも、愛情の過食気味な私には重いんだってば！！

「・・・・もう、治療終わったんだから、早々に騎士団の所に戻りなよ。」

「何だろうな・・・。婚約者の為に、80キロ近く飛んできた相手に吐く台詞ではないだろ、それ。」

「あら、公務も大事でしょう？
そもそも、公務中によそ見するなんて駄目よ！みんながレオの事、必要としてるのに。」

「ああ、なるほど。シアは本当に壊滅的な鈍感でなければ良い嫁になるのにな・・。」

「鈍感で悪かったわねー・・。婚約者だからって、実際に嫁になる予定なんてまだないわよ！！」

「シア以外の女はいらないって言ってるだろ！！
さっき、アイーネ殿にも城へ帰ってもらった。
馬車に勝手に乗り込んだ挙句、団長のエーリアスに見つかって激怒られて泣いていたようだ。」


「・・・お気の毒に。アイーネ様に至っては・・。
どうしたら、ご自分が見つからないでやり過ごされると思っていたのか、謎なんだけどね・・。」

レオの兄貴分である騎士団長のエーリアスは、・・めっちゃ怖いらしい。

騎士団の団員が、毎朝毎晩泣きながらマラソンしてるのを毎日見ている。


「俺は幼い頃から、いつもシアの事だけをずっと考えて生きてるんだ。
婚約者がいるシアの事を諦められなかったんだ。
シア以外は娶らない俺に、一生独身で過ごせっていうのか？」

レオはそう言いながら、
私の髪にそっと手で触れながら愛しそうに微笑んだ。


「そろそろ、無駄な抵抗はやめて、ずっと俺の側にいるべきだ。」

「ぬぉっ・・。」

その言葉に、私は薄い水色の瞳を大きく見開いた。

・・・な、なんなの！！

蛍光灯王子の破壊力最強なんだけど！！


瞬く間に、自分の熱ではないんじゃないかと思うほど
カーッと頬が赤くなる。

レオはその反応に、とても満足そうに笑っていた。

固まったままの私の前にひょこっと人影が現れた。

「あれ？どうしたのレオ。それに、アレクシアさんとユヴェールさんまで・・・。
ルカは、まだ来てないの？」

本を数冊抱えた、銀髪、紅眼の美少年クリステンが現れた。

「ええ・・。9時から神力と神獣のテストだと聞いていたんだけど。
内鍵がかかってるみたい。」

困り果ててラボ前で集っていると、痺れを切らしたようにユヴェールがレオを見た。

「レオ、ほら。中に入れるなら、とっとと中に入って中から鍵を開けてきてよ。」

少しだけ、ぶすっとした表情のユヴェールがレオに催促した。

「解ったよ・・・。ちょっと、ここで待て。」

一瞬姿を消して、すぐに戻ってきた。

扉の内鍵を開いていない上に、レオの顔は非常に青ざめていた。

「・・・あのー。どうしたの？」

あまりの表情に、心配そうに覗き込んだ。

「・・・言いたくない。」

「あ、そう・・。じゃあ、聞かないわ。もう少し待ちましょうか・・。」


私は、レオの肩をポンポンと叩くと縋るような上目遣いをされた。

何だ？

何を見たのかしら・・。


そんな中で、何かを察したらしい同じ天族のクリステンがハッと赤い瞳を細めた。

一拍置いた後。


「・・・あいつ、殺すぞ。」


神秘的で美しい造作には似合わない割と物騒な発言をしていた。

侍女である彼の妹のエーテルといい・・レオといい。

やはり、天族系は皆、暴君という事でいいのかしら？


次の瞬間、急に鍵がかけられていたドアがガチャリと開いた。