ホラーを読んだばかりに

相楽 快

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スマホの待ち受け

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目を覚ますと、寝汗でベッドがじっとりと濡れていた。
それにしても昨日の妙な体験はなんだったのだろうか。

小説で読んだ単眼犬パキャとは全く異なる恐怖体験だった。
強いて言えば、単眼という共通点があるくらいか。

ふう、と息を吐くと、スマホのアラームが鳴った。どうやら今朝は自力で目を覚ましたのだと、気がついた。

「ヒッ」

驚いて手からスマホが滑り落ちた。
待受画面が、雨に濡れ、黒く汚れた犬の画像になっていたのだ。
それも、単眼の犬だ。

どうなってるんだ。
寝ぼけて妙な画像に変えたにしては、妙に気持ちが悪い。




どんよりとした雲を背負い、のそのそと出社すると、会社のフロアは火が付いたように慌しかった。

「どうしたんですか?」

係長の亜蝦夷に聞くと、亜蝦夷は頭を掻きむしる。

「どうもこうも、会社のパソコン全てが初期化されてるの!今まで作ったデータも、共有フォルダの中身も、メールも、全部ないの!ありえないっしょ!」

事態の大きさに冷や汗が出る。
設計コンサルの我が社はデータが命。
納品する予定のデータがなくなれば、発注者になんと謝罪をすればいいのやら。

パンパンと手を叩く音で、フロアは静まり返る。
社長だ。

「えー、今日はみなさん自宅待機で。警察に捜査を依頼します。何者かにデータを全て消去された可能性が高い。まあ、データは大概復旧できるものですから。今日はしっかり休んで、パソコンが直ったらまたシャカリキに働いてください。解散!」

まあ、パソコンも使えないのにできる仕事などそうはない。

折角朝から外に出たので、朝から一杯酒でも引っ掛けようと思っていたら、電話が鳴った。

はい、と出ると、若い女性の声だった。
「シャカリキ!シャカリキ?」
「え?なんですか?」
「シャカリキ?シャカリキ?」
常軌を逸した相手だが、データを消した犯人かもしれない。

受話器の口元を抑えたまま、社長を手で呼ぶ。
うむ、と社長が頷き電話をとる。
「はい。ビビットコンサルタントです。え?シャカリキ?」
社長が目で、なんなんだコイツは、と訝しげに私を見てくる。

私もわからないので、首を傾げる。
社長が急に眉を細めた。
「え?なんですか?パ?単眼犬、パ、キャ?単眼犬パキャ?なんですかそれは」

私は全身が泡立つような寒気に襲われた。
うぉっと大きな声を出し、社長は受話器を放り出した。
「急に声が老人になった。びっくりした」
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