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十五夜うさぎ
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月のきれいな夜のことでした。
秋は部屋の窓を開けて夜風を楽しんでいました。
「今日は風が気持ち良いなあ。そうだ、お月見山にあるあの小さな丘まで散歩してみようかな。」
そうと決めたら秋はパーカーをはおり、お気に入りのスニーカーをはいて、外へ飛び出しました。
「秋、こんな時間にどこへ行くの!」
お母さんの大きな声が家から聞こえてきます。
秋はそれに
「少し散歩!」
と答えて、家の向かいを流れる小川に沿って歩き始めました。
夜の川は街灯もなく、いつもであれば真っ暗なはずでしたが、今日は違いました。
「満月だ。」
いつもよりいっそう大きく夜空に浮かぶ月は、秋の進む道を明るく照らしてくれます。
静かに流れる川の音、木の葉を風が揺らす音。
自然の音楽をBGMに、秋の足取りは軽く、まるで羽のようでした。
しばらく歩き続け、丘の頂上が小さく見えるところまで来ると、何かが白く波打っているように見えました。
「何だあれ。波みたいにみえるけど、月のあかりじゃはっきり見えない。」
秋は小走りで波まで近付きました。
「ああ、うさぎだ!」
波打つものの正体は、たくさんのうさぎでした。
前から順にぴょんぴょん跳ねて、波打っているように見えていたのです。
たくさんのうさぎ達はけんめいに丘を登っています。
ぴょんぴょんぴょん、遅れをとるものはいません。
秋は信じられないものを見て、足が止まってしまいました。
パチパチ、まばたきを何回繰り返しても、うさぎは消えません。
秋が呆然と突っ立っていると、波の中から一羽のうさぎがこっちへ向かってくるのが見えました。
片方の耳が折れたその真っ白なうさぎは、秋の足元まで来て、
「こんばんは、いい夜ですね。」
と口を開きました。
「え、ええ。そうだね。」
秋は驚きながらも、うさぎに返しました。
するとうさぎは鼻をひくひく動かせて、
「見たところあなたはうさぎではないようですが、あなたも月へ行くのですか?」
と、秋に聞きました。
「いいえ、あなたたちはみんな月へ向かっているの?」
今度は秋が聞くと、うさぎは
「ええ、今夜は十五夜ですから。」
と、ぴょんとひとはねして答えてくれました。
「ぼくたちはみんな、お月見山の頂上まで行くのです。お餅をつきに。なんたって、今日は満月ですから。」
うさぎは得意げに話して、ぴょんと秋におしりを向けました。
「もう行くの?」
「はい、みんなに遅れをとってしまいましたから。今日のお餅つきに間に合わなくなってしまいます。それでは、良い夜を。」
秋は遠くなっていくうさぎを眺めながら、今日見たことは自分の心のうちに秘めておこうと決めたのでした。
満月の夜、秋は決まって窓から月を見上げます。
あの夜のことを思い出しながら、秋は月を眺めるのでした。
秋は部屋の窓を開けて夜風を楽しんでいました。
「今日は風が気持ち良いなあ。そうだ、お月見山にあるあの小さな丘まで散歩してみようかな。」
そうと決めたら秋はパーカーをはおり、お気に入りのスニーカーをはいて、外へ飛び出しました。
「秋、こんな時間にどこへ行くの!」
お母さんの大きな声が家から聞こえてきます。
秋はそれに
「少し散歩!」
と答えて、家の向かいを流れる小川に沿って歩き始めました。
夜の川は街灯もなく、いつもであれば真っ暗なはずでしたが、今日は違いました。
「満月だ。」
いつもよりいっそう大きく夜空に浮かぶ月は、秋の進む道を明るく照らしてくれます。
静かに流れる川の音、木の葉を風が揺らす音。
自然の音楽をBGMに、秋の足取りは軽く、まるで羽のようでした。
しばらく歩き続け、丘の頂上が小さく見えるところまで来ると、何かが白く波打っているように見えました。
「何だあれ。波みたいにみえるけど、月のあかりじゃはっきり見えない。」
秋は小走りで波まで近付きました。
「ああ、うさぎだ!」
波打つものの正体は、たくさんのうさぎでした。
前から順にぴょんぴょん跳ねて、波打っているように見えていたのです。
たくさんのうさぎ達はけんめいに丘を登っています。
ぴょんぴょんぴょん、遅れをとるものはいません。
秋は信じられないものを見て、足が止まってしまいました。
パチパチ、まばたきを何回繰り返しても、うさぎは消えません。
秋が呆然と突っ立っていると、波の中から一羽のうさぎがこっちへ向かってくるのが見えました。
片方の耳が折れたその真っ白なうさぎは、秋の足元まで来て、
「こんばんは、いい夜ですね。」
と口を開きました。
「え、ええ。そうだね。」
秋は驚きながらも、うさぎに返しました。
するとうさぎは鼻をひくひく動かせて、
「見たところあなたはうさぎではないようですが、あなたも月へ行くのですか?」
と、秋に聞きました。
「いいえ、あなたたちはみんな月へ向かっているの?」
今度は秋が聞くと、うさぎは
「ええ、今夜は十五夜ですから。」
と、ぴょんとひとはねして答えてくれました。
「ぼくたちはみんな、お月見山の頂上まで行くのです。お餅をつきに。なんたって、今日は満月ですから。」
うさぎは得意げに話して、ぴょんと秋におしりを向けました。
「もう行くの?」
「はい、みんなに遅れをとってしまいましたから。今日のお餅つきに間に合わなくなってしまいます。それでは、良い夜を。」
秋は遠くなっていくうさぎを眺めながら、今日見たことは自分の心のうちに秘めておこうと決めたのでした。
満月の夜、秋は決まって窓から月を見上げます。
あの夜のことを思い出しながら、秋は月を眺めるのでした。
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