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会長、頼ってください。
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それは、会長、桜良さんと二人で仕事をしていた時だった。
何となく、今日の会長は元気がないように見えた。はじめはそういう日もあるだろうと思って気にしなかった。
ただ、会長に話しかけようとした時に見えた会長の行動で元気がないように見えた理由がわかったような気がした。
資料を片付ける為に本棚の前に立っていた会長は、少し下を向いて、腹部に手を当て、キュッと唇を結んでいた。
「会長?」
「あぁ、どうかした?」
「いえ、あ、はい。去年の文化祭の様子を聞きたくて…今年のことを考えるのに、去年のものを少し参考にしたいので…」
「ん。それならこっちの方に確か…」
そう言いながらいつもの会長らしく、テキパキと動いて、すぐに資料が出てきた。
ここの学校の管理能力は高いと改めて感じる瞬間で、割とこういう所はここの学校に入学して以来、ずっと誇りに思っている。
「これ。はい。えらいね。僕はちょっとトイレ行ってくるから、目ぇ通しといてね。」
「はい!ありがとうございます!」
俺の頭を小さい子にするみたいに優しく撫でて、綺麗に微笑んで行った。
資料を片付ける時に見た会長はなんだかとても辛そうな表情をしていた。にもかかわらず俺が話しかけたらそれはすぐにいつもの少し口角のあがった素敵な笑顔に戻ってしまった。
会長に辛そうにしていて欲しいわけでは断じてない。ただ、辛いことを隠しているのがわかってしまったから、それが俺にとっては辛かった。
会長に何か言葉をかけるべきかと悩んでいる間に生徒会室を出ていってしまったので、結局何も言えずじまいなってしまった。
しばらく去年の文化祭の資料に目を通していると、生徒会室の部屋のドアが開いて会長が帰ってきた。
「おかえりなさい。」
「なんだか、子供に出迎えられたお父さんの気分。」
少し、冗談を言いつつ、俺の座っていたソファの前に確認がまだ終わっていない資料を持って座った。
しばらく、去年のものを参考に今年の文化祭の企画を考えていると、会長が立ち上がった。
「、ごめっ、ちょっと、、つづけてて…」
「あ、はい…」
震える声でそう言って、ドアの方へと歩いていった。
10分ほどしても会長は帰ってこなかった。
出て行った時の様子からするに、遠くのトイレには行っていないと思う。そう検討をつけて俺は生徒会室を出た。
思春期の男子がトイレに篭っているのが分かられているだけでも羞恥心があるだろうに、更にそこに人が行けば本当に嫌だろうということは容易に想像がつくが、それを差し引いても、今は見に行った方がいいと思った。
「…?会長っ!?」
「かい、とっ…けぷっ」
生徒会室を出てすぐに右、1番近くのトイレに向かおうとしたが、その必要なく、生徒会室の扉から万全の状態であれば、7歩程度歩いたありで会長は座り込んでいた。
出て行ってから10分ほどたっているのだから、しばらくはあの状態であることがわかる。
口元に手を当てているあたり、限界が来てしまったのかもしれないと、急いで駆け寄った。
近づいて初めて気づいたが、口からは少量の吐瀉物が流れていた。目には涙がとめどなく流れて、顔色は最悪といえるものだった。
「会長っ、…動けますか?」
「…」
一応聞いた質問には会長は迷うように目をふせた。その拍子に目に溜まっていた涙が一気に流れた。しかし、すぐに、たまり出す。
数秒して、小さく首を振った。
「分かりました。大丈夫ですよ。」
小さい子にするように、会長の頭を軽く撫でた。年上の人にこの対応はどうかとも思ったが、今は許してくれそうな気がした。
「1番近いトイレまで動きますね。無理だったら我慢しないで吐いちゃってください。」
座り込んでいた会長を少し、体を動かして抱き上げやすい体制にさせてもらい、背中と足に腕を回して抱き上げた。
会長は更に少量戻してしまったが、特に大きな被害はなく、無事にトイレにたどり着いた。
「会長、もういいですよ。」
「げほっ、うえ、っっ、、はぁ。おぇ…」
「大丈夫です。落ち着いてください。」
「はぁごほっ…ぅえ。。」
少し強めに背中をさすると、すぐに嘔吐きだした。
が、量はそんなに出てなくて、苦しさだけが増していっている感じだった。
「会長…?今どんな感じか言えます?」
「は、きそ…けど。さき、、も、はぃた…から」
「出すものなくなってしまってるわけですか。焦らないでください。過呼吸になりますよ。それと、無理して吐こうとしないでください。水持ってきます。」
ゆっくり、言い聞かせるように言って、俺は生徒会室に置いてあった先程たまたま買った水を取りに行った。
急いで帰ってくると、会長を連れて入った個室は閉まっていた。
どうしようか迷っていると、中から小さくすすり泣く声で、会長に何かを言われた。1回では聞き取れなくて、もう1回言ってほしいと頼むと泣き声を少し大きくしてだが、言ってくれた。
「かいと、、でてって、、、おねがいだから……おなか、いたぃ」
「…わかりました。脱水だけ気をつけてください。」
そう言い残して、トイレの入口に向かった。そして、入口に立った。
中から、水を叩きつけるような音が聞こえてくる。だけどそれも最初の方だけで、だんだんぽちょんと不定期に落ちるような音だけが聞こえてくるだけになった。
合間合間に会長の泣き声や、小さなうめき声すらも聞こえて、相当やばそうなことが簡単に想像できた。
「ぁ…げほっ、うぇ。。えぇひくっ…」
「会長!?大丈夫ですか!?」
中から嘔吐く声が聞こえて急いでドアを叩く。
「か、かい、と…ごほっ、、」
「落ち着いてください。かいちょう、大丈夫ですから、ここ、開けていただけませんか?」
赤子に話すように少しゆっくりめに話しかけると、カチッと鍵が開けられた。
中に入ると、便器に腰かけたまま吐いたようで、下着諸々被害を受けている状態の会長がいた。量は多くないが、はっき吐けなかったぶんのラストの少量が制服のズボンにしっかりとついていた。
「会長」
「…ひっ、も、…どしたら、、いぃ……った。」
「会長…だいじょうぶ。だいじょうぶですよ。調子悪かったんですから、仕方の無いことです。お腹、まだ痛いですか?」
「。。いたい」
「辛いですね。」
パニックになっている会長を思わず、ぎゅっと抱きしめた。頭や背中をとんとんと撫でていると、しばらくしたら落ち着いてきた。
会長がずっとお腹を押えながら、さすっていた。
「んっ、けほっ、っく…かいと、、、ごめん…ありがと、、すぐでる。。から、ちょっとでてて…」
「分かりました。」
会長の体をそっと離して、便器に座らせる。依然、顔色は悪いままの会長を残してでるのは心配が残るが、会長が1人になることを希望するのなら、俺は出ていくしかない。
しばらく待っていると、会長がフラフラとした足取りで出てきた。手を洗って入口まで歩いてきた会長は出てくるなり、膝から崩れ落ちた。咄嗟に支えたが、支えきることが出来ず、俺も一緒に座り込んでしまった。
「会長!?大丈夫ですか!?今どんな感じです?」
「め、まわってる…おなかいた、い、あたまも」
「保健室…この時間なら開いてないかも…」
「きもちわる。」
「吐きそうですか?」
「めまわってるのが」
「目瞑ってていいですよ。体重こっちに掛けてください。」
目元を手で覆って視界を塞ぎ、反対の手を肩に肩に回して自分によりかける。
頭の中で職員室に行けば誰かいるだろうと検討をつけて、会長を横抱きにして歩き出した。
職員室のドアを足で開けた。歩いている間に会長は寝てしまったのか、意識を飛ばしてしまうまたのか小さく聞こえてきた泣き声や助けてという声が全く聞こえなくなってしまった。
「誰かいますか!?」
「海斗…と桜良!?」
「1時間ほど前から腹痛を訴えまして、生徒会室の近くのトイレで吐き下しました。脱水症状出てると思います。今は意識ないです!」
保健室の先生はちょうど帰るところだったらしく、先生用のロッカーにいたところを俺たちの名前を呼んだ先生が連れてくると言った。
先生たちがきたら、俺の役目はないだろう。腕の中で眠る会長を見て、思った。
「もっと頼ってくださいね。」
何となく、今日の会長は元気がないように見えた。はじめはそういう日もあるだろうと思って気にしなかった。
ただ、会長に話しかけようとした時に見えた会長の行動で元気がないように見えた理由がわかったような気がした。
資料を片付ける為に本棚の前に立っていた会長は、少し下を向いて、腹部に手を当て、キュッと唇を結んでいた。
「会長?」
「あぁ、どうかした?」
「いえ、あ、はい。去年の文化祭の様子を聞きたくて…今年のことを考えるのに、去年のものを少し参考にしたいので…」
「ん。それならこっちの方に確か…」
そう言いながらいつもの会長らしく、テキパキと動いて、すぐに資料が出てきた。
ここの学校の管理能力は高いと改めて感じる瞬間で、割とこういう所はここの学校に入学して以来、ずっと誇りに思っている。
「これ。はい。えらいね。僕はちょっとトイレ行ってくるから、目ぇ通しといてね。」
「はい!ありがとうございます!」
俺の頭を小さい子にするみたいに優しく撫でて、綺麗に微笑んで行った。
資料を片付ける時に見た会長はなんだかとても辛そうな表情をしていた。にもかかわらず俺が話しかけたらそれはすぐにいつもの少し口角のあがった素敵な笑顔に戻ってしまった。
会長に辛そうにしていて欲しいわけでは断じてない。ただ、辛いことを隠しているのがわかってしまったから、それが俺にとっては辛かった。
会長に何か言葉をかけるべきかと悩んでいる間に生徒会室を出ていってしまったので、結局何も言えずじまいなってしまった。
しばらく去年の文化祭の資料に目を通していると、生徒会室の部屋のドアが開いて会長が帰ってきた。
「おかえりなさい。」
「なんだか、子供に出迎えられたお父さんの気分。」
少し、冗談を言いつつ、俺の座っていたソファの前に確認がまだ終わっていない資料を持って座った。
しばらく、去年のものを参考に今年の文化祭の企画を考えていると、会長が立ち上がった。
「、ごめっ、ちょっと、、つづけてて…」
「あ、はい…」
震える声でそう言って、ドアの方へと歩いていった。
10分ほどしても会長は帰ってこなかった。
出て行った時の様子からするに、遠くのトイレには行っていないと思う。そう検討をつけて俺は生徒会室を出た。
思春期の男子がトイレに篭っているのが分かられているだけでも羞恥心があるだろうに、更にそこに人が行けば本当に嫌だろうということは容易に想像がつくが、それを差し引いても、今は見に行った方がいいと思った。
「…?会長っ!?」
「かい、とっ…けぷっ」
生徒会室を出てすぐに右、1番近くのトイレに向かおうとしたが、その必要なく、生徒会室の扉から万全の状態であれば、7歩程度歩いたありで会長は座り込んでいた。
出て行ってから10分ほどたっているのだから、しばらくはあの状態であることがわかる。
口元に手を当てているあたり、限界が来てしまったのかもしれないと、急いで駆け寄った。
近づいて初めて気づいたが、口からは少量の吐瀉物が流れていた。目には涙がとめどなく流れて、顔色は最悪といえるものだった。
「会長っ、…動けますか?」
「…」
一応聞いた質問には会長は迷うように目をふせた。その拍子に目に溜まっていた涙が一気に流れた。しかし、すぐに、たまり出す。
数秒して、小さく首を振った。
「分かりました。大丈夫ですよ。」
小さい子にするように、会長の頭を軽く撫でた。年上の人にこの対応はどうかとも思ったが、今は許してくれそうな気がした。
「1番近いトイレまで動きますね。無理だったら我慢しないで吐いちゃってください。」
座り込んでいた会長を少し、体を動かして抱き上げやすい体制にさせてもらい、背中と足に腕を回して抱き上げた。
会長は更に少量戻してしまったが、特に大きな被害はなく、無事にトイレにたどり着いた。
「会長、もういいですよ。」
「げほっ、うえ、っっ、、はぁ。おぇ…」
「大丈夫です。落ち着いてください。」
「はぁごほっ…ぅえ。。」
少し強めに背中をさすると、すぐに嘔吐きだした。
が、量はそんなに出てなくて、苦しさだけが増していっている感じだった。
「会長…?今どんな感じか言えます?」
「は、きそ…けど。さき、、も、はぃた…から」
「出すものなくなってしまってるわけですか。焦らないでください。過呼吸になりますよ。それと、無理して吐こうとしないでください。水持ってきます。」
ゆっくり、言い聞かせるように言って、俺は生徒会室に置いてあった先程たまたま買った水を取りに行った。
急いで帰ってくると、会長を連れて入った個室は閉まっていた。
どうしようか迷っていると、中から小さくすすり泣く声で、会長に何かを言われた。1回では聞き取れなくて、もう1回言ってほしいと頼むと泣き声を少し大きくしてだが、言ってくれた。
「かいと、、でてって、、、おねがいだから……おなか、いたぃ」
「…わかりました。脱水だけ気をつけてください。」
そう言い残して、トイレの入口に向かった。そして、入口に立った。
中から、水を叩きつけるような音が聞こえてくる。だけどそれも最初の方だけで、だんだんぽちょんと不定期に落ちるような音だけが聞こえてくるだけになった。
合間合間に会長の泣き声や、小さなうめき声すらも聞こえて、相当やばそうなことが簡単に想像できた。
「ぁ…げほっ、うぇ。。えぇひくっ…」
「会長!?大丈夫ですか!?」
中から嘔吐く声が聞こえて急いでドアを叩く。
「か、かい、と…ごほっ、、」
「落ち着いてください。かいちょう、大丈夫ですから、ここ、開けていただけませんか?」
赤子に話すように少しゆっくりめに話しかけると、カチッと鍵が開けられた。
中に入ると、便器に腰かけたまま吐いたようで、下着諸々被害を受けている状態の会長がいた。量は多くないが、はっき吐けなかったぶんのラストの少量が制服のズボンにしっかりとついていた。
「会長」
「…ひっ、も、…どしたら、、いぃ……った。」
「会長…だいじょうぶ。だいじょうぶですよ。調子悪かったんですから、仕方の無いことです。お腹、まだ痛いですか?」
「。。いたい」
「辛いですね。」
パニックになっている会長を思わず、ぎゅっと抱きしめた。頭や背中をとんとんと撫でていると、しばらくしたら落ち着いてきた。
会長がずっとお腹を押えながら、さすっていた。
「んっ、けほっ、っく…かいと、、、ごめん…ありがと、、すぐでる。。から、ちょっとでてて…」
「分かりました。」
会長の体をそっと離して、便器に座らせる。依然、顔色は悪いままの会長を残してでるのは心配が残るが、会長が1人になることを希望するのなら、俺は出ていくしかない。
しばらく待っていると、会長がフラフラとした足取りで出てきた。手を洗って入口まで歩いてきた会長は出てくるなり、膝から崩れ落ちた。咄嗟に支えたが、支えきることが出来ず、俺も一緒に座り込んでしまった。
「会長!?大丈夫ですか!?今どんな感じです?」
「め、まわってる…おなかいた、い、あたまも」
「保健室…この時間なら開いてないかも…」
「きもちわる。」
「吐きそうですか?」
「めまわってるのが」
「目瞑ってていいですよ。体重こっちに掛けてください。」
目元を手で覆って視界を塞ぎ、反対の手を肩に肩に回して自分によりかける。
頭の中で職員室に行けば誰かいるだろうと検討をつけて、会長を横抱きにして歩き出した。
職員室のドアを足で開けた。歩いている間に会長は寝てしまったのか、意識を飛ばしてしまうまたのか小さく聞こえてきた泣き声や助けてという声が全く聞こえなくなってしまった。
「誰かいますか!?」
「海斗…と桜良!?」
「1時間ほど前から腹痛を訴えまして、生徒会室の近くのトイレで吐き下しました。脱水症状出てると思います。今は意識ないです!」
保健室の先生はちょうど帰るところだったらしく、先生用のロッカーにいたところを俺たちの名前を呼んだ先生が連れてくると言った。
先生たちがきたら、俺の役目はないだろう。腕の中で眠る会長を見て、思った。
「もっと頼ってくださいね。」
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