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先輩とは、違うよ。
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「何かあれば遠慮なく相談してね。」
中高大一貫校で、俺がまだ中学1年だったときに大学4年の先輩から言われた言葉だった。
俺は優しくて世話焼きな先輩が大好きだった。教えるのも上手くて、バレー以外に苦手な教科も教えてもらったりしていた。
あれから約10年たった今、俺は大学4年でこのバレー部の部長となった。
あんな先輩になれるように。
俺の自分の理想像は先輩だった。
先輩は頼りになる、自分でなんでもしてしまう、優しい、そんなイメージだけが俺の頭にあった。
だから言えなかったのだ。自分の不調を。
「じゃあ、ウォーミングアップからな~。ノルマは中学生5週、高校生大学生は8週。無理はしないように!スタート!」
俺は走り込み開始の号令をかけた。
本当は朝から続いている頭痛で、走りたくなかった。だけど部長が走らないわけにはいかない。部長は多少無理するくらいでいいのだ。
「次はレシーブな!」
さっきの走り込みは俺が1番最後に終わった。走る度に振動で頭がガンガンと痛んだ。途中何度も足を止めかけた。誰でもいいから俺の現状に気づいてくれと思った。だけどそれはダメ、部長なのだから。
次はちゃんとしないと。お手本にならないと。
練習をしていると、高一の紗羅が俺のところに来た。
「拓野先輩!これって…」
「紗羅、僕が教えるよ。拓野、あっちゃんが呼んでる。」
「亜久未?わかった。」
「奈都先輩!ありがとうございます。ここが…」
亜久未は副部長。まあ実際は俺よりもリーダーらしくて、あいつが部長ではないことが疑問なくらいだ。だが、亜久未はいつも「俺は真正面からのリーダーには向かない。」って言うけど。
そんなしっかりした亜久未様が呼んでいるなら不調がなんでも行かなくてはいけない。
練習場所から少し離れた死角になるような所に亜久未がいた。
「亜久未ー」
「拓野…」
亜久未は俺が来たことを確認すると、突然俺を抱きしめた。
ビックリはしたものの、一瞬体の力が全部抜けたような気がした。
俺は亜久未の肩を押して、抵抗した。
「おい、何すんだよ。」
「そのまま力抜け。頭痛いんだろ。気付いてねぇかもだけど、熱もある。」
「っ!?」
「わかる。中学の時から一緒なんだぞ。全部とまではいかねぇけど、多少無理してるくらいならすぐ見抜ける。だからほら、力抜け。」
俺はさっきまで張っていた糸が切れた。
亜久未の言う通りに、体の力を抜いた。亜久未がいるから、大丈夫と、そう思った。
俺が崩れ落ちるのを防ぐようにしながら、亜久未もしゃがんでくれた。
さっきまで見て見ぬふりをしていた頭痛が本格的に存在を主張してきて、そのせいで吐き気までしてきた。
「い"っ…ぇあっ…った…」
「よしよし、もう、大丈夫だから。」
「はっ、、はっ、、うっ…いた…」
「落ち着いて、息しろよ。吐きそうなら我慢せずに吐いちまえ。」
「…ぅうん、、、まだ、、」
「そか。」
生理的な涙が溢れ出て、地面に落ちていく。動いたあとに出てくる汗とは別の汗に気分の悪さを助長する。その辺も全部亜久未は見抜いてるんだ。
「んっ、、ぁぁ…うぇ、、っ…はっ、、いた。っ、、」
「そろそろか。」
亜久未が何かを呟いたかと思うとガサガサとビニールがすれるような音がした。
それを俺の前において、亜久未は俺の横に移動して背中を摩った。
「吐きそうなら我慢せずに吐けって。」
「…やっ、、ぐっ、げほっ、、」
上がってくる感じなあるが、出すためのあと一押しがないのだ。気分だけが悪くなっていく。
「ごほっ、、げほっ、、うぇ、えぇ、」
嘔吐いてみるものの、出てくる様子はない。
「吐けないか?」
亜久未の問いかけにコクリと首を振った。だがそれはただ単に問いかけているだけとは違うような感じがした。
「あ、、く、み……」
「何?」
「なに、、、するの、、」
「手伝う。吐きそうで吐けないのは辛い。頭痛い上に熱もある。その状態で吐けないのはさらに辛いだろうから、お手伝い」
言うが早いか、亜久未は次は俺の後ろに移動して、鳩尾を下から上に押し上げた。
「っ、、うぇぇえ、、げほっ、ごほごほっ、。、、……うぇ、げぼっ。、」
「手荒で悪ぃな。」
亜久未の顔はみえいから、どういう表情か分からないけど、なんだかすごく申し訳ないことをした時のような声だった。
「げほっ、、」
「落ち着いたか?」
「、、う、ん。。。」
「頭は?さっきより痛い?」
「…うん、、、」
「しばらくよくなるまで待つつもりだったけど、早めに保健室行った方がいいかもな。歩けるか?」
袋を片しながら亜久未が言う。歩けそうにはないが、自分で自分の吐瀉物すらも片付けられる状態ではないのだ。でもこれ以上、面倒をかける訳にもいかない気がする。
「歩けそうにないなら、ちゃんとそう言え。」
「っ。。でも、、、」
俺が言うよりも先に亜久未は俺を背負った。体が中に浮く感じにびっくりして、反射的に亜久未の首に手を回した。
「じゃ、行くぞ。何かあったら遠慮なく言えな。」
「……うん、、!」
亜久未が先輩みたいにかっこよかった。それに亜久未の背中に、声に安心して俺は保健室に着く前に、亜久未の背中で眠りに落ちた。
そう言えば、先輩も部長ではなく副部長だったなと思いながら。
「ったく…年上がいないとこまで来たんだから、同期を頼れよ…それに、年下に頼っちゃいけねぇなんて誰が言ったよ。?な、紗羅?」
「っは、はい。」
「あっちゃん、僕にはなんかないの?」
「奈都は頼りにくい。」
「ひどっ!」
保健室にはバレー部の全部員が集まっていたとか…
中高大一貫校で、俺がまだ中学1年だったときに大学4年の先輩から言われた言葉だった。
俺は優しくて世話焼きな先輩が大好きだった。教えるのも上手くて、バレー以外に苦手な教科も教えてもらったりしていた。
あれから約10年たった今、俺は大学4年でこのバレー部の部長となった。
あんな先輩になれるように。
俺の自分の理想像は先輩だった。
先輩は頼りになる、自分でなんでもしてしまう、優しい、そんなイメージだけが俺の頭にあった。
だから言えなかったのだ。自分の不調を。
「じゃあ、ウォーミングアップからな~。ノルマは中学生5週、高校生大学生は8週。無理はしないように!スタート!」
俺は走り込み開始の号令をかけた。
本当は朝から続いている頭痛で、走りたくなかった。だけど部長が走らないわけにはいかない。部長は多少無理するくらいでいいのだ。
「次はレシーブな!」
さっきの走り込みは俺が1番最後に終わった。走る度に振動で頭がガンガンと痛んだ。途中何度も足を止めかけた。誰でもいいから俺の現状に気づいてくれと思った。だけどそれはダメ、部長なのだから。
次はちゃんとしないと。お手本にならないと。
練習をしていると、高一の紗羅が俺のところに来た。
「拓野先輩!これって…」
「紗羅、僕が教えるよ。拓野、あっちゃんが呼んでる。」
「亜久未?わかった。」
「奈都先輩!ありがとうございます。ここが…」
亜久未は副部長。まあ実際は俺よりもリーダーらしくて、あいつが部長ではないことが疑問なくらいだ。だが、亜久未はいつも「俺は真正面からのリーダーには向かない。」って言うけど。
そんなしっかりした亜久未様が呼んでいるなら不調がなんでも行かなくてはいけない。
練習場所から少し離れた死角になるような所に亜久未がいた。
「亜久未ー」
「拓野…」
亜久未は俺が来たことを確認すると、突然俺を抱きしめた。
ビックリはしたものの、一瞬体の力が全部抜けたような気がした。
俺は亜久未の肩を押して、抵抗した。
「おい、何すんだよ。」
「そのまま力抜け。頭痛いんだろ。気付いてねぇかもだけど、熱もある。」
「っ!?」
「わかる。中学の時から一緒なんだぞ。全部とまではいかねぇけど、多少無理してるくらいならすぐ見抜ける。だからほら、力抜け。」
俺はさっきまで張っていた糸が切れた。
亜久未の言う通りに、体の力を抜いた。亜久未がいるから、大丈夫と、そう思った。
俺が崩れ落ちるのを防ぐようにしながら、亜久未もしゃがんでくれた。
さっきまで見て見ぬふりをしていた頭痛が本格的に存在を主張してきて、そのせいで吐き気までしてきた。
「い"っ…ぇあっ…った…」
「よしよし、もう、大丈夫だから。」
「はっ、、はっ、、うっ…いた…」
「落ち着いて、息しろよ。吐きそうなら我慢せずに吐いちまえ。」
「…ぅうん、、、まだ、、」
「そか。」
生理的な涙が溢れ出て、地面に落ちていく。動いたあとに出てくる汗とは別の汗に気分の悪さを助長する。その辺も全部亜久未は見抜いてるんだ。
「んっ、、ぁぁ…うぇ、、っ…はっ、、いた。っ、、」
「そろそろか。」
亜久未が何かを呟いたかと思うとガサガサとビニールがすれるような音がした。
それを俺の前において、亜久未は俺の横に移動して背中を摩った。
「吐きそうなら我慢せずに吐けって。」
「…やっ、、ぐっ、げほっ、、」
上がってくる感じなあるが、出すためのあと一押しがないのだ。気分だけが悪くなっていく。
「ごほっ、、げほっ、、うぇ、えぇ、」
嘔吐いてみるものの、出てくる様子はない。
「吐けないか?」
亜久未の問いかけにコクリと首を振った。だがそれはただ単に問いかけているだけとは違うような感じがした。
「あ、、く、み……」
「何?」
「なに、、、するの、、」
「手伝う。吐きそうで吐けないのは辛い。頭痛い上に熱もある。その状態で吐けないのはさらに辛いだろうから、お手伝い」
言うが早いか、亜久未は次は俺の後ろに移動して、鳩尾を下から上に押し上げた。
「っ、、うぇぇえ、、げほっ、ごほごほっ、。、、……うぇ、げぼっ。、」
「手荒で悪ぃな。」
亜久未の顔はみえいから、どういう表情か分からないけど、なんだかすごく申し訳ないことをした時のような声だった。
「げほっ、、」
「落ち着いたか?」
「、、う、ん。。。」
「頭は?さっきより痛い?」
「…うん、、、」
「しばらくよくなるまで待つつもりだったけど、早めに保健室行った方がいいかもな。歩けるか?」
袋を片しながら亜久未が言う。歩けそうにはないが、自分で自分の吐瀉物すらも片付けられる状態ではないのだ。でもこれ以上、面倒をかける訳にもいかない気がする。
「歩けそうにないなら、ちゃんとそう言え。」
「っ。。でも、、、」
俺が言うよりも先に亜久未は俺を背負った。体が中に浮く感じにびっくりして、反射的に亜久未の首に手を回した。
「じゃ、行くぞ。何かあったら遠慮なく言えな。」
「……うん、、!」
亜久未が先輩みたいにかっこよかった。それに亜久未の背中に、声に安心して俺は保健室に着く前に、亜久未の背中で眠りに落ちた。
そう言えば、先輩も部長ではなく副部長だったなと思いながら。
「ったく…年上がいないとこまで来たんだから、同期を頼れよ…それに、年下に頼っちゃいけねぇなんて誰が言ったよ。?な、紗羅?」
「っは、はい。」
「あっちゃん、僕にはなんかないの?」
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