隠さないで。

トウモロコシ

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隠さないで。

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ごそごそと何度も部屋から出たり入ったりする物音で目が覚めた。
はじめはトイレかな程度にしか思っていなかったけれど、一、二回で終わらず、さすがに心配になって、起き上がった。

暁人は二人で使っているベッドの縁に軽く腰かけて下を向いていた。

「暁人?」
「あ、起こした?ごめんね。」
「それはいいけど、どうかしたの?」
「大丈夫。放っておいていいよ。」
「だめ。なんか、今の暁人は放っておけない感じがする。」

俺の方をみた暁人の目をしっかりと見てそう言った。
暗い中だが、お腹を抑えているのは見えた。放っておいていいって言ってるくらいだから、平然を装っているつもりなんだろう。ということはお腹を抑えているのは、無意識ということになる。

「お腹痛いの?」
「……!?」

本当に無意識にしていたことのようで、指摘した瞬間、不自然に手をお腹から退けた。

「無理しなくていいよ。どう?」
「…うん。三十分くらい、前かな…ずっと…」
「座ってた方がいい?」
「…」
「調子悪い時に無理しなくていいのに。俺のことは気にしなくていいから。寝てた方が楽ならそうしときなよ。」

布団から、出て暁人の正面にまわり、小さい子に話すようにすると、最低限のことは教えてくれた。
抱きしめて「いい子。」と言いながら頭を撫でた。そっと上半身を布団の上に倒した。
両手でお腹を抑えて、丸くなった。さっき平然を装っていたときとは全く違う。そんなになる前に起こしてくれて良かったのに、という気持ちと共にもっと早く気づいてあげれば良かったと思う。

抱きしめた時に少し、吐瀉物の匂いがしたから部屋を出ていっていたのは吐き出しに行っていたのだとわかった。
あまり触れられたくはないだろうけど…。

「さっき、吐いた?」
「…!うん。」
「まだ吐きそ?」
「ううん。。もう、だぃ、じょうぶ。」
「ん。」

膝に手を入れて、両足もそっとベッドの上にあげる。掛け布団が下敷きになってしまったから、予備の布団を出してきてかけた。

「熱はなさそう。寒い?熱い?」
「わかんない。」
「じゃあ、とりあえずこれでいいね。一応熱計っとこ。」
「さや…」
「ん?」

体温計を取りに行こうとドアノブに手をかけたところで呼び止められた。俺の名前を呼んで後に続く言葉がない。口は開いたり閉じたりしているから、言いたいことがあるのはわかるが、小さい声というわけではなく、本当に空気だけがすっと出てきている。

「なんか、欲しいものあればあったら取ってくるよ?」
「そ、じゃなくて…」
「トイレいく?ついていこうか?」
「ううん。」

暁人が何を言いたいのか、時に沈黙の状態ですら分かるのに、今回は全くわからない。熱を測るのは急がない。
お腹が痛いのであれば湯たんぽなどは持ってきた方がいいかな。
なんて頭の中で考え始めた。

「手、、」
「て?」
「にぎって……」
「こう?」
「……ふぅ」
「え、どしたの?」
「あんしんする…ありがとう。」

差し出された手を握ると心の底から安心したような顔をした。
手を離す時にはそれはすっかり寂しそうな迷子の子犬のような表情になった。
そこまできてやっと、暁人が今して欲しいことがわかった気がする。

「暁人が寝るまでこうしてるよ。」

布団の中に入れられた手を探し出して握ると、すぐに先程の安心した顔をした。

「ほんと。!?」
「うん。」
「ありがと…。」

暁人はすぐに寝息をたてた。俺は安心して眠る暁人の頬にそっとキスをした。
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