ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました

八代奏多

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5. もう一度

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 会話に少し間が空き、お茶を淹れる手を止めた時だった。

「良かったら、庭園でお茶にしないか? そうすれば、庭園も案内出来る」

 クラウス様がそんなことを口にした。

「でも、その間に冷めてしまいますわ」
「確かにそうだな。まずはここでお茶にして、飲み終えたら庭園に行こう」

 そう提案され、私は頷くとクラウス様のために椅子を引いて腰掛けるように促した。

「ありがとう。でも、これは使用人の仕事だからアレシアはしなくていいよ」

 爽やかな笑顔で礼を言いながらも、そう指摘してくるクラウス様。

「分かりましたわ」

 慌ててそう口にし、私は彼の向かい側に座った。

 美形の笑顔って、こんな時でも破壊力があるのね。

 そんなことを思いながら、目を輝きにやられないように背ける私。

「早速頂いてもいいかな?」
「もちろんですわ」

 慌てて向き直り、そう返事をすると、早速彼は優雅な仕草でお茶を口に含んだ。

「なんだこのお茶は」
「何かご不満でしたか……?」
「いや、不満なんて全くない。美味しすぎるんだ」

 はい?
 ある程度まともなお茶は入れられているけど、義妹や義母に不味いと言われるお茶ですよ?

「本気でおっしゃっていますの? 義母や義妹は常に不味いと言われてましたのに……」
「それは舌がどうかしているんだろうな。父上達にも飲ませたいんだけど、いいかな?」
「ええ、構いませんわ」

 困惑気味に答える私。

 数分後、使用人に呼ばれたクラウス様のご両親がやってきて、お茶を口に含むなり声を上げた。

「まぁ! こんなに美味しいお茶、初めてよ。お代わりをお願いできるから?」
「驚いた。うちの使用人よりも美味しく淹れられるとは」

 まさかの大絶賛。思わず私はさっきと似たような言葉を口にした。

「私の淹れるお茶って、いつも不味いと言われてますのに」
「それは、そいつの舌が壊れてる」

 私の言葉に、あり得ないと言わんばかりの表情でそう口にする公爵様。

「このお茶は……いえ、貴女の淹れるお茶は美味しい。私が保証しますわ」

 ご夫人もこんな様子で、私はどう反応していいか困惑してしまい、言葉を出せなかった。
 貴族の令嬢としては見事な失態で、焦りが浮かんできた時だった。

 クラウス様が救いの手を差し伸べてくれた。

「とりあえず、飲み終えたことだし庭園に行こう」
「私達も一緒に行っていいかしら?」
「同じテーブルには来ないでください」

 ご夫人を睨むクラウス様。それを見たご夫人は

「まぁまぁ。恋してるのね」

 楽しそうに、そんなことを呟いていた。



 それから私達は4人で庭園に向かった。

 クラウス様から説明を受けながら、庭園の小路を進んでいくと丸いテーブルが5つほどセットされている場所に辿り着いた。

「俺達はここにしよう」

 庭園を見渡せる、開けた方が見れる席に案内してくれるクラウス様。
 私がその席に腰掛けると、彼の両親は私の視界にギリギリ入る席についていた。

「お茶をお持ちしました」

 間もなくやってきた使用人がお茶を淹れてくれて、お茶を飲みながら雑談を交えた説明を聞く私。
 そして、クラウス様は立ち上がりながらこんなことを口にした。

「ここからは見えない場所を見せたいんだ」
「気になりますわ。案内、お願いしますね?」

 私も立ち上がり笑顔でそう伝えると、彼は私の歩幅に合わせながら歩き始めた。



 雑談を楽しみながら少し歩くと、綺麗な花に囲まれた場所に辿り着いた。そんな時だった。

 不意に、クラウス様が跪いた。

「クラウス様……?」
「初めて出会った時から貴女のことが好きでした。俺と、婚約していただけませんか?」

 綺麗な指輪を差し出しながら、そう言われて。

「はい、よろしくお願いします」

 私は心からの笑顔を浮かべて、そんな答えを返した。

 彼は本当に私のことを好いてくれていて。
 これが本当の意味での政略的な婚約ではないと分かって。

 すごく、嬉しかった。
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