9 / 17
9. 変化の理由
しおりを挟む
「そろそろお暇しよう」
パーティーが再開してから10分、突然そんなことを言われ、思わず聞き返してしまった。
「もう、ですか?」
「アレシアが楽しめてなさそうだからね。リリア嬢のことが気になってるのか?」
「はい。いくら腹が立ってても、妹に死なれるのは嫌ですもの」
クラウス様の問いかけにそう答える私。
謝られる前に死なれるのは嫌だから、という理由もある。
でも、それ以上に、半分とはいえ血を分けた妹にこんな下らない理由で命を落としては欲しくなかった。
「なるほどな」
納得するように頷くクラウス様。
この会話から時間が経たないうちに医務室の前に着いて、私はノックをして扉を開けた。
「今まで何をしていた!」
直後、そんな怒鳴り声が耳に入ってきた。
「お暇をいただくまで、パーティーに参加していましたわ」
「妹が大怪我をしたのによくそんなことが出来るな!?」
正直に答えただけなのに、お父様はさらに声を荒げた。
それを見て、クラウス様は蔑むような視線を送っている。
「助けは出しましたわ」
「あの水はお前の仕業だというのか?
笑わせるな。お前は水を手元に生み出すことしか出来ないはずだ」
そう口にするお父様。
確かに、8年前まではそれしか出来なかった。
でも、こっそり練習するうちに水を自在に操れるようになっている。
でも、事実を伝えても損しかしないと分かっていたから、魔法のことは誤魔化すつもりでいた。
正直に言って、この反応はありがたかった。
「ええ、そうですわね。でも、お医者様を呼んだのは私ですわ」
「そうか。でも、付き添わなくてもいい理由にはならないぞ?
もういい、出て行け」
そう言って手を振るお父様。
そんな時だった。
「お姉様を追い出さないで……」
弱々しい声がカーテンの向こうから聞こえて来た。
「何故だ?」
「分からないなら、一旦廊下に出てください」
「分かった……」
渋々といった様子で医務室を後にするお父様。
「お姉様、そばに来て欲しいですわ……
「分かったわ」
弱っているリリアのお願いを断ることは出来なかった。
「今まで酷いことをしてごめんなさい……」
カーテンの中に入るとそんなことを言われて、私は戸惑った。
「唐突ね?」
「こんなに辛いことだとは思わなかったの。
言い訳みたいになってしまうけど、お母様に命令されて侍女の仕事をお願いしていたの。でも、支配しているって感じがして、何か気に入らないことがあったらお姉様に当たっていたのは私の意志。
本当にごめんなさい。こんなことで許してもらえるとは思ってないけど、せめて気持ちだけでも……」
そこで息を吸うリリア。私は静かに続きを待った。
「酷いことをしたのに、助けてくれてありがとう」
「気付いていたのね」
「お茶に入ってる魔力と同じものを感じたの」
この言葉を聞いて、私は衝撃を受けた。
魔力を感じることが出来る人は、魔法の使い手に限られるから。
つまり、これは……。
「もしかして、貴女も魔法が使えるの?」
「お姉様には及ばないけど、一応使えるわ。でも、このことを知られたらお父様に何をされるか分からないから、黙っていたの」
リリアもクズ親父ことお父様のことを恐れていたらしい。
もしかしたら、私を攻撃することで身を守ろうとしていたのかもしれない。
そう思うと、なんともいえない気持ちになった。
「貴女も怯えていたのね……」
「でも、お姉様に酷いことをしていい理由にはならないから……」
申し訳なさそうにそう言われて、私はリリアが反省していることを悟った。
そして、助けて良かったと本気で思ったを
「そうね。これだけは一応言っておくわ。
今は貴女のことを許すつもりは欠片もないから」
「うん……」
「最初から姉妹らしくしたかったわ」
「本当にごめんなさい……」
本心を告げると、涙を零しながらそう言われて。
「分かってくれたらそれで十分よ」
私はそれだけ言って、カーテンの外に出た。
パーティーが再開してから10分、突然そんなことを言われ、思わず聞き返してしまった。
「もう、ですか?」
「アレシアが楽しめてなさそうだからね。リリア嬢のことが気になってるのか?」
「はい。いくら腹が立ってても、妹に死なれるのは嫌ですもの」
クラウス様の問いかけにそう答える私。
謝られる前に死なれるのは嫌だから、という理由もある。
でも、それ以上に、半分とはいえ血を分けた妹にこんな下らない理由で命を落としては欲しくなかった。
「なるほどな」
納得するように頷くクラウス様。
この会話から時間が経たないうちに医務室の前に着いて、私はノックをして扉を開けた。
「今まで何をしていた!」
直後、そんな怒鳴り声が耳に入ってきた。
「お暇をいただくまで、パーティーに参加していましたわ」
「妹が大怪我をしたのによくそんなことが出来るな!?」
正直に答えただけなのに、お父様はさらに声を荒げた。
それを見て、クラウス様は蔑むような視線を送っている。
「助けは出しましたわ」
「あの水はお前の仕業だというのか?
笑わせるな。お前は水を手元に生み出すことしか出来ないはずだ」
そう口にするお父様。
確かに、8年前まではそれしか出来なかった。
でも、こっそり練習するうちに水を自在に操れるようになっている。
でも、事実を伝えても損しかしないと分かっていたから、魔法のことは誤魔化すつもりでいた。
正直に言って、この反応はありがたかった。
「ええ、そうですわね。でも、お医者様を呼んだのは私ですわ」
「そうか。でも、付き添わなくてもいい理由にはならないぞ?
もういい、出て行け」
そう言って手を振るお父様。
そんな時だった。
「お姉様を追い出さないで……」
弱々しい声がカーテンの向こうから聞こえて来た。
「何故だ?」
「分からないなら、一旦廊下に出てください」
「分かった……」
渋々といった様子で医務室を後にするお父様。
「お姉様、そばに来て欲しいですわ……
「分かったわ」
弱っているリリアのお願いを断ることは出来なかった。
「今まで酷いことをしてごめんなさい……」
カーテンの中に入るとそんなことを言われて、私は戸惑った。
「唐突ね?」
「こんなに辛いことだとは思わなかったの。
言い訳みたいになってしまうけど、お母様に命令されて侍女の仕事をお願いしていたの。でも、支配しているって感じがして、何か気に入らないことがあったらお姉様に当たっていたのは私の意志。
本当にごめんなさい。こんなことで許してもらえるとは思ってないけど、せめて気持ちだけでも……」
そこで息を吸うリリア。私は静かに続きを待った。
「酷いことをしたのに、助けてくれてありがとう」
「気付いていたのね」
「お茶に入ってる魔力と同じものを感じたの」
この言葉を聞いて、私は衝撃を受けた。
魔力を感じることが出来る人は、魔法の使い手に限られるから。
つまり、これは……。
「もしかして、貴女も魔法が使えるの?」
「お姉様には及ばないけど、一応使えるわ。でも、このことを知られたらお父様に何をされるか分からないから、黙っていたの」
リリアもクズ親父ことお父様のことを恐れていたらしい。
もしかしたら、私を攻撃することで身を守ろうとしていたのかもしれない。
そう思うと、なんともいえない気持ちになった。
「貴女も怯えていたのね……」
「でも、お姉様に酷いことをしていい理由にはならないから……」
申し訳なさそうにそう言われて、私はリリアが反省していることを悟った。
そして、助けて良かったと本気で思ったを
「そうね。これだけは一応言っておくわ。
今は貴女のことを許すつもりは欠片もないから」
「うん……」
「最初から姉妹らしくしたかったわ」
「本当にごめんなさい……」
本心を告げると、涙を零しながらそう言われて。
「分かってくれたらそれで十分よ」
私はそれだけ言って、カーテンの外に出た。
47
あなたにおすすめの小説
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
裏切り者として死んで転生したら、私を憎んでいるはずの王太子殿下がなぜか優しくしてくるので、勘違いしないよう気を付けます
みゅー
恋愛
ジェイドは幼いころ会った王太子殿下であるカーレルのことを忘れたことはなかった。だが魔法学校で再会したカーレルはジェイドのことを覚えていなかった。
それでもジェイドはカーレルを想っていた。
学校の卒業式の日、貴族令嬢と親しくしているカーレルを見て元々身分差もあり儚い恋だと潔く身を引いたジェイド。
赴任先でモンスターの襲撃に会い、療養で故郷にもどった先で驚きの事実を知る。自分はこの宇宙を作るための機械『ジェイド』のシステムの一つだった。
それからは『ジェイド』に従い動くことになるが、それは国を裏切ることにもなりジェイドは最終的に殺されてしまう。
ところがその後ジェイドの記憶を持ったまま翡翠として他の世界に転生し元の世界に召喚され……
ジェイドは王太子殿下のカーレルを愛していた。
だが、自分が裏切り者と思われてもやらなければならないことができ、それを果たした。
そして、死んで翡翠として他の世界で生まれ変わったが、ものと世界に呼び戻される。
そして、戻った世界ではカーレルは聖女と呼ばれる令嬢と恋人になっていた。
だが、裏切り者のジェイドの生まれ変わりと知っていて、恋人がいるはずのカーレルはなぜか翡翠に優しくしてきて……
ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。
「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
「君との婚約は時間の無駄だった」とエリート魔術師に捨てられた凡人令嬢ですが、彼が必死で探している『古代魔法の唯一の使い手』って、どうやら私
白桃
恋愛
魔力も才能もない「凡人令嬢」フィリア。婚約者の天才魔術師アルトは彼女を見下し、ついに「君は無駄だ」と婚約破棄。失意の中、フィリアは自分に古代魔法の力が宿っていることを知る。時を同じくして、アルトは国を救う鍵となる古代魔法の使い手が、自分が捨てたフィリアだったと気づき後悔に苛まれる。「彼女を見つけ出さねば…!」必死でフィリアを探す元婚約者。果たして彼は、彼女に許されるのか?
お前との婚約は、ここで破棄する!
ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
妹に婚約者を奪われた私ですが、王子の婚約者になりました
天宮有
恋愛
「お前よりも優秀なメリタと婚約することにした」
侯爵令嬢の私ルーミエは、伯爵令息バハムスから婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後バハムスを奪いたかったと、妹メリタが私に話していた。
婚約破棄を言い渡されてすぐに、第四王子のジトアが屋敷にやって来る。
本来はジトアが受けるはずだった呪いの身代わりになっていたから、私は今まで弱体化していたようだ。
呪いは来月には解けるようで、これから傍にいたいとジトアは言ってくれる。
ジトア王子の婚約者になれた私は、呪いが解けようとしていた。
王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~
葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」
男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。
ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。
それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。
とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。
あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。
力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。
そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が……
※小説家になろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる