虐げられるのは嫌なので、モブ令嬢を目指します!

八代奏多

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学院編

15. 攻撃されてしまった

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「貴女達……私達のことを馬鹿にしていますの⁉︎」

 そんな声と共に肩を掴まれて思わず振り向いてしまった。

「その程度のアクセサリーしか買えないほど低い家格の貴女は、わたくしに従って当然だとは思いませんの?」

 一応、この学院に通っている公爵家の方はレオン様とリーシェ様とミリア様だけなので、アエリア様と同じ家格以下ということになる。
 アエリア様が味方の今はこの方達に従う必要はないはずなのだけど。

 アクセサリーを最低限にしていたのが裏目に出てしまったようね……。

「なぜ従う必要があるのでしょうか? 自身の身分を明かさないで命令するなんて、無礼だとは思いませんの?」
「何ですって? わたくし達の方が長い間この席を使っていますのよ。優先権はわたくし達にありますわ!」

 そう反論するご令嬢達。
 私が喧嘩腰なのは、他の貴族達に見下されて面倒なことに巻き込まれないようにするために強気だということを示すためにしている。

 それに……大人しく場所を移れば円満に収まったかもしれないけど、他の席は見た限り埋まっているから移るわけにはいかない。

「貴女のお名前を教えていただけたら、移動することも考えますわ」

 アエリア様がそう口にすると……

「もういいですわ……これでもくらいなさい!」

 ……私の肩を掴んだ令嬢がそんな言葉と共に火の魔法を放ってきた。

 顔めがけて至近距離から飛んできた火の玉を、私は反射的に手で遮った。
 その瞬間、火の玉が小さく爆発して炎ではない赤いモノが少しだけ飛び散った。

 顔に火が当たるのは防げたけれど、素手で攻撃魔法を止めたせいで激痛が襲ってきた。
 爆発音に驚いた周りの人達が悲鳴を上げて逃げ出す。

「私の友達に何をしてくれますの⁉︎」
「ルールを守れない者には罰を与える。そんな当たり前なことも分かりませんの?
 それとも、貴女もこの女のように火傷を負いたいのですか?」

 爆発したから火傷だけじゃないのだけど……。
 その証拠に、私の右手からは血が流れていた。

「侯爵家の私に手を上げて良いとお思いですの?」
「貴女達、1年生ですわよね? 上級生の私達の命令を蔑ろにしても良いと思ってますの⁉︎」

 その瞬間、再び魔法が飛んできた。そして、私の防御魔法当たって空中で消えた。
 2回も攻撃を受けるほど私は馬鹿じゃない。

「アエリア様、この方達の家の位は分かりますか?」
「リリアーナ様に攻撃してきた方は子爵家だったと思いますわ」
「そうでしたのね。さっきの攻撃、伯爵家の私を手にかけようとしたと見做みなしてもいいのですよね?」

 15歳以上の貴族には身分が低い人達を個人的に罰する権利がある。危害が加えられたりした時にしか使えないけれど、学院の中でも使うことができる。
 被害を受けていれば、命に関わるような怪我をさせない限り攻撃をすることも許されている。

 だから、今の私は魔法を放ってきた目の前の令嬢達を攻撃することが許される。
 魔法で簡単に治せる怪我だから、攻撃するつもりはないのだけど……。

「1年生の貴女が私に勝てるとは思えませんわ」

 そんな言葉と共に防御魔法が使われたから、私はその防御魔法を破れる強さの攻撃魔法を使った。

「きゃっ……」

 そんな声と共に目の前の令嬢が崩れ落ちる。
 私が使ったのは当たったら麻痺するか気絶するだけの雷の魔法だから、怪我はしてないはず。

「リリアーナ様、手の怪我は大丈夫ですの?」
「大丈夫ですよ。これくらいすぐに治せますもの」
「では、私には怒ってませんのね?」
「怒るわけないじゃないてすか!」
「良かったですわ……」

 この後、倒れたご令嬢はそのままに雑談をしながらランチを続けた。
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