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学院編
24. 幸福の塔
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カフェでスイーツを楽しんだ私達は馬車で王都にある観光スポットの1つ、通称『幸福の時計塔』に向かっている。
この名前の由来は、仲睦まじい事でも有名な今の国王陛下と王妃様が初めてのデートで寄った場所だからだそうだ。
実はこの時計塔、300年以上も昔に作られて外から魔力の供給無しで動き続けている魔導具でもある。
10年以上前から王都で付き合い始めた男女は最初のデートで幸福の時計塔に行くことが慣例になっている。
だから、貴族も平民も多く訪れている。
レオン様からここに行く話を聞かされた時は誰かに見られるのが怖くて断ったけど、変装することを提案されて了承した。
そういうわけで、今は馬車の中で変装の準備をしている。
「リリー髪長いから纏めるの大変じゃないですか?」
「湯あみの時に自分でやってますから大丈夫ですよ」
そう返ししながら髪を結ぶ私。他所のご令嬢の中には侍従の方に任せていて自分で結べない方もいるから、心配になったのかな?
ちなみに、最近はなんとなく髪を伸ばしているから腰の上辺りまである。そろそろ切るつもりだけどね。
変装用の髪型は、帽子で隠せる位置に纏めて、見た目の長さが肩より少し下になるように流す感じにした。
これなら、纏めている部分は顔を見られないようにするための帽子で隠せるし、ぱっと見なら髪の長さが違うから私と気付く人はいないと思う。
「どうでしょうか?」
試しに帽子をかぶって聞いてみる私。
「うん、大丈夫そうだね」
私の顔を覗き込んで答えるレオン様。
帽子のツバが大きいものを被っている効果で、覗き込まないと見えないみたいだから安心した。
背があまり高く無い私のことだし、顔を見られる心配は無いと思う。帽子も深くかぶるからね!
☆ ☆ ☆
準備を終えてから数分後、時計塔の近くに到着した。
「意外と人少ないんですね」
「今日は平日だからね。休日は混んでると聞くよ」
「そうなんですね。今日にして良かったです」
私が笑顔でそう口にすると、不意にレオン様の手が私の手に当たった。
手、繋ごうって意味なのかな……?
そんな事を聞いたことがあるけど、自信が無い。
私から手を繋いで、もし違ったら変に思われないかな……?
でも、手は繋いでみたいし……
えーいっ!
覚悟を決めた私はレオン様の手に自分の手を絡めた。
私が手を繋ぐと、レオン様は嬉しそうにしていた。
手を繋ぎたいって合図だったみたいで安心した。
「ちょっと恥ずかしいですわ……」
「リリーからしてくれたのに?」
「レオン様が繋ぎたそうだったので。それに、私も繋ぎたかったですし……」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。でも、無理に繋がなくてもいいからね」
レオン様はそう言ってくれたけど、手を繋いだまま塔の前まで来てしまった。
「登ってみる?」
「登れるんですか⁉︎」
レオン様に言われて驚く私。
「登れるよ。知らなかったの?」
「知りませんでした……」
そんな会話をしながら時計塔の反対側の下まで行くと、扉が開いているのが見えた。
そして、そのまま中に入った。
「階段なんですね……」
「登れる? 無理なら抱いてくけど」
「それは恥ずかしいから嫌です!」
人の目もあるから、抱かれるのはお断りしたい。
そう思って言葉を返した私はあるものを見つけてしまった。
「昇降機があるじゃないですか」
「最近故障が多いみたいで、閉じ込められることがよくあるみたいだよ?」
「あっ、そうなんですね……。じゃあ、階段で行きましょう!」
狭い箱の中に閉じ込められるのは嫌だからね!
そういうことで、階段を登ることにしたのだけど……
「リリー、大丈夫?」
「ちょっと大丈夫じゃないです……。足がもう限界ですわ……」
……途中で疲れて足を止めてしまった。
時計塔を登るのは想像以上に大変です!
貴族令嬢に体力なんてほとんどないから、こうなるのは当たり前なのだけど……。
「抱いて行く?」
「そんなことして、レオン様は……大丈夫です……の?」
遅れて息を切らす私。恥ずかしがらないで最初から抱いて貰えば良かったわ……。
「僕は鍛えてるから大丈夫だよ」
「お願いします……」
「失礼するよ」
そう言って私を抱き上げるレオン様。
こんなところでお姫様抱っこだなんて恥ずかしいけど、幸いにも周りに人はいないみたいで安心した。
でも、階段で抱き上げられるの怖い……!
「そんなにしがみつかなくても落としませんよ」
抱き上げられながら、私はレオン様に抱きついてしまった。
レオン様しか見てないけど、やっぱりすごく恥ずかしいわ……。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
糖度高めですみませんm(_ _)m
次回も甘くなると思いますので、紅茶を用意しておく事をお勧めします!
この名前の由来は、仲睦まじい事でも有名な今の国王陛下と王妃様が初めてのデートで寄った場所だからだそうだ。
実はこの時計塔、300年以上も昔に作られて外から魔力の供給無しで動き続けている魔導具でもある。
10年以上前から王都で付き合い始めた男女は最初のデートで幸福の時計塔に行くことが慣例になっている。
だから、貴族も平民も多く訪れている。
レオン様からここに行く話を聞かされた時は誰かに見られるのが怖くて断ったけど、変装することを提案されて了承した。
そういうわけで、今は馬車の中で変装の準備をしている。
「リリー髪長いから纏めるの大変じゃないですか?」
「湯あみの時に自分でやってますから大丈夫ですよ」
そう返ししながら髪を結ぶ私。他所のご令嬢の中には侍従の方に任せていて自分で結べない方もいるから、心配になったのかな?
ちなみに、最近はなんとなく髪を伸ばしているから腰の上辺りまである。そろそろ切るつもりだけどね。
変装用の髪型は、帽子で隠せる位置に纏めて、見た目の長さが肩より少し下になるように流す感じにした。
これなら、纏めている部分は顔を見られないようにするための帽子で隠せるし、ぱっと見なら髪の長さが違うから私と気付く人はいないと思う。
「どうでしょうか?」
試しに帽子をかぶって聞いてみる私。
「うん、大丈夫そうだね」
私の顔を覗き込んで答えるレオン様。
帽子のツバが大きいものを被っている効果で、覗き込まないと見えないみたいだから安心した。
背があまり高く無い私のことだし、顔を見られる心配は無いと思う。帽子も深くかぶるからね!
☆ ☆ ☆
準備を終えてから数分後、時計塔の近くに到着した。
「意外と人少ないんですね」
「今日は平日だからね。休日は混んでると聞くよ」
「そうなんですね。今日にして良かったです」
私が笑顔でそう口にすると、不意にレオン様の手が私の手に当たった。
手、繋ごうって意味なのかな……?
そんな事を聞いたことがあるけど、自信が無い。
私から手を繋いで、もし違ったら変に思われないかな……?
でも、手は繋いでみたいし……
えーいっ!
覚悟を決めた私はレオン様の手に自分の手を絡めた。
私が手を繋ぐと、レオン様は嬉しそうにしていた。
手を繋ぎたいって合図だったみたいで安心した。
「ちょっと恥ずかしいですわ……」
「リリーからしてくれたのに?」
「レオン様が繋ぎたそうだったので。それに、私も繋ぎたかったですし……」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。でも、無理に繋がなくてもいいからね」
レオン様はそう言ってくれたけど、手を繋いだまま塔の前まで来てしまった。
「登ってみる?」
「登れるんですか⁉︎」
レオン様に言われて驚く私。
「登れるよ。知らなかったの?」
「知りませんでした……」
そんな会話をしながら時計塔の反対側の下まで行くと、扉が開いているのが見えた。
そして、そのまま中に入った。
「階段なんですね……」
「登れる? 無理なら抱いてくけど」
「それは恥ずかしいから嫌です!」
人の目もあるから、抱かれるのはお断りしたい。
そう思って言葉を返した私はあるものを見つけてしまった。
「昇降機があるじゃないですか」
「最近故障が多いみたいで、閉じ込められることがよくあるみたいだよ?」
「あっ、そうなんですね……。じゃあ、階段で行きましょう!」
狭い箱の中に閉じ込められるのは嫌だからね!
そういうことで、階段を登ることにしたのだけど……
「リリー、大丈夫?」
「ちょっと大丈夫じゃないです……。足がもう限界ですわ……」
……途中で疲れて足を止めてしまった。
時計塔を登るのは想像以上に大変です!
貴族令嬢に体力なんてほとんどないから、こうなるのは当たり前なのだけど……。
「抱いて行く?」
「そんなことして、レオン様は……大丈夫です……の?」
遅れて息を切らす私。恥ずかしがらないで最初から抱いて貰えば良かったわ……。
「僕は鍛えてるから大丈夫だよ」
「お願いします……」
「失礼するよ」
そう言って私を抱き上げるレオン様。
こんなところでお姫様抱っこだなんて恥ずかしいけど、幸いにも周りに人はいないみたいで安心した。
でも、階段で抱き上げられるの怖い……!
「そんなにしがみつかなくても落としませんよ」
抱き上げられながら、私はレオン様に抱きついてしまった。
レオン様しか見てないけど、やっぱりすごく恥ずかしいわ……。
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