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1. 婚約破棄ですか?
「イルシア・グレイヴ! お前との婚約を破棄する!
まさか妹を虐めているとは思わなかった。そんな女とは結婚できないからな」
「はい? 本気で言ってますの?」
突然そんなことを言われ、私は思わず聞き返してしまった。
ここは私が主催するパーティーの会場。まさかこんな形で顔に泥を塗られるとは思わなかったから。
「聞いていなかったのか!? 1ヶ月もかけて考えたセリフなんだぞ! それを……」
「は……?」
この男ーーアドルフ・ハークス子爵令息はそんな無駄なことをしていたのね。こんな男が婚約者だなんて、気付けなかった私も馬鹿ね……。
予想外すぎる言葉に「は?」なんて口にしてしまった。
「まあいい。お前は今すぐにここから出ることになるんだからな」
「いいえ、出て行くのは貴方ですわ」
だって私、この家の後継ぎですもの。
もちろんそれは口にしない。
「何を言っている?
お前が妹を虐めていたことは分かっているからな! この悪事は今すぐに広めてやる!」
彼の騒音のせいで、場の空気は冷めてしまった。
それなのに、彼はこんなことを語りはじめた。
「この女イルシアは僕の隣にいるシエルを虐めていた! 例え家族でもお粥と栄養剤しか出されないようにしているなんて、犯罪だ!
他にもいじめの証拠はある! これが全てだ!」
そして示される写真の数々。
そこには、俯いて涙を拭うシエルと向かい合う私の写真や、棒を持ってシエルに襲い掛かろうとしている私の写真などが揃っていた。
確かにこれだけ見れば私が虐めているように見える。
でも、これだけが事実ではなかった。
シエルにお粥しか出されないようにしているのは、この間から胃腸の病気を患っているからで、命に関わらないように高価な栄養剤も用意している。
涙を拭うシエルの写真は、私の物を壊してしまった彼女が申し訳なさで泣いているだけ。
棒で襲い掛かろうとしている写真は護身術の練習で、このシーンの直後に私は見事に投げ飛ばされて痛い目に遭った。
全てとは言わないけど、大体はシエルのための行動なのに、この男は……!
これは、弁解が大変そうね……。
「否定しないのか?」
「しませんわ。シエルにお粥しか出されないようにしたのも、この写真も、全て事実ですもの」
「本当にクズ女だな」
そんな言葉と共に拳が飛んできて、バキッという音と共に頬に痛みが走った。
これくらい、避けようと思えば簡単に避けられるけど、この男を地に落とすためにはこの方が都合がいい。そう思って受けることにした。
「痛っ……」
女性に手を上げることは、貴族の中では禁忌で、彼が責められるのは間違いないから。
でも、彼は手を抑えて苦悶の表情を浮かべていた。
まさか妹を虐めているとは思わなかった。そんな女とは結婚できないからな」
「はい? 本気で言ってますの?」
突然そんなことを言われ、私は思わず聞き返してしまった。
ここは私が主催するパーティーの会場。まさかこんな形で顔に泥を塗られるとは思わなかったから。
「聞いていなかったのか!? 1ヶ月もかけて考えたセリフなんだぞ! それを……」
「は……?」
この男ーーアドルフ・ハークス子爵令息はそんな無駄なことをしていたのね。こんな男が婚約者だなんて、気付けなかった私も馬鹿ね……。
予想外すぎる言葉に「は?」なんて口にしてしまった。
「まあいい。お前は今すぐにここから出ることになるんだからな」
「いいえ、出て行くのは貴方ですわ」
だって私、この家の後継ぎですもの。
もちろんそれは口にしない。
「何を言っている?
お前が妹を虐めていたことは分かっているからな! この悪事は今すぐに広めてやる!」
彼の騒音のせいで、場の空気は冷めてしまった。
それなのに、彼はこんなことを語りはじめた。
「この女イルシアは僕の隣にいるシエルを虐めていた! 例え家族でもお粥と栄養剤しか出されないようにしているなんて、犯罪だ!
他にもいじめの証拠はある! これが全てだ!」
そして示される写真の数々。
そこには、俯いて涙を拭うシエルと向かい合う私の写真や、棒を持ってシエルに襲い掛かろうとしている私の写真などが揃っていた。
確かにこれだけ見れば私が虐めているように見える。
でも、これだけが事実ではなかった。
シエルにお粥しか出されないようにしているのは、この間から胃腸の病気を患っているからで、命に関わらないように高価な栄養剤も用意している。
涙を拭うシエルの写真は、私の物を壊してしまった彼女が申し訳なさで泣いているだけ。
棒で襲い掛かろうとしている写真は護身術の練習で、このシーンの直後に私は見事に投げ飛ばされて痛い目に遭った。
全てとは言わないけど、大体はシエルのための行動なのに、この男は……!
これは、弁解が大変そうね……。
「否定しないのか?」
「しませんわ。シエルにお粥しか出されないようにしたのも、この写真も、全て事実ですもの」
「本当にクズ女だな」
そんな言葉と共に拳が飛んできて、バキッという音と共に頬に痛みが走った。
これくらい、避けようと思えば簡単に避けられるけど、この男を地に落とすためにはこの方が都合がいい。そう思って受けることにした。
「痛っ……」
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でも、彼は手を抑えて苦悶の表情を浮かべていた。
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