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第5話
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リクはパーティから追い出され、一人になった。
仲間だったはずの者たちに見捨てられ、切り裂くような冷たい風の中を歩く。
ふらつく足取りで街道を外れ、森の奥へと踏み込んでいく。
森はまるで彼を拒むように静寂に包まれ、木々がざわめく。
それは、嘲笑のようだった。
手元の持ち物は薄い布袋ひとつ。
防寒もろくにできず、肩の痛みがズキズキと響く。
体力はすでに限界に達していた。
吐く息は白く、冷たい空気が容赦なく体温を奪っていく。
(このまま……死んでも、誰も気づかないんだろうな)
森の大樹の根元に身を沈め、膝を抱える。
冷たい空気が骨に刺さり、手の感覚が薄れていく。
木々の影が地面に伸び、月光が指先に差した。
その直後、視界の片隅でかすかな動きが捉えられた。
うずくまる小鳥。
片翼は血で濡れ、わなないている羽が弱々しく震えていた。
リクの心に痛みが突き刺さる。
「……俺と同じだな」
リクはしゃがみ、小鳥に手を伸ばす。
「俺に回復魔法が使えたら……救ってやれるのにな」
指先が羽に触れる直前、青白いコンソールが視界に浮かんだ。
《神域アクセス試行:失敗。権限不足》
「ははっ。なんだこれ……権限不足って、自分のスキルだろ」
彼は小鳥に目をやる。
「やっぱり俺には、なんにもできないんだな」
すると、新たな文字が浮かんだ。
《警告:外部干渉を確認》
《回復プロトコル:実行可能》
「……回復プロトコル……実行可能って」
これが――本当なら。
リクは躊躇いを振り切り、実行した。
コンソールが粒子に変わり、小鳥の羽へと流れ込んでいく。
損傷に触れるたび、光が波紋のように広がり、血の跡が消えていった。
「これって……回復魔法、いや、回復プロトコルか……。しかも……リリィのよりはるかに速い……」
小鳥は力強く羽ばたき、ピピッと鳴いて頭上を一周。
感謝の視線を投げて、森の奥へ消えていった。
リクは手を見つめ、ぽつりと呟く。
「これ、俺がやったのか……?」
静寂。
そして喜びが胸を満たす。
初めて報われた気がした。
自分のスキルが開花した実感が、じわじわと心を満たす。
だが、歓喜は長くは続かなかった。
「痛ててててててててっ」
全身が鉛のように重くなる。
呼吸は浅く速まり、体の内側が何かを使い果たした感覚に襲われた。
「これが代償か……ログに出ていた生命力の吸収か……」
リクは以前、ダンジョンで見た表示を思い出す。
力には代償がある。
ただ、恐怖はなかった。
むしろ安堵があった。
コンソールを睨み、深呼吸する。
「この力があれば……俺は、また――」
過去を振り払うように、布袋から短剣を手に取る。
そして森の奥へ踏み出した。
月明かりの下、足音だけが森にこだまする。
今度こそ、自分の意思で歩くために。
仲間だったはずの者たちに見捨てられ、切り裂くような冷たい風の中を歩く。
ふらつく足取りで街道を外れ、森の奥へと踏み込んでいく。
森はまるで彼を拒むように静寂に包まれ、木々がざわめく。
それは、嘲笑のようだった。
手元の持ち物は薄い布袋ひとつ。
防寒もろくにできず、肩の痛みがズキズキと響く。
体力はすでに限界に達していた。
吐く息は白く、冷たい空気が容赦なく体温を奪っていく。
(このまま……死んでも、誰も気づかないんだろうな)
森の大樹の根元に身を沈め、膝を抱える。
冷たい空気が骨に刺さり、手の感覚が薄れていく。
木々の影が地面に伸び、月光が指先に差した。
その直後、視界の片隅でかすかな動きが捉えられた。
うずくまる小鳥。
片翼は血で濡れ、わなないている羽が弱々しく震えていた。
リクの心に痛みが突き刺さる。
「……俺と同じだな」
リクはしゃがみ、小鳥に手を伸ばす。
「俺に回復魔法が使えたら……救ってやれるのにな」
指先が羽に触れる直前、青白いコンソールが視界に浮かんだ。
《神域アクセス試行:失敗。権限不足》
「ははっ。なんだこれ……権限不足って、自分のスキルだろ」
彼は小鳥に目をやる。
「やっぱり俺には、なんにもできないんだな」
すると、新たな文字が浮かんだ。
《警告:外部干渉を確認》
《回復プロトコル:実行可能》
「……回復プロトコル……実行可能って」
これが――本当なら。
リクは躊躇いを振り切り、実行した。
コンソールが粒子に変わり、小鳥の羽へと流れ込んでいく。
損傷に触れるたび、光が波紋のように広がり、血の跡が消えていった。
「これって……回復魔法、いや、回復プロトコルか……。しかも……リリィのよりはるかに速い……」
小鳥は力強く羽ばたき、ピピッと鳴いて頭上を一周。
感謝の視線を投げて、森の奥へ消えていった。
リクは手を見つめ、ぽつりと呟く。
「これ、俺がやったのか……?」
静寂。
そして喜びが胸を満たす。
初めて報われた気がした。
自分のスキルが開花した実感が、じわじわと心を満たす。
だが、歓喜は長くは続かなかった。
「痛ててててててててっ」
全身が鉛のように重くなる。
呼吸は浅く速まり、体の内側が何かを使い果たした感覚に襲われた。
「これが代償か……ログに出ていた生命力の吸収か……」
リクは以前、ダンジョンで見た表示を思い出す。
力には代償がある。
ただ、恐怖はなかった。
むしろ安堵があった。
コンソールを睨み、深呼吸する。
「この力があれば……俺は、また――」
過去を振り払うように、布袋から短剣を手に取る。
そして森の奥へ踏み出した。
月明かりの下、足音だけが森にこだまする。
今度こそ、自分の意思で歩くために。
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