今度こそ長生きしたいけど、憑依先が悪役令嬢とは聞いてませんっ!?

竹林 花奏(たけばやし かなで)

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40.自主練習③

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「私も、もしそんなことになったらリーリア嬢の味方になります」


レイトンはご飯を食べ終わったのか、眼鏡をかけ直すとこちらを見て言った。


ジェニットも一緒になって頷き、「私も何かあれば貴女の力になるわ!」と力強く言ってくれた。


「僕も皇太子殿下の傍に常におりますから、何か貴女の不利になるようなことを殿下が言ったら、こっそりお伝えさせていただきますね」


ステファンすらも先程の私の話した内容を聞いて、珍しくずっと嫌悪した表情をキープしながら言ってくれた。


「……皆様、本当にありがとう。でも、婚約破棄にならないことが一番よね」


無理して笑うと皆が首を振った。


「信頼関係が築けないような相手になんて、頑張って合わせる必要なんかないと思うわ」


ジェニットの言葉に私以外の全員が頷いた。



















昼食の席でそんなことがあり、皆が私のために力になってくれると言ってくれた日の放課後、シャルルから「申し訳ないのだけれど、2人とも私の部屋の前まで着いて来てくれないかしら?」と言われ、ジェニットと一緒に着いて行った。


「待たせたわね。これを渡したくて」


私たちが受け取ったのは、シャルル主催のお茶会で2週間後にヘーリオス学園で開かれる沢山ある内の一つの庭園を借りて行われるガーデンパーティーの招待状であった。


「ありがとう!」


「ありがとう。これ、もしかしてかなりの規模のお茶会なのではない?」


聞くとシャルルが頷いた。


「人脈を広げるためにも、上級生と来年から進学してくる令嬢たちにも声をかけましたわ。特に来年から進学してくる子たちはこういった催しごとがありませんと、在学中の婚約者を見に来ることもままなりませんから、毎年在学中の令嬢の中からこういった大規模なお茶会を開くように学園側が声をかけているみたいで、今回は私に声がかかったのよ」


誇らしげに笑うシャルルに「凄いわね。頑張って」と声をかけると小さな声で言われた。


「……でも、生徒の令嬢全員に声をかけなければいけないから主催者として誰かを誘わない、なんてこと出来ませんから"あの子"も誘いましたのよ」


名前を出さなくてもジェシカのことだとわかった私は苦笑した。


ジェニットも分かったのか、「しょうがないわね。リーリアはなるべくあの子と関わらないようにしましょうね!」と言ってくれた。


「気遣いありがとう……シャルル。ジェニットにも迷惑かけるわね。お茶会には、必ず顔を出すわ」


「私も!リーリアと一緒に行くわ!」


私とジェニットで出席の返事をすると、赤い瞳が隠れるくらいニッコリと笑ったシャルルが「待ってますわ!」と言ってくれた。


それから私たちは別れ、それぞれの部屋へと帰っていく。


「アン、これをお茶会当日まで大切に保管しておいてくれる?」


「かしこまりました。お嬢様」


部屋に戻ると早速シャルルから受け取った招待状をアンに預け、私は背伸びをした。


「……ちょっと、散歩にでも出掛けて来ようかしら」


「それならば私もお供します」


アンが着いて来ると言ったが、私は首を横に振った。


「たまには一人きりで気分転換したいから、一人で出掛けるわ」


「かしこまりました」


アンは特に何も言うことなく、私を送り出してくれた。


私は外に出るとちょって足を延ばして女子寮から出て、ヘーリオス学園側の庭園内を散歩しようと決めた。


(たまには、のんびりするのも悪くないわね)


いつも最悪の事態を考えて行動していたせいか、ちょっと疲れてしまった。


それに、少しずつではあるが私の身を案じて私のことを助けてくれる"仲間"みたいなものができて、少し安心出来るようにもなった。


ちょっとくらいのんびりしていても、誰にも文句は言われないはずだ。


「いたた……」


庭園を歩いていると、近くから男性の苦しそうな声が聞こえてきた。


(誰かしら?)


そう思って声のする方向へと歩いていくと、プラチナブロンドの髪を一つに結った男がしゃがんで足の皿を摩っていた。


その後ろ姿に見覚えがあり、思わず私は声をかけた。


「……もしかして、ジャック?」


私が近づいて彼の正面に回ると、驚いた表情をしたジャックがこちらを見上げてくる。


「足が痛いのね……」


何も言わない彼の近くでしゃがみ、私は痛がっていた彼の足に治癒魔法を施した。


みるみるうちに彼の表情が和らいでいく。


「大丈夫?動けそう?」


心配して私が聞くとようやくジャックが頷き、言った。


「ベネット、ありがとう。お陰で痛みがなくなったよ……しかし、君には情けないところばかり見られているな」


「気にしないで。私たち幼馴染みじゃない」


笑顔で言うと彼は一瞬悲しそうな顔をした、ような気がした。


「それと、今日はクッキーをありがとう」


昼前に渡したクッキーのお礼を言われ、私は微笑んだ。


「いえいえ……その、味はどうだった?」


恐る恐る聞くと、ジャックが明らかに動揺した顔をする。


(……え?もしかして美味しくなかった?)


ジャックの反応が悪くて、徐々に不安になっていく。


私の表情が明らかに暗くなっていくので、ジャックがハッとして慌てて言った。


「実は……その、目を離した隙にジェシカ嬢に君から貰ったお菓子を捨てられていてな。近くのゴミ箱を探しに回ろうと思っていたんだが、練習中に足を痛めてしまってな……どうしようかと思っていた時にベネットが来てくれたんだ」


「なんだ……そうだったの。ゴミ箱は探しに行かなくてもいいわ。また今度、次はちゃんと私から渡すからテンプソン伯爵令嬢には見つからないように処理して……その、嫌でなければなんだけど」


本当は"捨てられた"という言葉を受けてショックを受けなかった訳では無いが、こればかりはジャックのせいではないため、彼に当たるのはお門違いだ。


私が割り切ったように言うと、ジャックは「勿論だ!今度は油断しない」と答え、私はふふっと笑ってしまう。


「あと……クリスに渡していた君の菓子も捨てられていた」


「でしょうね。でもいいわ。クリストファー様のは、どうせ義理で仕方なく作っただけだったから」


弟とジャックに作っていて、婚約者に作っていないとあらぬ疑いをかけられたら嫌だったから、本当についでに作っただけだったのだ。


「そうか……では、また君が作ってくれるのを待っているよ」


爽やかな笑顔で彼に言われると、嬉しくて心が踊った。


私は頷き、あまり長時間話しているところを誰かに見られたらまずいということで、すぐに解散した。
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