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第二章 されるがままに身を任せながら
王の人柄
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夏の陽射しが、王宮南端の訓練場に降り注ぐ。
鍛え上げられた若い騎士たちが、剣を振るい、盾を構えて汗を流す。
中庭に響く鋼の音と掛け声に、空気は凛と張り詰めていた。
観覧用の石段に、ヴァロニア王ギリアンと王妃シルヴィアの姿が並ぶ。
その背後には、侍女ラシェルが静かに控えていた。
ギリアンの登場に、最前列の騎士たちが一斉に背筋を伸ばす。
「団長!」
「団長が来たぞ!」
声が飛ぶたびに、別の者がすかさず訂正する。
「おい! 今は陛下だ、陛下と呼べ!」
「でも昔の癖が抜けないんだよ……!」
「ばか、黙れ、剣が止まってるぞ!」
「真面目にしろ! 王妃殿下の御前だぞ!」
現場が一時わーわーと騒がしくなり、統率の取れた場が一瞬ほころぶ。
不敬な言葉があった気がしたが、ギリアンは眉一つ動かさず、それらを黙って見ていた。
シルヴィアはその様子に、そっと口元を緩めた。
「……仲が良いんですね。皆さん、陛下のことが好きなんですね。陛下の方も」
ギリアンは肩をすくめるだけだったが、わずかに唇が動いていた。
「……口の利き方がなっていないだけです」
それは、照れ隠しに近い否定だった。
「即位してからは、ヴィンセントが団長を務めてくれています」
騎士たちはすぐに体勢を立て直し、訓練は再開された。
だがその中に、一人だけの黒髪の若者の姿はなかった。
「……ホープ卿は、今日は出ていらっしゃらないんですね」
シルヴィアが呟いた声に、ラシェルも首を傾げた。
「ホープは、何か大事な用事があると言っていたので、しばらく訓練には来ないでしょう」
ふと、シルヴィアは気づいた。ギリアンの語り口が、ほんの少し柔らかい。
こっちが、彼の素の話し方なのかもしれないと、シルヴィアは思った。
「……訓練よりも大事な用事? まさか、兄が何かさせてるんじゃ……」
ラシェルの顔に、かすかな不安が浮かぶ。
唇を引き結び、ほんのわずかに眉をひそめる。
シルヴィアはその反応に気づいたが、何も言わなかった。
そのまま剣戟の音が再び場を支配する中、ギリアンが呟く。
「戻りましょう。あなたの身体に障ってはいけない。執務室へ。少し話があります」
虚弱でもなければ、花のように育てられたわけでもないのに。
そう思いながら、シルヴィアはうなずいた。
「わかりました」
シルヴィアはラシェルに一言だけ振り返る。
「後で、お茶を淹れてくださる?」
「かしこまりました」
軽く頭を下げたラシェルを残して、二人は石畳を歩き出した。
鍛え上げられた若い騎士たちが、剣を振るい、盾を構えて汗を流す。
中庭に響く鋼の音と掛け声に、空気は凛と張り詰めていた。
観覧用の石段に、ヴァロニア王ギリアンと王妃シルヴィアの姿が並ぶ。
その背後には、侍女ラシェルが静かに控えていた。
ギリアンの登場に、最前列の騎士たちが一斉に背筋を伸ばす。
「団長!」
「団長が来たぞ!」
声が飛ぶたびに、別の者がすかさず訂正する。
「おい! 今は陛下だ、陛下と呼べ!」
「でも昔の癖が抜けないんだよ……!」
「ばか、黙れ、剣が止まってるぞ!」
「真面目にしろ! 王妃殿下の御前だぞ!」
現場が一時わーわーと騒がしくなり、統率の取れた場が一瞬ほころぶ。
不敬な言葉があった気がしたが、ギリアンは眉一つ動かさず、それらを黙って見ていた。
シルヴィアはその様子に、そっと口元を緩めた。
「……仲が良いんですね。皆さん、陛下のことが好きなんですね。陛下の方も」
ギリアンは肩をすくめるだけだったが、わずかに唇が動いていた。
「……口の利き方がなっていないだけです」
それは、照れ隠しに近い否定だった。
「即位してからは、ヴィンセントが団長を務めてくれています」
騎士たちはすぐに体勢を立て直し、訓練は再開された。
だがその中に、一人だけの黒髪の若者の姿はなかった。
「……ホープ卿は、今日は出ていらっしゃらないんですね」
シルヴィアが呟いた声に、ラシェルも首を傾げた。
「ホープは、何か大事な用事があると言っていたので、しばらく訓練には来ないでしょう」
ふと、シルヴィアは気づいた。ギリアンの語り口が、ほんの少し柔らかい。
こっちが、彼の素の話し方なのかもしれないと、シルヴィアは思った。
「……訓練よりも大事な用事? まさか、兄が何かさせてるんじゃ……」
ラシェルの顔に、かすかな不安が浮かぶ。
唇を引き結び、ほんのわずかに眉をひそめる。
シルヴィアはその反応に気づいたが、何も言わなかった。
そのまま剣戟の音が再び場を支配する中、ギリアンが呟く。
「戻りましょう。あなたの身体に障ってはいけない。執務室へ。少し話があります」
虚弱でもなければ、花のように育てられたわけでもないのに。
そう思いながら、シルヴィアはうなずいた。
「わかりました」
シルヴィアはラシェルに一言だけ振り返る。
「後で、お茶を淹れてくださる?」
「かしこまりました」
軽く頭を下げたラシェルを残して、二人は石畳を歩き出した。
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