追放王子の流刑地脱出劇!〜背に腹はかえられないので罪人をパーティに入れようと思います!〜

天海二色

文字の大きさ
5 / 35
第一章 気が付いたら流刑地だったんだが?

第五話 ポール一味

しおりを挟む
「同じパーティのな」
「パーティ……。モンスター退治を主な生業とする、冒険者のだろうか?」
「あぁ。神官だけでなく、男爵の放蕩息子だったリーダーも殺っちまった仲間殺しだ。だからポール一味の連中も俺を警戒し、集落に入れない。ま、元々入る気はなかったけどよ」
「……動機を、聞いても?」
「ムカついたからだ」

 そこでグレンはレオナルトから顔をそむけ、揺らめく焚き火の炎を左目に映す。

「カッとなって宿屋で殺っちまったんだよ」

 神官殺しに貴族殺し。どちらも大罪だ。流刑地送りになるのも納得してしまう罪状。
 しかし何だか、違和感を覚える。その正体を探りたいレオナルトは頭をひねるが、うまく考えがまとまらず言葉が出てこない。

「腕の立つ人間を探しているみたいだが、あてが外れたな。他当たりな」
「グレンよ、貴殿は……」
「俺にゃもう構うな」

 故にレオナルトはグレンに再び突き放されて、その日を終えてしまった。

 ◇

「坊ちゃん、レオナルト坊ちゃん」

 薔薇が美しく咲く庭の真ん中、ガーデンテーブルの前で、婆やが手招きをしている。

「デザートの準備ができましたよ。今日のデザートは貴方の好物のモモモゼリーです」
「やった! ありがとう婆や!」

 レオナルトは直ぐに婆やの元へ駆け寄り、ガーデンチェアへいそいそと座る。
 そしてガーデンテーブルに置かれたデザートグラス、その中で柔らかな光沢を放つモモモゼリーをスプーンで掬った。

「坊ちゃんはモモモゼリーが本当に好きですね。モモモの果実は庶民が食べるものだからと、口にしない貴族もおりますが」
「好き嫌いにレッテルなど関係あるものか!」

 鼻腔を満たす甘い香り。口の中に広がるすっきりとした甘み。ぷるぷるとした柔らかい食感。暑い時期に心地よい冷たさ。
 それは他の誰でもない、レオナルト自身が感じ、思ったこと。

「私は、私が好きなものを愛でる!」

 *
 *
 *

 クェーッ! クェーッ!

「う……」

 怪鳥型モンスター、ジズの鳴き声で目が覚めたレオナルトは、節々が痛む身体をゆっくりと起こす。
 目の前には薔薇の庭園ではなく、薄暗く湿った洞窟。出入り口に立て掛けた扉代わりの木の板、その隙間から差し込む日の光が、朝が来たことを伝えてくれている。

(……グレンに固執する必要はない。彼の言う通り、他によさそうな者を探し出し、引き入れれば私の目的は達成される……)

 大きな葉を重ねた敷物の上で、レオナルトは昨晩の出来事をぐっと拳を思い返し、グッと拳を握り締めた。
 グレンにその気がない以上、仲間にするのは諦めよう。
そう何度も心の中で呟いて眠りについたというのに、起きても思い浮かぶのはグレンのことばかり。
 心のしこりを残したまま頭を切り替えられるほど、レオナルトは器用ではなかった。

「北の港街……。宿屋……。殺された神官とパーティリーダー。……グレン」

 グレンが犯したという殺人、流刑地送りを決定付けた大罪。
 ――朧げだが、見聞きした事がある。
 レオナルトは詠唱を唱え、鑑定魔法を発動した。金色の光が四角い額縁を作り、その内側にとある新聞の一面を映し出す。
 それを読み終えてから、彼は立ち上がった。

(もう一度。もう一度だけ、グレンに会いに行く)

 ◇

 クェーッ! クェーッ!

「相変わらず、うるさい鳥だな」

 空の上で極彩色の翼を羽ばたかせ、けたたましく鳴く怪鳥型モンスター、ジズを睨み付けた後、グレンは朝食の準備に取り掛かる。
 と言っても使う食材は昨日と同じ、湖の大蛇ストーシーの肉だ。

(でかい分、過食部も多くて助かるな。狩りをする頻度も下げられるから、身体も休める)

 密林の中でも一際大きな大木のウロを拠点に、一人で活動するグレンは、当然食の確保も身の回りのことも一人でこなさなければならない。役割分担をする。交代で休む。そういった、仲間がいれば可能なことは一つをできない。
 それでもグレンは仲間を作る気はなかった。例えレオナルトという、魔法を便利に使える人間相手でも。
 島外脱出という、希望を見せてくれる者だとしても。

 カッ! カッ!
 火打石と火打金がぶつかり合う、小気味のいい音が乾燥させた歯の上で鳴る。しかし今日は湿度が高いからか、なかなか火が付かない。
 チッ、とグレンは眉間にシワを寄せ舌打ちをする。

(……あの坊ちゃん、火の魔法を使おうとしていたよな)

 湖の大蛇ストーシーに襲われていたレオナルトは、反撃の手段として火の魔法の詠唱を唱えていた。魔法は詠唱を唱える過程を挟む為、戦闘時では隙ができるものの、どんな条件下でも身一つで発動できるのは強みだ。
 特に物が十分に揃っていない今のような状況では、非常に重宝する。

(何を考えているんだ、俺は。あいつとはもう会うこたぁねぇだろうに……)

 ――グレン、よい名前ですね!

 ふと脳裏に浮かんだのは、青い衣を着た神官。

 ――貴方には是非、パーティに入って欲しいのです!

 差し伸べられた、白い手。
 グレンは首を横に振り、思い出さないよう努める。
 がさり
 その時、草木をかき分ける音が背後から聞こえた。

「はぁ~……。なんだ、坊ちゃん。いい加減しつこ」
「オイラがだいじ~に育ててたモモモを盗ったノは、おめぇか?」

 だが振り返った先にいたのは思い浮かべていたレオナルトではなく……
 長身のグレンでさえ見上げる背丈を持つ、一つ目の巨人型モンスター『サイクロプス』であった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...