土魔法を最強と信じて疑わないお爺ちゃん賢者が土魔法最弱の世界へとログインしました ~それでも儂は土魔法が大好きじゃ!~

パンダヒーロー

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一章 村編

お爺ちゃん賢者は領主の家に転生しました。

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 「おおおークレイは本が好きなのかー」

 「なんか最近本に目覚めたみたいだけど……」

 「いいじゃないか本好きで悪いことは無い!むしろ本の狂人になってくれても構わないぞ私はぁ!!」

 一番上は儂の新しい世界の父上じゃ。

 今の会話から分かるように、この父は本オタ、狂人という表現も生温い。
 常に「ガソリンの一生」だの「狂気の生物学」だのファニーな題名の本を片手に持っている。
 儂もちょいと距離を置くぐらいの本好きな何者かじゃ。
 じゃが、本人の望み通りに、儂が本の狂人になることは無い。
 儂は土魔法に狂いに狂った狂人の中の狂人じゃからな!(自覚症状)

 「本当にどうしたのかしら最近……(父親と同じ狂気を感じますわ。早急に対処しないと)」

 儂は最後の小さな囁きを赤ん坊の性能抜群の耳で拾ってやった。

 それにしても狂気とは酷いじゃろう。

 せめて、異常なまでの執着心と言ってくれないかのぉ。


      
         ****




 儂の転生した地は、辺境の地の領主の家じゃった。

 ド田舎、THE辺境の地と強く主張しているかのようなの広大な田畑は、なかなかいい景色とはいえ、少し殺風景でもある。

 しかし。

 領主のわりに貯めこんでいる食料が少ないと思うのじゃ。

 さっき倉庫を勝手に覗いてきたが、ため込んでいる食料がなんと0!

 大方、集めている税も少ないのじゃろう。

 領主の癖に貧民レベルで貧しいのぉ。革命でも起こせばいいのに。

 あ、そっか儂がやれば万事解決か、と物騒な妄想が湧き上がってくる。

 武芸はそこそこ腕が立つので、村長になったらしいが……

 それもまだ完璧とは言えんの。

 この村近辺に限ればそこそこイケるじゃろうが、儂が前世で戦ってきた魔王や四天王や大怪獣とは比較にもならん。

 「クレイ。ご飯だぞ」

 本オタの父の叫びが聞こえる。もう飯の時間か。

 儂は身支度を適当に済ませてから、食卓に向かう。

 そうそう、そういえば儂の今世の名前はクレイ。

 土にぴったりの良い名前だと思わんかね?


 「この季節はナポルの収穫の季節だからねーいっぱい食べられるよ」


 いっぱい食べられる!?

 食卓に着いた母上の言葉で儂は天にも昇る気持ちになる。

 (そのまま死んでしまえと思ったそこの読者!お前ん家のリモコン盗みに行くぞ)

 ナポルというのは異世界人の言っていた「リンゴ」に似たものじゃ。

 柑橘系の爽やかな味わいが儂は好きでのぉ。

 というわけで出された日は毎日たくさん食べている、てな感じじゃ。

 老人の胃には脂っこいものは重い。

 今の季節は、春。

 暖かい陽気とナポルで、儂の気分は最高に満たされている。

 「今年は少ないわね……」

 「今年も、だな。いったい何があったというのだ。今年は豊作とみていたのに」

 儂たち兄弟には聞こえないようにとの配慮なのか、小さく囁くようにして喋る二人。
 おそらく、量が少ないと嘆いておるようじゃな。

 やはり気づいてないのか。愚かなものだ。

 儂は、ただでさえ少ない朝食を、つつくようにして頬張りながら思考する。
 今両親は今年の税の集まりに関して言っているようだが、それは少ないのも当然と言わざるを得ないじゃろう。

 何せこの前税収の帳簿を両親の眼を奪ってみたところ、だいぶ税をちょろまかされておるからの。

 どうやら村人は六割も税を出しておらず、豊作の時ほどそれが顕著になっておる。

 どうやらこの両親に全く計算の才能は無いということが身に沁みてわかったの。

 今度帳簿を直しとくとしよう。

 幸い、儂は異世界人の知識はすべて吸収、発展させておるので計算もばっちりじゃ。

 四則演算まで出来る三百九十二歳(だいぶサバを読んだ)なんじゃぞぉ!

 「では、いただくとしよう」

 父上の音頭で、ささやかな朝食が始まる。

 カチャカチャと虚しい音を立てて、我が家の朝食は進んでいくのじゃった。

 ……土魔法の発展の前にこれはどうにかせねばなるまいの。

 生憎と、儂は土魔法のために仮とはいえ家族を捨てるほど無常ではないということだぞい。





                   ****



 <次の日>


 税収の改革はとりあえず信用を得てからじゃな。

 じゃないと村人が付いてこん。

 儂が村長にでもならん限りはな。

 ……ということで、今日も農作業が待っている。

 儂は面倒な仕事が嫌いなので、早速、土人形ゴーレムを作成し、代わりに仕事させる。

 生まれたときから両親に隠れてこそこそして、魔力を常に放出し続けたのでもう既に魔力に関しては賢者の時代の五十分の一までは取り戻している。

 分かりやすく言えば、前世の世界の魔王の総魔力の二倍ぐらいじゃの。

 なので、今作ったゴーレムも二百体ぐらい作れれば魔王を圧倒できるレベルの戦闘人形じゃな。

 おそらくこの村近辺では相手になるものなぞおらんのではないかな。

 「クレイずるいぞお前。土魔法が少し使えるかと言って調子に乗りやがって」

 儂が日陰で魔力の研究をしながら休んでいると兄がこちらに向かって叫んできた。

 危ない研究が見られるところだった……

 といってもちょっと鳥を惨殺したぐらいの研究だからあまり危険ではない(白目)。

 「少し待て、兄よ。自分にある才能を最大限に生かすのは悪いことなのか?」

 少し話は飛んで、この兄は火属性に適性がある。

 よって風呂沸かしの時とかは兄も自分の力を普通に使っているのじゃが……

 まあそれも火の火力を少し強くするぐらいじゃけどな!

 話もならんわ。

 「違う!しっかりと農作業で筋力を養うんだ。お前は筋力が無いからな。そら、そのゴーレムを俺によこせ」

 「では兄者は筋力があると?」

 「ああもちろん。ステータスを見ただろうが」

 確かに偽のステータス上ではお主が勝っとるかもしれんが……

 儂と筋力で同じ土俵に立つにはざっと魔王の二百数十倍の筋力が必要になるぞ。

 たぶんその筋力を得るためには五回ぐらい死んで来ないと無理じゃな。

 まさに一昨日きやがれ!って言うてやりたい気分じゃ。

 または「もう五回ぐらい死んで来い!」か。


 「いやじゃ。ゴーレムは儂のモノ」

 とりあえず反論してみる。

 「なんだと!?俺に逆らう気か!」

 「そうじゃ」

 予想通りの答えが返ってきた。

 その次は恐らく……

 「おりゃああああ!!!」

 儂を持っていた鍬で殴りつける兄者。

 パシィイィイィン!

 おっと。常人じゃ死んでおるぞこの攻撃。

 まあ、儂も毎日筋力を養っているとはいえ、まだまだ賢者時代に追いついてない部分が多い。

 防御力もそのうちの一つだ。

 それでも素人の鈍器の振り下ろしぐらいで1mmでも傷付くことはないんじゃよ。

 第一踏み込みが甘すぎる。

 そんなんじゃ自称筋力バカの筋力すら働かんではないか。

 「兄者。武器を振り下ろすときの姿勢はこうしてだな……」

 「もういい!……防御の化け物め……」

 土の化け物と言ってください。はい。

 「兄者!」




 「「二人ともやめなさい!!」」

 仲良く両親の叱責が飛ぶ。

 「はーい」

 素直に謝っとこう。
  
 親は怒らせると前世の大天使……までは行かんが、スライムよりは怖い。

 「……」

 「全く。今のは完全にラルクが悪いですよ。せっかくクレイが教えてくれようとしたのに……本で学んだの?あの技術は?」

 「うむ」

 そういうことにしとこう。

 賢者とか言ったら面倒臭いではないか。

 「……」

 兄者は時々私を暗く淀んだ目で見ていることがある……気がする。

 気のせいじゃろうな。

 きっと。




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