土魔法を最強と信じて疑わないお爺ちゃん賢者が土魔法最弱の世界へとログインしました ~それでも儂は土魔法が大好きじゃ!~

パンダヒーロー

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二章 王都編

お爺ちゃん賢者の馬車の時間です。

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  一日が経って、翌日の朝。

 討伐作戦の参加者が、集合場所に続々と集まる様子がよく見える。

 全員が多少は思いつめたような表情だ。


 「これで終わるなら……」

 「そうだな、相討ちでもいい」


 いや、思いつめたというよりは悲壮な感じだろうか。

 大方、勝率は五割すら超えないのだろう。

 ギルドは多数の死者を覚悟でこの作戦を決行したに違いない。


 「これで大丈夫なのかの……」


 どうやら集まったのは三千人程度。

 それに傭兵集団が追加されるらしいが、それも数百人程度だろう。

 どう考えても戦力に見合わない。

 相手は何なのか知らされてはいないが、魔王クラスより一つ位ランクが落ちる程度らしい。

 この数じゃ話にもならないだろう。

 そんなことをを思っていると、いつの間にか馬車での移動が始まっていた。



        ****



 馬車の数上、三人ほどと同席することになった。

 いつの間にか自己紹介が始まっており、思考から意識を現実に取り戻す。

 どうやら後は儂だけだったようで、三人とも期待が詰まった表情でこちらを見ている。


 「遅れてすまん。儂はクレイ、冒険者は始めたばっかりだ」


 少し遅れて反応があった。


 「そっか、始めたばかりなんだ。僕も始めたばかりだから仲良くしてくれると嬉しいな」


 そうやって手を差し出して来たのは、儂と(体格だけ)同じぐらいの少年。

 名前はリンだったような気がする。


 「こちらこそよろしく頼む」


 そういって差し出された手を握る。

 味方は多いに越したことはないからのう。


 「ありがとう!」


 それだけで少年に笑顔が浮かぶ。

 これから決死の作戦に身を投じることになるとは微塵も思ってないのだろう。

 儂もこういう時期があった。


 (必ず命だけは守る)


 儂とて、こんな時期はよく守ってもらったものじゃ。

 儂を庇って惨殺された父。

 儂を逃がすために捕らえられ拷問された母。

 だから、というわけではないが何としてもこの命は守らなくてはならない。


 「リンだけズルい!私もお願い!」


 そういって儂の手をリンから奪い取る少女。

 凄い怪力だな、腕が飛びかけたぞ。

 特技が怪力と言っていたが、あながち間違いないのかもしれない。

 さすがに無視は可哀想なので少し握り返してやると、こちらも嬉しそうに笑った。


 「よろしくね!」

 「ああよろしく」


 口調が若干いつもと違うのは、まあ対外用の口調ということで勘弁してほしい。

 儂も緊張しないわけではない。

 このメンバーと戦いの班を組むことになるからだ。

 最初から仲違いするようでは目も当てられない。


 「……」


 後の一人は黙って外の流れゆく風景を眺めている。

 まあいい、あとから声をかければいい話だ。

 たいして大きな波乱も起こらず、馬車での時間が流れていった。




               ****



 馬車から降りると、そこは鬱蒼と木の生い茂った森の奥だった。

 幸い道は作られていたのか、前方は開けている。

 やはりモンスターといえば森なのだろうか。

 辺りは静まり返っている。


 どこからともなく指示が飛び、馬車で同席していたメンバーとパーティを組むことになった。


 (この四人はちとキツいな……さっきから一言も発さないこの中年男がどれだけ戦えるかだが……)


 少年少女の二人に戦力は期待しない方が良い。

 この中年がいくら戦えるかで儂の機動力ががらりと変わる。

 儂は本来、単体での戦闘能力を求めて鍛えてきたものじゃ。

 守るには少々向いてはおらぬ。


 「では、行進を始める!全員、前へ!」


 指揮官らしき者が威勢よく声を挙げる。

 すべてが順調に事が運んでいる。



 ……数秒後に直矢がその男を貫くまで。 




           ****



 良くも悪くも、戦場は混沌としていた。

 このような事態に一応は備えていたのか、すぐに指揮系統が入れ替わるが混乱は収まらない。

 我先にと逃げ出そうとする若い冒険者が馬車に殺到する。


 「やめろ!逃げれば死ぬぞ!」


 混乱に紛れて幼児二人が逃げ出そうとしていたので呼び止める。


 「だって!クレイくんも危ないよ!?」

 「……わっ危ないッ!?」


 急に魔力が抜けていく。

 何故かと一瞬訝しむが、機動武装ソルドアームが展開されたのだと気づく。

 今のは【十字架の絶護ディフェンド・ロザリオ】だ。

 少量の魔力消費で、殆どの攻撃を防いでくれる。

 ザァァァ……と砂が崩れ去った後には矢が二本転がっていた。


 「えっ……」

 「すご……」


 絶句する二人にもこの絶護を展開してやるようにAIに指示する。

 この辺の雑魚相手ならこの絶護は崩れやしないじゃろう。


 「よいか!お前らは一切攻撃を受けない!だから大人しくしておれ!」


 それだけを言い残して飛び去る。

 翼のメンテナンスはしっかりしていたので、すぐにでも最高速が出せた。


 (後はどれを潰すかだが……)


 今、集団を襲っているのは人ではなく魔物だ。

 しかしどうやらそれらが知能を持つ魔族であることが分かった。

 じゃないと矢など使えるわけが無い。


 (とりあえず討伐対象の魔族を先に倒すかの……)


 上空から見ると夥しい数の魔物が周囲を取り巻いているのが分かる。

 これを一掃するのは難しいだろう。


 「一人で大丈夫なのか?」

 「……ッ!?」


 思考、意識の外側から声が届く。

 反射的に殺意が漏れ出すが、見覚えのある顔が横にあるのを知って殺意を収める。


 「……何故今更だ?」

 「何となくだよ」


 馬車に乗っていた無口の中年が、宙に浮いて儂を見つめていた。









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