25 / 29
二章 王都編
お爺ちゃん賢者の馬車の時間です。
しおりを挟む
一日が経って、翌日の朝。
討伐作戦の参加者が、集合場所に続々と集まる様子がよく見える。
全員が多少は思いつめたような表情だ。
「これで終わるなら……」
「そうだな、相討ちでもいい」
いや、思いつめたというよりは悲壮な感じだろうか。
大方、勝率は五割すら超えないのだろう。
ギルドは多数の死者を覚悟でこの作戦を決行したに違いない。
「これで大丈夫なのかの……」
どうやら集まったのは三千人程度。
それに傭兵集団が追加されるらしいが、それも数百人程度だろう。
どう考えても戦力に見合わない。
相手は何なのか知らされてはいないが、魔王クラスより一つ位ランクが落ちる程度らしい。
この数じゃ話にもならないだろう。
そんなことをを思っていると、いつの間にか馬車での移動が始まっていた。
****
馬車の数上、三人ほどと同席することになった。
いつの間にか自己紹介が始まっており、思考から意識を現実に取り戻す。
どうやら後は儂だけだったようで、三人とも期待が詰まった表情でこちらを見ている。
「遅れてすまん。儂はクレイ、冒険者は始めたばっかりだ」
少し遅れて反応があった。
「そっか、始めたばかりなんだ。僕も始めたばかりだから仲良くしてくれると嬉しいな」
そうやって手を差し出して来たのは、儂と(体格だけ)同じぐらいの少年。
名前はリンだったような気がする。
「こちらこそよろしく頼む」
そういって差し出された手を握る。
味方は多いに越したことはないからのう。
「ありがとう!」
それだけで少年に笑顔が浮かぶ。
これから決死の作戦に身を投じることになるとは微塵も思ってないのだろう。
儂もこういう時期があった。
(必ず命だけは守る)
儂とて、こんな時期はよく守ってもらったものじゃ。
儂を庇って惨殺された父。
儂を逃がすために捕らえられ拷問された母。
だから、というわけではないが何としてもこの命は守らなくてはならない。
「リンだけズルい!私もお願い!」
そういって儂の手をリンから奪い取る少女。
凄い怪力だな、腕が飛びかけたぞ。
特技が怪力と言っていたが、あながち間違いないのかもしれない。
さすがに無視は可哀想なので少し握り返してやると、こちらも嬉しそうに笑った。
「よろしくね!」
「ああよろしく」
口調が若干いつもと違うのは、まあ対外用の口調ということで勘弁してほしい。
儂も緊張しないわけではない。
このメンバーと戦いの班を組むことになるからだ。
最初から仲違いするようでは目も当てられない。
「……」
後の一人は黙って外の流れゆく風景を眺めている。
まあいい、あとから声をかければいい話だ。
たいして大きな波乱も起こらず、馬車での時間が流れていった。
****
馬車から降りると、そこは鬱蒼と木の生い茂った森の奥だった。
幸い道は作られていたのか、前方は開けている。
やはりモンスターといえば森なのだろうか。
辺りは静まり返っている。
どこからともなく指示が飛び、馬車で同席していたメンバーとパーティを組むことになった。
(この四人はちとキツいな……さっきから一言も発さないこの中年男がどれだけ戦えるかだが……)
少年少女の二人に戦力は期待しない方が良い。
この中年がいくら戦えるかで儂の機動力ががらりと変わる。
儂は本来、単体での戦闘能力を求めて鍛えてきたものじゃ。
守るには少々向いてはおらぬ。
「では、行進を始める!全員、前へ!」
指揮官らしき者が威勢よく声を挙げる。
すべてが順調に事が運んでいる。
……数秒後に直矢がその男を貫くまで。
****
良くも悪くも、戦場は混沌としていた。
このような事態に一応は備えていたのか、すぐに指揮系統が入れ替わるが混乱は収まらない。
我先にと逃げ出そうとする若い冒険者が馬車に殺到する。
「やめろ!逃げれば死ぬぞ!」
混乱に紛れて幼児二人が逃げ出そうとしていたので呼び止める。
「だって!クレイくんも危ないよ!?」
「……わっ危ないッ!?」
急に魔力が抜けていく。
何故かと一瞬訝しむが、機動武装が展開されたのだと気づく。
今のは【十字架の絶護】だ。
少量の魔力消費で、殆どの攻撃を防いでくれる。
ザァァァ……と砂が崩れ去った後には矢が二本転がっていた。
「えっ……」
「すご……」
絶句する二人にもこの絶護を展開してやるようにAIに指示する。
この辺の雑魚相手ならこの絶護は崩れやしないじゃろう。
「よいか!お前らは一切攻撃を受けない!だから大人しくしておれ!」
それだけを言い残して飛び去る。
翼のメンテナンスはしっかりしていたので、すぐにでも最高速が出せた。
(後はどれを潰すかだが……)
今、集団を襲っているのは人ではなく魔物だ。
しかしどうやらそれらが知能を持つ魔族であることが分かった。
じゃないと矢など使えるわけが無い。
(とりあえず討伐対象の魔族を先に倒すかの……)
上空から見ると夥しい数の魔物が周囲を取り巻いているのが分かる。
これを一掃するのは難しいだろう。
「一人で大丈夫なのか?」
「……ッ!?」
思考、意識の外側から声が届く。
反射的に殺意が漏れ出すが、見覚えのある顔が横にあるのを知って殺意を収める。
「……何故今更だ?」
「何となくだよ」
馬車に乗っていた無口の中年が、宙に浮いて儂を見つめていた。
討伐作戦の参加者が、集合場所に続々と集まる様子がよく見える。
全員が多少は思いつめたような表情だ。
「これで終わるなら……」
「そうだな、相討ちでもいい」
いや、思いつめたというよりは悲壮な感じだろうか。
大方、勝率は五割すら超えないのだろう。
ギルドは多数の死者を覚悟でこの作戦を決行したに違いない。
「これで大丈夫なのかの……」
どうやら集まったのは三千人程度。
それに傭兵集団が追加されるらしいが、それも数百人程度だろう。
どう考えても戦力に見合わない。
相手は何なのか知らされてはいないが、魔王クラスより一つ位ランクが落ちる程度らしい。
この数じゃ話にもならないだろう。
そんなことをを思っていると、いつの間にか馬車での移動が始まっていた。
****
馬車の数上、三人ほどと同席することになった。
いつの間にか自己紹介が始まっており、思考から意識を現実に取り戻す。
どうやら後は儂だけだったようで、三人とも期待が詰まった表情でこちらを見ている。
「遅れてすまん。儂はクレイ、冒険者は始めたばっかりだ」
少し遅れて反応があった。
「そっか、始めたばかりなんだ。僕も始めたばかりだから仲良くしてくれると嬉しいな」
そうやって手を差し出して来たのは、儂と(体格だけ)同じぐらいの少年。
名前はリンだったような気がする。
「こちらこそよろしく頼む」
そういって差し出された手を握る。
味方は多いに越したことはないからのう。
「ありがとう!」
それだけで少年に笑顔が浮かぶ。
これから決死の作戦に身を投じることになるとは微塵も思ってないのだろう。
儂もこういう時期があった。
(必ず命だけは守る)
儂とて、こんな時期はよく守ってもらったものじゃ。
儂を庇って惨殺された父。
儂を逃がすために捕らえられ拷問された母。
だから、というわけではないが何としてもこの命は守らなくてはならない。
「リンだけズルい!私もお願い!」
そういって儂の手をリンから奪い取る少女。
凄い怪力だな、腕が飛びかけたぞ。
特技が怪力と言っていたが、あながち間違いないのかもしれない。
さすがに無視は可哀想なので少し握り返してやると、こちらも嬉しそうに笑った。
「よろしくね!」
「ああよろしく」
口調が若干いつもと違うのは、まあ対外用の口調ということで勘弁してほしい。
儂も緊張しないわけではない。
このメンバーと戦いの班を組むことになるからだ。
最初から仲違いするようでは目も当てられない。
「……」
後の一人は黙って外の流れゆく風景を眺めている。
まあいい、あとから声をかければいい話だ。
たいして大きな波乱も起こらず、馬車での時間が流れていった。
****
馬車から降りると、そこは鬱蒼と木の生い茂った森の奥だった。
幸い道は作られていたのか、前方は開けている。
やはりモンスターといえば森なのだろうか。
辺りは静まり返っている。
どこからともなく指示が飛び、馬車で同席していたメンバーとパーティを組むことになった。
(この四人はちとキツいな……さっきから一言も発さないこの中年男がどれだけ戦えるかだが……)
少年少女の二人に戦力は期待しない方が良い。
この中年がいくら戦えるかで儂の機動力ががらりと変わる。
儂は本来、単体での戦闘能力を求めて鍛えてきたものじゃ。
守るには少々向いてはおらぬ。
「では、行進を始める!全員、前へ!」
指揮官らしき者が威勢よく声を挙げる。
すべてが順調に事が運んでいる。
……数秒後に直矢がその男を貫くまで。
****
良くも悪くも、戦場は混沌としていた。
このような事態に一応は備えていたのか、すぐに指揮系統が入れ替わるが混乱は収まらない。
我先にと逃げ出そうとする若い冒険者が馬車に殺到する。
「やめろ!逃げれば死ぬぞ!」
混乱に紛れて幼児二人が逃げ出そうとしていたので呼び止める。
「だって!クレイくんも危ないよ!?」
「……わっ危ないッ!?」
急に魔力が抜けていく。
何故かと一瞬訝しむが、機動武装が展開されたのだと気づく。
今のは【十字架の絶護】だ。
少量の魔力消費で、殆どの攻撃を防いでくれる。
ザァァァ……と砂が崩れ去った後には矢が二本転がっていた。
「えっ……」
「すご……」
絶句する二人にもこの絶護を展開してやるようにAIに指示する。
この辺の雑魚相手ならこの絶護は崩れやしないじゃろう。
「よいか!お前らは一切攻撃を受けない!だから大人しくしておれ!」
それだけを言い残して飛び去る。
翼のメンテナンスはしっかりしていたので、すぐにでも最高速が出せた。
(後はどれを潰すかだが……)
今、集団を襲っているのは人ではなく魔物だ。
しかしどうやらそれらが知能を持つ魔族であることが分かった。
じゃないと矢など使えるわけが無い。
(とりあえず討伐対象の魔族を先に倒すかの……)
上空から見ると夥しい数の魔物が周囲を取り巻いているのが分かる。
これを一掃するのは難しいだろう。
「一人で大丈夫なのか?」
「……ッ!?」
思考、意識の外側から声が届く。
反射的に殺意が漏れ出すが、見覚えのある顔が横にあるのを知って殺意を収める。
「……何故今更だ?」
「何となくだよ」
馬車に乗っていた無口の中年が、宙に浮いて儂を見つめていた。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる