近代異世界の迷い人

くろね

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〜アクセスポイント〜

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アクセスポイントに着いたのはいいが、スタッフがおらず、駅の券売機のような端末がいくつか設置されていた。
近寄ると端末の画面が反応する。

「さて、メニュー…。お、あった。マップマップ!」

いくつかの項目の中でマップが表示される。
おお、これなら場所もわかるし、印刷もできそう。
念のため5枚ほど印刷。
おそらく周辺の地図だろう。

「ひとまず、これで安心だ。ほかには何かないのか?」

端末を操作すると「アップデート」という項目が出てきた。

「アップデート?何かの機械の更新か?」

試しに押してみるが、エラー表示で『近くに更新可能な端末がありません』と表示される。
さっきの人が言っていた『旧型』という単語の意味がまだ理解はできないが、
おそらく、このアップデートするための機械のことだろうか。

「地図も手に入ったし、この周辺を探索するか…」

というか、元の世界に戻れるのだろうか。
そんな不安が頭をよぎる中、とりあえず帰るための足掛かりとして、
何らかの方法を探す必要がある。
日本では警察組織があったが、ここはどうなのだろうか。
マップを確かめる。

「…ない?いや、わからねぇ…」

まず存在したとして機関名がわからない。

「くっそ、出鼻挫かれたわ…。そういや、警察も駅も通じないんだから、当然か。テンパって頭回ってねぇな」

もっと情報が欲しい。そう思って端末に触れようとした所だった。

「何か、お困りですか?」

後ろから声を掛けられた。
スタッフだろうか、そう思いながら振り返る。

「そうなんで…すぅ!?」

振り返ると、長い黒髪を一つに束ねた、顔立ちの整った女性が立っていたのだが

「っ!?驚かせてしまって申し訳ありません!困ってるように見えたので…」

非常に変な声を出してしまったのだが、それには理由がある。
頭に猫耳がついていたのだ。飾りかと思ったのだが…ピクピク動いてるし。
しかも、頬からひげが生えている。これって、よく小説で出てくるアレなのでは?

「…もしかして、亜人の方ですか?」

ふと、思ったことを口にしてみた。

「はぁ、そうですが…、もしかして嫌亜派の方ですか?もしそうならば、失礼しました」

ケンアハ?イントネーション的には亜人反対派の集団を指すのか…?
勘違いされても困るので撤回せねば。

「あぁ、いえ!そういうことではなく、ちょっと驚いてしまったのと、
あまり私の住んでいた場所ではあまりお会いしたことがなかったので、少し驚いてしまって」

「そう、ですか。よかったです。嫌亜派の方は結構過激な人が多いので…関わり合いを避けたいのですよ」

ストレートな言い回しだなぁ。
おっと、本題から逸れる所だった。

「なるほど、ちょっとお聞きしたいのですが、この付近でなんというか…。
警備とか、そういうのを生業としている機関はありますか?」

この言い回しなら伝わるだろう…!

「警備?あぁ、そういえばあなたはもしかして旧型の人ですか。
それならまず、そこのアクセスポイントの所での新型の発行をしてからじゃないとですね」

また出たよ、『旧型』って何なんだろ。
聞いてみてもいいが、不審に思われてもなぁ…。
流れに任せてみるか。

「ええ、発行に必要なものはありますか?」

「いえ、特にありませんよ、機械に触るだけですよ」

よかった。何かここを出るためのキーアイテムのようなものになるのだろうか。
とりあえず、貰えるなら貰ったほうがいいだろう。

二人で端末まで移動し、
猫型亜人の女性は手慣れた様子で端末を操作する。

「じゃあ、端末のここに手を触れてもらえますか?そうすれば貴方用のインフォメーターが出てきますよ!」

インフォメーター、英語直訳で情報提供者か。安直だが、わかりやすくて助かるな。
これは期待できる。

「分かりました。では、ここに手を当てればいいんですね」

言われた通り、端末に触れる。
一瞬スキャンされたような光が通った後、ガコッと小さな音で端末の下部から箱がでる。

「あ、作られましたね。これがインフォメーターです。早速付けてみましょうか」
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