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第23話 婚約式開幕
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オリバーとギリアムが対面していた頃、オズワルドとエストリアはそれぞれ正装に着替えていた。
婚約式の会場である王城内の大ホールの近くには、王族や上位貴族専用の控室がある。
その一室でオズワルドは鏡の前に立っていた。18歳となったオズワルドは既に大人の仲間入りをしている。
つまりこれから式典等で着用する正装は、大人用の衣装に変わっている。生地は最高級のシルクが使われており、今までよりもシックな作りとなっている。
成人前の正装は白基調であったが、成人後の正装は落ち着いた雰囲気を感じさせる黒基調に変わった。
所々に金や赤の装飾がされており、派手過ぎない華がある。未成年から大人の男性に変化していっている彼に、その衣装はとても良く似合っていた。
今回は成人のお披露目でもある為に、いつもと違って金髪をアップにしている。
髪型の変化も合わさって、いつもより大人びて見えた。
「失礼しますオズワルド様。エストリア様がお越しになられました」
「入って貰って構わない」
「はっ!」
オズワルドの護衛騎士であるトールがエストリアの来訪を伝えた。今日この日から、2人は国が認めた婚約者となる。
その大切な舞台となる婚約式では、お互いに着飾った状態で参加する。
自分の今の姿を見てエストリアはどう思うだろうとか、エストリアが着飾った姿はどれ程美しいのだろうかとか。
そんな緊張感がオズワルドにはあった。少なくとも今の自分は、エストリアの隣に並んでも見劣りはしない筈だと、自分に言い聞かせながらエストリアの入室を待つ。
王族用の豪華な装飾が施された扉から、ゆっくりとエストリアが室内に入って来る。
その時オズワルドは、女神に出会ったと心から思った。
「わ!? オズワルド、凄くお似合いですよ!」
「………………」
「あの、オズワルド?」
「美しい……」
レアル王国の王都では、ビスチェドレスと呼ばれる両肩を出したトップに、スカートのボリュームを立体的に広げたタイプのドレスが人気である。
小柄な女性が着ると、人形の様で可愛らしいと言われている。それに対してエストリアは背が高く、スタイルが非常に良い。
そんな彼女の為に義姉のヴェロニカが仕立てさせたドレスは、他国で人気のデザインだ。イブニングドレス呼ばれるタイプで、肩は露出せずに首周りと胸元だけが露出している。
スカートは広げておらず全体的にタイトな印象を受ける。白基調に青い染色がなされており、ボディラインが整っているエストリアの魅力が強調されている。
そんな彼女に見惚れて固まっていたオズワルドは、思わずエストリアの前で跪き、彼女の手の甲に口付けをした。
「これまで見て来た中で、貴女より美しい存在を俺は知らない」
「ちょっ!? オズワルド!?」
「貴女と婚約出来て、本当に幸せだ」
「あっと、えっと、それは、私もですから」
いつも以上に華やかな外見のオズワルドに、こうもストレートに褒められてはエストリアもテンパってしまう。
ゆっくりと立ち上がったオズワルドは、いつかの倉庫でやった時の様にふわりとエストリアを抱き寄せた。
エストリアの美しさに当てられたオズワルドは、婚約者の着飾った姿に夢中である。
本当にここでキスをしてしまうのではないかと思う程に、オズワルドは熱い視線をエストリアに注いでいる。
そんなオズワルドの熱意に、エストリアも平常心を保てない。真っ赤な顔でオズワルドを見つめ返しながらも、彼の腕に体を委ねていた。
とても良い雰囲気ではあるのだが、残念ながら今はそういう時間ではない。
「ぅゔんっ! オズワルド様、そろそろお時間ですので」
「はっ!? す、すまないエストリア。貴女があまりにも美しかったのでつい」
「い、いえ、その、オズワルドも素敵ですよ」
このままお互いを褒め合っていても仕方がないので、オズワルドは曲げた肘をエストリアの方に差し出す。
彼の肘に手を乗せて、エストリアはエスコートされる体勢を取った。お互いに一度視線を交わすと、頷き合って控室を出て行く。
トールを始めとした護衛の騎士達に囲まれながら、オズワルドとエストリアは王族専用の入り口へと向かう。
今はまだ下級の貴族から順番に、今回婚約が決まった2人が入場して行っている。
最後を飾るのが最も地位が高いオズワルドとエストリアだ。オズワルドはともかく、成長したエストリアが王都で人前に出るのはこれが初めてになる。
現在のエストリアを知る者が殆ど居ない会場内では、どんな化け物の様な令嬢なのかと小声で噂をしていた。
第3王子の婚約者という地位を奪われた事で、恨み言を言っている令嬢達も一定数居る。
陰で嗤ってやろうと、性格の悪い事を考えている者も居た。そんな状況下で、遂に会場内でオズワルドとエストリアの名が呼ばれた。
「行くぞ、エストリア」
「はい!」
王族専用の入り口から2人が姿を現した時、会場の空気は一変した。成人したオズワルドの華やかさ、それももちろんあるだろう。
大人っぽくなった彼を見て、熱い眼差しを向ける令嬢達は沢山居た。しかしそれを大きく上回る視線を集めたのは、エストリアのその美貌である。
かつて社交界の華であった母ソフィアに良く似た顔立ちに、オーレルム家の特徴である綺麗な紅髪。
そして何よりも、その均整の取れたスラリとした曲線美が輝きを放っていた。
それまで話されていた様な、下世話な噂を囁ける者などもうどこにも居なかった。
婚約式の会場である王城内の大ホールの近くには、王族や上位貴族専用の控室がある。
その一室でオズワルドは鏡の前に立っていた。18歳となったオズワルドは既に大人の仲間入りをしている。
つまりこれから式典等で着用する正装は、大人用の衣装に変わっている。生地は最高級のシルクが使われており、今までよりもシックな作りとなっている。
成人前の正装は白基調であったが、成人後の正装は落ち着いた雰囲気を感じさせる黒基調に変わった。
所々に金や赤の装飾がされており、派手過ぎない華がある。未成年から大人の男性に変化していっている彼に、その衣装はとても良く似合っていた。
今回は成人のお披露目でもある為に、いつもと違って金髪をアップにしている。
髪型の変化も合わさって、いつもより大人びて見えた。
「失礼しますオズワルド様。エストリア様がお越しになられました」
「入って貰って構わない」
「はっ!」
オズワルドの護衛騎士であるトールがエストリアの来訪を伝えた。今日この日から、2人は国が認めた婚約者となる。
その大切な舞台となる婚約式では、お互いに着飾った状態で参加する。
自分の今の姿を見てエストリアはどう思うだろうとか、エストリアが着飾った姿はどれ程美しいのだろうかとか。
そんな緊張感がオズワルドにはあった。少なくとも今の自分は、エストリアの隣に並んでも見劣りはしない筈だと、自分に言い聞かせながらエストリアの入室を待つ。
王族用の豪華な装飾が施された扉から、ゆっくりとエストリアが室内に入って来る。
その時オズワルドは、女神に出会ったと心から思った。
「わ!? オズワルド、凄くお似合いですよ!」
「………………」
「あの、オズワルド?」
「美しい……」
レアル王国の王都では、ビスチェドレスと呼ばれる両肩を出したトップに、スカートのボリュームを立体的に広げたタイプのドレスが人気である。
小柄な女性が着ると、人形の様で可愛らしいと言われている。それに対してエストリアは背が高く、スタイルが非常に良い。
そんな彼女の為に義姉のヴェロニカが仕立てさせたドレスは、他国で人気のデザインだ。イブニングドレス呼ばれるタイプで、肩は露出せずに首周りと胸元だけが露出している。
スカートは広げておらず全体的にタイトな印象を受ける。白基調に青い染色がなされており、ボディラインが整っているエストリアの魅力が強調されている。
そんな彼女に見惚れて固まっていたオズワルドは、思わずエストリアの前で跪き、彼女の手の甲に口付けをした。
「これまで見て来た中で、貴女より美しい存在を俺は知らない」
「ちょっ!? オズワルド!?」
「貴女と婚約出来て、本当に幸せだ」
「あっと、えっと、それは、私もですから」
いつも以上に華やかな外見のオズワルドに、こうもストレートに褒められてはエストリアもテンパってしまう。
ゆっくりと立ち上がったオズワルドは、いつかの倉庫でやった時の様にふわりとエストリアを抱き寄せた。
エストリアの美しさに当てられたオズワルドは、婚約者の着飾った姿に夢中である。
本当にここでキスをしてしまうのではないかと思う程に、オズワルドは熱い視線をエストリアに注いでいる。
そんなオズワルドの熱意に、エストリアも平常心を保てない。真っ赤な顔でオズワルドを見つめ返しながらも、彼の腕に体を委ねていた。
とても良い雰囲気ではあるのだが、残念ながら今はそういう時間ではない。
「ぅゔんっ! オズワルド様、そろそろお時間ですので」
「はっ!? す、すまないエストリア。貴女があまりにも美しかったのでつい」
「い、いえ、その、オズワルドも素敵ですよ」
このままお互いを褒め合っていても仕方がないので、オズワルドは曲げた肘をエストリアの方に差し出す。
彼の肘に手を乗せて、エストリアはエスコートされる体勢を取った。お互いに一度視線を交わすと、頷き合って控室を出て行く。
トールを始めとした護衛の騎士達に囲まれながら、オズワルドとエストリアは王族専用の入り口へと向かう。
今はまだ下級の貴族から順番に、今回婚約が決まった2人が入場して行っている。
最後を飾るのが最も地位が高いオズワルドとエストリアだ。オズワルドはともかく、成長したエストリアが王都で人前に出るのはこれが初めてになる。
現在のエストリアを知る者が殆ど居ない会場内では、どんな化け物の様な令嬢なのかと小声で噂をしていた。
第3王子の婚約者という地位を奪われた事で、恨み言を言っている令嬢達も一定数居る。
陰で嗤ってやろうと、性格の悪い事を考えている者も居た。そんな状況下で、遂に会場内でオズワルドとエストリアの名が呼ばれた。
「行くぞ、エストリア」
「はい!」
王族専用の入り口から2人が姿を現した時、会場の空気は一変した。成人したオズワルドの華やかさ、それももちろんあるだろう。
大人っぽくなった彼を見て、熱い眼差しを向ける令嬢達は沢山居た。しかしそれを大きく上回る視線を集めたのは、エストリアのその美貌である。
かつて社交界の華であった母ソフィアに良く似た顔立ちに、オーレルム家の特徴である綺麗な紅髪。
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