死神の神子と魔弾の機工士

ナカジマ

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第3章

第112話 アイナと親友

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 アメリカへと帰国したアイナは、米海軍基地と魔導協会アメリカ支部に立ち寄った。
 魔導協会での健康診断を終えた後、明日の出立前に友人である魔術師と待ち合わせをしていた。
 日が落ちて月が昇った夜のニューヨーク。眠らない街のコーヒーチェーン店でアイナを迎えたのは、若くて背の高い白人の女性。
 彫りの深い西洋人らしい外見と、腰まである紅い髪が特徴的な美少女である。彼女はアイナと同い年で、Aランク魔術師のニーナ・テイラー。
 ニーナの父は亡くなったアイナの実父、エリック・ミラーの同僚だった。その繋がりで昔から仲が良かった幼馴染である。

「久しぶりだねニーナ、元気だった?」

「それはこっちの台詞よ。日本はどう?」

「悪くないよ。お母さんが生まれた国を観るのは楽しい」

 ニーナはアイナと長い付き合いであり、アイナの両親が亡くなり通う学校が変わってしまっても関係が続いていた。
 それだけ親同士の仲が良く、2人が生まれる前から家族ぐるみで交流していた。
 ニーナの名前がアイナと少し似ているのもそれが理由で、ニーナの父がアイナの母である三島玲子みしまれいこに名付けを依頼したからだ。
 結果として姉妹の様に成長して来た2人だ。親友と言うよりも家族に近い関係だった。2人して魔術師になったのも、ほぼ同じ理由からだ。
 アイナは両親を、ニーナは母親を魔導犯罪によって失っている。アイナと違ってニーナは、父親と同じニューヨーク市警に入ろうとしていた。

「日本は葉っぱでラリッた馬鹿が居ないんでしょう? 羨ましい話ね」

「それは本当にそう。まあ日本も結構大変だったけどね」

「幾つか事件を解決して来たのでしょう? 流石ねアイナ」

 日本は魔導犯罪が多い国だが、アメリカもそう変わらない。魔術が発展している国ほど、悪用もされるからだ。
 中国やロシア、ヨーロッパ等の先進国はどこも似ている。ただ龍脈が複数通っている日本は、アメリカと中国よりも魔導犯罪が多い傾向にあった。
 国土を思えば大国2つと日本が、ほぼ同等であるのが恐ろしい話だ。それだけ発展と犯罪が切り離せないという現実を表していた。
 ともあれ今は親友であり家族とも言える2人の再会だ。血生臭い話ばかりしていても仕方ない。話題を変える為に、ニーナがパートナーの話を始める。

「例の男の子はどうなのよ?」

清志せいじの事? 強くて頼りになる人だったよ」

「そうじゃなくて、恋の話よ」

 やはりパートナーと恋愛は密接であり、ニーナの様に考える人も多い。実際ニーナのパートナーは恋人でもある。
 ただアイナは恋愛対象として、清志を見ていない。と言うよりも、自分を恋愛対象に見て貰えると思っていなかった。
 黄泉津大神よもつおおかみが気付いた様に、アイナは少々特殊な理由で生まれたSランクだ。自らに掛けた呪いは、魂にまで影響を及ぼしている。
 普通ではない魂、普通ではない魔力、そして普通ではない肉体。自分が普通の女性の様に、子孫を残せるか分からない。
 女性としてデメリットを抱えていると自覚しているアイナは、どうしてもそんな気持ちにはなれない。

「ニーナ、分かっているでしょ?」

「駄目よアイナ、諦める事じゃないわ。子供が全てではないわよ」

「だけど……普通の男性なら望むでしょうし」

 特に清志は名家の生き残りで、血を繋ぐ為に子孫は絶対的に必要だ。アイナだってそれは分かっているし、だからこそ黄泉津大神は本気で対峙した。
 今でこそ人格は認めているものの、自らの神子と番わせる気は無い。優秀な魔術師同士で子を成す場合、魔力の相性は非常に重要である。
 もし相性が悪い相手だったら、子供への悪影響が出てしまう。母体側のリスクも通常より高くなるので、魔術師の結婚相手は慎重に選ぶ必要がある。
 パートナーがイコール結婚相手とはならない理由はそこにあった。コンビとして相性が良くても、子を持つ相手としてマッチするかは別問題だからだ。

「もう少し気楽に考えなさい? 恋愛ぐらい誰もが自由にして良いのよ」

「それは、分かっているけど……」

「別に今のパートナーじゃ無かったとしても、恋人を作るぐらい良いじゃない」

 ニーナは昔からアイナを知っているので、彼女の葛藤を知っている。何故そこまで後ろ向きなのか、その理由を本人から直接聞いた。
 確かに出産のリスクは高いけれど、だからと言って幸せになってはいけない理由にはならない。
 子供を作る事だけが全てではないし、作らない夫婦だって世界中に居る。どちらかが病気により、子孫を作れない家庭だってあるのだ。
 でも彼らが不幸かと言えば、その限りではないだろう。辛い時期があったとしても、それでも幸せを享受している。アイナにだってその権利があるのだと、ニーナは訴え掛ける。

「貴女の幸せは、貴女が決めて良いんだから」

「……うん。そう、だね」

「もし男に何か失礼な事を言われたら連絡して! 私が殴りに行くから!」

 思春期の学生らしい恋愛トークを繰り広げながら、アイナは親友との時間を久しぶりに満喫した。
 自分が清志と恋愛関係に発展するかは分からない。ただもう少し肩の力を抜いても良いのかも知れないと、ニーナの説得によりアイナは考えて直してみる事にした。
 並みの男性なら瞬時に制圧出来る女子2人は、年相応のガールズトークを時間一杯まで楽しむのであった。
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