怪物王女は甘い菓子を断つ

田舎の沼

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怪物王女の過去

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 シャーロット・リアデールは、生まれたときから「惜しい子」だった。

 第一王兄レオンハルトは剣と魔術の天才。幼い頃から王宮の騎士たちを圧倒し、十三歳で魔獣討伐の英雄となった。戦場では一騎当千の活躍をし、王国を守る盾として称賛された。  
 第二王兄ユーリウスは十四歳で隣国との外交を成功させ「銀舌の王子」と称えられた。言葉一つで人心を掴み、戦争を未然に防ぐ知恵者。商談では常に有利な条件を引き出し、王国の富を増やした。  
 第一王女エリーゼは「薔薇の聖女」と呼ばれるほどの美貌と癒しの神術を持つ。彼女の微笑みだけで、病床の兵士が立ち上がるという。慈善活動にも熱心で、民衆からの人気は絶大だった。

 そして第二王女シャーロットは――

「何をやっても中の下、容姿も中の下」  
 宮廷の人々はそう囁き、母后でさえため息をついた。彼女の魔法の才能は平均以下、剣術は苦手、外交の才も見えず、美貌も兄弟たちに比べて劣っていた。父王は優しいが、忙しさからシャーロットに目を向ける余裕が少なく、母后は完璧主義者で、娘の欠点を指摘するばかりだった。

 十歳の誕生日。  
 宴の席で、貴族の娘たちに囲まれたシャーロットは言われた。

「おデブの王女様って、ほんとにこの国の人なの? お兄様たちみたいに優秀じゃないのに、どうして王族なの? もっと痩せたら、少しはマシかもよ?」

 その言葉が胸に刺さった。シャーロットは鏡を見て、自分の丸い体型を呪った。兄弟たちのように輝けない自分を、惨めに思った。その夜から、彼女は甘い菓子をやめられなくなった。宮廷の厨房から隠れて持ち出し、部屋で一人で食べる。チョコレートの甘さ、クッキーのサクサク感、ケーキのふわふわした食感。それらが、心の空洞を埋めてくれた。

 菓子を口に運ぶたび、  
 ――これでいい。  
 ――どうせ私は、誰にも必要とされない。  
 ――だったら、せめてお腹いっぱい幸せでいたい。

 そうして、十五歳の春。  
 体重は100kg越え。
 鏡に映る自分を見て、シャーロットは毎晩泣いた。ドレスが入らなくなり、階段を上るだけで息が切れる。宮廷の視線は冷たく、噂は「怪物王女」として広がった。彼女は自分を隠すように、部屋に閉じこもるようになった。時折、孤児院に菓子を寄付するくらいが、唯一の心の支えだった。あの子どもたちの笑顔が、シャーロットの優しさを証明してくれる唯一のものだった。

「怪物王女」  
 そう呼ばれるのも、当然だと思っていた。
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