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第1章
ギルドメンバーに恵まれるかどうかでMMOの評価は決まる
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翌日の昼休み。
Prrrr. Prrrr.
『はい、都立月見ヶ丘高校経営企画室佐藤です』
「こんにちは。私、都立星見台高校で女子ソフトボール部の顧問をしている北条と申しますが、女子ソフトボール部顧問の里見先生をお願いできますか?」
『お世話になっております。里見ですね、少々お待ちください』
昨日話しにでた赤城の希望を叶えるため、俺は月見ヶ丘高校に電話した。
まー、昼休みだからって生徒指導してるかもしれないし、繋がらないときは繋がらないんだけどね。
って思ってたけど。
『お待たせしました。女子ソフトボール部顧問の里見です』
少しだけ待った後、電話口に凛とした女性の声が俺の耳へと入ってきた。
これが、あの怖そうな女監督か。さすがに電話じゃ礼儀正しいな。
「初めまして。星見台の北条と申します」
『こちらこそ、うちの真田から話は聞いています。こちらからお電話しようと思っていたところだったのですが、お手数おかけしました』
「いえいえ、うちもキャプテンの赤城から昨日話を聞いたところでして……いやぁ、お互い大変ですね」
『ええ、ほんとに……と、それで星見台さんはうちとの合同ということでよろしいのですか?』
「ええ、もちろん。うちは9人も集められないので……。むしろそちらは部員が戻ってきてやはり単独チームになったりとかはないんですか?」
『んー……ないですね。私としては戻って来てほしいとは思っていますが、3年が引退するまでは、1年は戻ってこないと思います……っと、こんな話先生にする話ではないですよね、すみません』
「いやー、女子高生はなかなか難しいですよねー。ほんと、おつかれさまです……。では、今回は合同チームで出場ということで、よろしくおねがいします!」
『ええ、こちらこそよろしくお願いしますね』
「選手名簿や合同申請書の書類はこちらからまたメールしますので、よろしくお願いします」
『助かります。合同出場は初めてですので、いまいち勝手がわからなくて』
「はは、最初はそんなもんですよ。えーっと、ぜひ合同練習もお願いしたいんですが、いきなりですけど明後日の土曜はいかがですか?」
『普段は午前9時から練習をしているので、大丈夫ですよ』
「おお、それはよかった。では今回はこちらが月見ヶ丘さんに行く形で練習しましょう」
「分かりました。……北条先生頼もしくてありがたいです」
「いやいや、そんなことないですよ。では、土曜の午前9時に、よろしくお願いします」
『はい、お待ちしております』
「はい、では失礼します」
『失礼します』
ガチャ。
ふう。いやーすんなり話進んでよかったー。それに、怖い印象だった分電話越しの対応が柔らかくて逆にほっとしたな。
それに、頼もしくてありがたい、か。うん、言われて悪い気はしないな。
とりあえずこれで赤城の希望も叶ったし、今日の部活のときにあいつらに言ってやろうっと。
「昨日倫ちゃんに遊んでもらったけど、けっこう面白かったよー」
「ええ、じゅりあいいなぁ……」
「そら先輩もやってみたらいいじゃないですかー」
「うーん、わたしオンラインとかよくわかんないんだよね……」
「そっかー」
「おら、だらだらやってんじゃねぇぞー」
「「は、はーい!」」
我がソフト部は今日も平常運転。
うん、俺が言わなくても赤城がいろいろ言ってくれるからな。
そんなこんなで練習を終えたところで、いつもなら片付けとグラウンド整備に分かれるところ、俺は部員たちに一旦集まってもらった。
「えー、来月の公立校大会は、月見ヶ丘高校と合同を組むことになりました」
「え、マジ! OKだって!?」
「ああ。で、さっそくなんだけど、明後日の土曜に向こうで合同練習するんだけど、来れないやついる?」
まぁこいつらも普段土曜は部活やってるから、大丈夫だろ。
うん、全員首を振ったな。
「じゃあ、8時50分に現地集合で。持ってく道具の担当は明日にでも決めといてくれ」
「「「「はーい」」」」
「やったぜっ」
「すずよかったねー」
うんうん。生徒が喜んでる姿を見るのはいいもんだ。
なんというか、教師冥利に尽きるよな。
とりあえずこれで3年の引退への花道は飾られた。
今日はいい気分でログインができそうだ。
ということで。
〈Daikon〉『よーっす』
〈Zero〉『おー』
今日も帰宅後の楽しみのログインをするや否や、だいからメッセージが届く。
〈Daikon〉『今日は教え子はいいんだよな?w』
〈Zero〉『昨日だいと約束したばっかだろw』
〈Daikon〉『お、覚えてたか。感心感心っても、ほんとは試し撃ちがしたくてしょうがないんだろ?w』
〈Zero〉『バレたかw』
〈Daikon〉『今日ログインしてるのは、ぴょんとジャックか』
〈Zero〉『お、ウィザードにサポーターか。普通にスキル上げできるメンバーじゃん』
〈Daikon〉『聞いてみるわー』
〈Daikon〉『よーっす。ゼロやんとダイヤ亀狩りいくけど、一緒行かね?』
ギルドチャットでだいがログインしているギルドメンバーに誘いをかける。普通のプレイヤーだと、放置してたりということも間々あるのだが、【Teachers】のメンバーは基本的にプレイするときしかログインしないから、だいたいは中身もいるのがいいとこだな。
〈Pyonkichi〉『お、いいねー。ゼロやんの銃みたーい』
〈Jack〉『後衛俺だけパターンやーーーーーんw行くけど』
〈Daikon〉『いい返事じゃwじゃあ、さっそくいこー』
ちなみにぴょんこと〈Pyonkichi〉はリアルの仕事が忙しいためログインは安定しないが、うちのギルドのメインウィザードを担当する小人族の男キャラだ。ウィザードとしての強さは……本職ロバーのだいの方が強いのだが、それは誰も言わないことにしている。それぞれのプレイスタイルがあるからね。
で、一昨日の攻略でも活躍したジャックこと〈Jack〉は銀髪の男大人エルフキャラで、サポーターとプリーストという支援ジョブの二刀流の、ギルドのコンテンツ攻略に不可欠なキャラである。
本人があまり広めないでくれと言うから、俺とだい、リーダーの〈Gen〉しか知らないことだとは思うが、ジャックは元【Vinchitore】の幹部だったほどのプレイヤーであり、今でも時折助っ人に行ったりしている元廃プレイヤーだ。
ギルド内でもいじられキャラのため今言っても信じてもらえなさそうだが、俺とだいが、【Vinchitore】に次ぐ廃ギルドの【Mocomococlub】に在籍していたときに、新コンテンツの攻略速度を競う相手だったのだから疑いようはない。
まぁ、きっとジャックも就職にあたってギルド継続ができなかったっていう、俺とかと同じ口だろう。
二人とも頼もしい仲間なのは間違いない。
〈Zero〉『じゃ、素材はだいに流して、俺らはいい装備作ってもらえるようにがんばりますか』
〈Daikon〉『はやく撃ちたくてうずうずしてるくせにw』
〈Jack〉『あと何回あの恐竜やんなきゃいけないのかねーーーー』
〈Pyonkichi〉『しかし、よく勝ったね~みんな』
〈Jack〉『いやー、リダのノーガード作戦には驚いたわーーーーw』
〈Zero〉『ぴょんと嫁キングがいなかったから、リダもダメ元で決めたっぽいね』
洞窟タイプのダンジョンで狩りを開始しながら、俺らはのんびり一昨日の討伐を振り返りだす。ちなみにリダとはギルドリーダーの〈Gen〉のことで、嫁きんぐとは〈Soulking〉のことね。ギルドのメインヒーラーで、リダ嫁だ。
で、討伐相手なんだが、今回の狩りの標的のダイヤ亀ことダイヤモンドタートルは物理防御も魔法防御もあほみたいに高く、常に範囲攻撃でプレイヤーを攻撃してくる難敵だ。だが亀なだけあり動きは遅く、ギミックさえ分かっていれば攻撃を回避することは難しくないし、攻撃を当てるのは初心者でも簡単な部類だろう。
話しながら俺も銃新しく手に入れた銃で攻撃しようとすると……おお! さすが武器スキル+100に命中補正+250なだけあるな。
基本的にこのゲーム、LAの攻撃システムは構えて、ターゲットマークが出ている時にアタックしたり、魔法を選択して対象を選んだりと、2段階の手順になるのだが、銃と弓は構えてからターゲットマークに自身の武器の照準マークを合わせて発射、という照準合わせが必要な、慣れが必要な武器なのだ。
もちろん敵の攻撃範囲外から攻撃できるというメリットがあるためなのだが、命中補正や武器スキル補正が低いと、モンスターに出るターゲットマークが小さくなるのである。
もちろんよほど照準を外さない限り攻撃は当たるのだが、照準がずれればずれるほど与えるダメージは少なくなる。そのため銃と弓は動きが速い敵相手だとかなり苦戦を強いられる武器であり、安定したダメージソースにはなりにくい。
これが銃と弓が不人気武器な理由でもある。
だがどうだろうか、俺の新たな銃はターゲットマークが非常にでかかった。これならば、高確率で大ダメージを与えることもできるだろう。
いやぁ、噂には聞いてたけど、ほんとにぶっこわれ性能だわこれ。
試しに発射、と。
照準マークの大きさに感動していた俺が、発射コマンドを入力すると、明らかにダイヤ亀のHPゲージが減少した。10%ほどを一気に削ってしまったのではないだろうか。
この亀相手に10%削るというのは、つまりこの銃の攻撃力がそれだけ高い、ということだ。俺が前に使っていた銃も高位の銃だったが、照準ばっちしのベストショットで削れても3%くらいだった。
〈Daikon〉『うはwww何今の攻撃www』
〈Jack〉『噂には聞いてたけど、半端ないねーーーー』
〈Pyonkichi〉『なぁオリジナルスキルは!?』
〈Zero〉『お、おう』
俺自身もびっくりしてしまったが、俺の攻撃を見たギルメンたちが、それまで話してた話題もどこへやら、俺の銃への興味へと移ってしまうほどだった。
えーっと、オリジナルスキルは……うわ、MP消費やば。
武器スキルに応じてスキルと魔法が使えるとは既に説明しているところだが、このゲームでは通常攻撃以外の行動にはMPを必要とする。
MPの初期値は1000で、装備で増減もするのだが、基本的に後衛系の装備以外ではMPは減ることはあっても増えることがない。
だから直接モンスターに攻撃を仕掛ける武器持ちは、みんなだいたいMP1000が通常なのだが、この銃のオリジナルスキルである“サドンリーデス”という技の消費MPは350と表示されていた。
銃の基本スキルとしてよく使われる、次の攻撃が必ずベストショットとなるスナイパーショットの消費MPが40、次の通常攻撃が数発連続での銃撃になるマルチプルショットが消費MP60と、まぁだいたいそんなもんだ。
これは強くても使い道考えないとなー……まぁとりあえず撃ってみるか。
〈Zero〉『いくぞー』
コマンドからサドンリーデスを選択すると、俺のキャラが闇をまとうようなエフェクトが発生した。
なるほど、即時発動型じゃなく、次の攻撃に何かしら効果を与える系のスキルなんだな。
〈Jack〉『追加効果型なんだねーーーー』
さすがジャック、即座に気づいたな。
まぁ、どんな追加効果かなー、と俺が構え――
〈Zero〉『マジか』
〈Daikon〉『え、どしたん』
〈Zero〉『的ちっさ!』
照準を合わせようとして、びびった。
先ほどまでのすげぇでかかった照準とは対照的に、このスキルを使った直後、ターゲットマークが極端に小さくなった。
たとえるなら、ダーツで1ポイント以上取れと言われていた状態から、ブルに当てろと言われているようなもんだ。さっきまでのギャップから、やたら小さく感じるのは、きっと仕様なのだろう
だ、だがまぁ、幸い今の相手は亀だ。ターゲットマークの動きは遅い。
慌てずに照準を合わせて、発射、っと! うむ、ばっちり!
俺が発射コマンドをした瞬間、俺のキャラがまとっていた闇のエフェクトが攻撃エフェクトへと変化し、うねる闇の奔流のようなものが亀へと向かい、闇が広がるように敵に命中した。
〈Daikon〉『は』
〈Jack〉『まじ?』
〈Pyonkichi〉『わーお』
俺自身はもうびっくりして何も言えなかったのだが、俺の攻撃が亀に与えたダメージはカンストダメージの99999。1撃で、普通に戦えば5分はかかる亀が死んだ。
なんだこれ、威力爆上げ? 防御力無視? どんな効果なんだ。いやしかし……。
〈Zero〉『つよ』
うん。苦労して手に入れた甲斐あったわ。
Prrrr. Prrrr.
『はい、都立月見ヶ丘高校経営企画室佐藤です』
「こんにちは。私、都立星見台高校で女子ソフトボール部の顧問をしている北条と申しますが、女子ソフトボール部顧問の里見先生をお願いできますか?」
『お世話になっております。里見ですね、少々お待ちください』
昨日話しにでた赤城の希望を叶えるため、俺は月見ヶ丘高校に電話した。
まー、昼休みだからって生徒指導してるかもしれないし、繋がらないときは繋がらないんだけどね。
って思ってたけど。
『お待たせしました。女子ソフトボール部顧問の里見です』
少しだけ待った後、電話口に凛とした女性の声が俺の耳へと入ってきた。
これが、あの怖そうな女監督か。さすがに電話じゃ礼儀正しいな。
「初めまして。星見台の北条と申します」
『こちらこそ、うちの真田から話は聞いています。こちらからお電話しようと思っていたところだったのですが、お手数おかけしました』
「いえいえ、うちもキャプテンの赤城から昨日話を聞いたところでして……いやぁ、お互い大変ですね」
『ええ、ほんとに……と、それで星見台さんはうちとの合同ということでよろしいのですか?』
「ええ、もちろん。うちは9人も集められないので……。むしろそちらは部員が戻ってきてやはり単独チームになったりとかはないんですか?」
『んー……ないですね。私としては戻って来てほしいとは思っていますが、3年が引退するまでは、1年は戻ってこないと思います……っと、こんな話先生にする話ではないですよね、すみません』
「いやー、女子高生はなかなか難しいですよねー。ほんと、おつかれさまです……。では、今回は合同チームで出場ということで、よろしくおねがいします!」
『ええ、こちらこそよろしくお願いしますね』
「選手名簿や合同申請書の書類はこちらからまたメールしますので、よろしくお願いします」
『助かります。合同出場は初めてですので、いまいち勝手がわからなくて』
「はは、最初はそんなもんですよ。えーっと、ぜひ合同練習もお願いしたいんですが、いきなりですけど明後日の土曜はいかがですか?」
『普段は午前9時から練習をしているので、大丈夫ですよ』
「おお、それはよかった。では今回はこちらが月見ヶ丘さんに行く形で練習しましょう」
「分かりました。……北条先生頼もしくてありがたいです」
「いやいや、そんなことないですよ。では、土曜の午前9時に、よろしくお願いします」
『はい、お待ちしております』
「はい、では失礼します」
『失礼します』
ガチャ。
ふう。いやーすんなり話進んでよかったー。それに、怖い印象だった分電話越しの対応が柔らかくて逆にほっとしたな。
それに、頼もしくてありがたい、か。うん、言われて悪い気はしないな。
とりあえずこれで赤城の希望も叶ったし、今日の部活のときにあいつらに言ってやろうっと。
「昨日倫ちゃんに遊んでもらったけど、けっこう面白かったよー」
「ええ、じゅりあいいなぁ……」
「そら先輩もやってみたらいいじゃないですかー」
「うーん、わたしオンラインとかよくわかんないんだよね……」
「そっかー」
「おら、だらだらやってんじゃねぇぞー」
「「は、はーい!」」
我がソフト部は今日も平常運転。
うん、俺が言わなくても赤城がいろいろ言ってくれるからな。
そんなこんなで練習を終えたところで、いつもなら片付けとグラウンド整備に分かれるところ、俺は部員たちに一旦集まってもらった。
「えー、来月の公立校大会は、月見ヶ丘高校と合同を組むことになりました」
「え、マジ! OKだって!?」
「ああ。で、さっそくなんだけど、明後日の土曜に向こうで合同練習するんだけど、来れないやついる?」
まぁこいつらも普段土曜は部活やってるから、大丈夫だろ。
うん、全員首を振ったな。
「じゃあ、8時50分に現地集合で。持ってく道具の担当は明日にでも決めといてくれ」
「「「「はーい」」」」
「やったぜっ」
「すずよかったねー」
うんうん。生徒が喜んでる姿を見るのはいいもんだ。
なんというか、教師冥利に尽きるよな。
とりあえずこれで3年の引退への花道は飾られた。
今日はいい気分でログインができそうだ。
ということで。
〈Daikon〉『よーっす』
〈Zero〉『おー』
今日も帰宅後の楽しみのログインをするや否や、だいからメッセージが届く。
〈Daikon〉『今日は教え子はいいんだよな?w』
〈Zero〉『昨日だいと約束したばっかだろw』
〈Daikon〉『お、覚えてたか。感心感心っても、ほんとは試し撃ちがしたくてしょうがないんだろ?w』
〈Zero〉『バレたかw』
〈Daikon〉『今日ログインしてるのは、ぴょんとジャックか』
〈Zero〉『お、ウィザードにサポーターか。普通にスキル上げできるメンバーじゃん』
〈Daikon〉『聞いてみるわー』
〈Daikon〉『よーっす。ゼロやんとダイヤ亀狩りいくけど、一緒行かね?』
ギルドチャットでだいがログインしているギルドメンバーに誘いをかける。普通のプレイヤーだと、放置してたりということも間々あるのだが、【Teachers】のメンバーは基本的にプレイするときしかログインしないから、だいたいは中身もいるのがいいとこだな。
〈Pyonkichi〉『お、いいねー。ゼロやんの銃みたーい』
〈Jack〉『後衛俺だけパターンやーーーーーんw行くけど』
〈Daikon〉『いい返事じゃwじゃあ、さっそくいこー』
ちなみにぴょんこと〈Pyonkichi〉はリアルの仕事が忙しいためログインは安定しないが、うちのギルドのメインウィザードを担当する小人族の男キャラだ。ウィザードとしての強さは……本職ロバーのだいの方が強いのだが、それは誰も言わないことにしている。それぞれのプレイスタイルがあるからね。
で、一昨日の攻略でも活躍したジャックこと〈Jack〉は銀髪の男大人エルフキャラで、サポーターとプリーストという支援ジョブの二刀流の、ギルドのコンテンツ攻略に不可欠なキャラである。
本人があまり広めないでくれと言うから、俺とだい、リーダーの〈Gen〉しか知らないことだとは思うが、ジャックは元【Vinchitore】の幹部だったほどのプレイヤーであり、今でも時折助っ人に行ったりしている元廃プレイヤーだ。
ギルド内でもいじられキャラのため今言っても信じてもらえなさそうだが、俺とだいが、【Vinchitore】に次ぐ廃ギルドの【Mocomococlub】に在籍していたときに、新コンテンツの攻略速度を競う相手だったのだから疑いようはない。
まぁ、きっとジャックも就職にあたってギルド継続ができなかったっていう、俺とかと同じ口だろう。
二人とも頼もしい仲間なのは間違いない。
〈Zero〉『じゃ、素材はだいに流して、俺らはいい装備作ってもらえるようにがんばりますか』
〈Daikon〉『はやく撃ちたくてうずうずしてるくせにw』
〈Jack〉『あと何回あの恐竜やんなきゃいけないのかねーーーー』
〈Pyonkichi〉『しかし、よく勝ったね~みんな』
〈Jack〉『いやー、リダのノーガード作戦には驚いたわーーーーw』
〈Zero〉『ぴょんと嫁キングがいなかったから、リダもダメ元で決めたっぽいね』
洞窟タイプのダンジョンで狩りを開始しながら、俺らはのんびり一昨日の討伐を振り返りだす。ちなみにリダとはギルドリーダーの〈Gen〉のことで、嫁きんぐとは〈Soulking〉のことね。ギルドのメインヒーラーで、リダ嫁だ。
で、討伐相手なんだが、今回の狩りの標的のダイヤ亀ことダイヤモンドタートルは物理防御も魔法防御もあほみたいに高く、常に範囲攻撃でプレイヤーを攻撃してくる難敵だ。だが亀なだけあり動きは遅く、ギミックさえ分かっていれば攻撃を回避することは難しくないし、攻撃を当てるのは初心者でも簡単な部類だろう。
話しながら俺も銃新しく手に入れた銃で攻撃しようとすると……おお! さすが武器スキル+100に命中補正+250なだけあるな。
基本的にこのゲーム、LAの攻撃システムは構えて、ターゲットマークが出ている時にアタックしたり、魔法を選択して対象を選んだりと、2段階の手順になるのだが、銃と弓は構えてからターゲットマークに自身の武器の照準マークを合わせて発射、という照準合わせが必要な、慣れが必要な武器なのだ。
もちろん敵の攻撃範囲外から攻撃できるというメリットがあるためなのだが、命中補正や武器スキル補正が低いと、モンスターに出るターゲットマークが小さくなるのである。
もちろんよほど照準を外さない限り攻撃は当たるのだが、照準がずれればずれるほど与えるダメージは少なくなる。そのため銃と弓は動きが速い敵相手だとかなり苦戦を強いられる武器であり、安定したダメージソースにはなりにくい。
これが銃と弓が不人気武器な理由でもある。
だがどうだろうか、俺の新たな銃はターゲットマークが非常にでかかった。これならば、高確率で大ダメージを与えることもできるだろう。
いやぁ、噂には聞いてたけど、ほんとにぶっこわれ性能だわこれ。
試しに発射、と。
照準マークの大きさに感動していた俺が、発射コマンドを入力すると、明らかにダイヤ亀のHPゲージが減少した。10%ほどを一気に削ってしまったのではないだろうか。
この亀相手に10%削るというのは、つまりこの銃の攻撃力がそれだけ高い、ということだ。俺が前に使っていた銃も高位の銃だったが、照準ばっちしのベストショットで削れても3%くらいだった。
〈Daikon〉『うはwww何今の攻撃www』
〈Jack〉『噂には聞いてたけど、半端ないねーーーー』
〈Pyonkichi〉『なぁオリジナルスキルは!?』
〈Zero〉『お、おう』
俺自身もびっくりしてしまったが、俺の攻撃を見たギルメンたちが、それまで話してた話題もどこへやら、俺の銃への興味へと移ってしまうほどだった。
えーっと、オリジナルスキルは……うわ、MP消費やば。
武器スキルに応じてスキルと魔法が使えるとは既に説明しているところだが、このゲームでは通常攻撃以外の行動にはMPを必要とする。
MPの初期値は1000で、装備で増減もするのだが、基本的に後衛系の装備以外ではMPは減ることはあっても増えることがない。
だから直接モンスターに攻撃を仕掛ける武器持ちは、みんなだいたいMP1000が通常なのだが、この銃のオリジナルスキルである“サドンリーデス”という技の消費MPは350と表示されていた。
銃の基本スキルとしてよく使われる、次の攻撃が必ずベストショットとなるスナイパーショットの消費MPが40、次の通常攻撃が数発連続での銃撃になるマルチプルショットが消費MP60と、まぁだいたいそんなもんだ。
これは強くても使い道考えないとなー……まぁとりあえず撃ってみるか。
〈Zero〉『いくぞー』
コマンドからサドンリーデスを選択すると、俺のキャラが闇をまとうようなエフェクトが発生した。
なるほど、即時発動型じゃなく、次の攻撃に何かしら効果を与える系のスキルなんだな。
〈Jack〉『追加効果型なんだねーーーー』
さすがジャック、即座に気づいたな。
まぁ、どんな追加効果かなー、と俺が構え――
〈Zero〉『マジか』
〈Daikon〉『え、どしたん』
〈Zero〉『的ちっさ!』
照準を合わせようとして、びびった。
先ほどまでのすげぇでかかった照準とは対照的に、このスキルを使った直後、ターゲットマークが極端に小さくなった。
たとえるなら、ダーツで1ポイント以上取れと言われていた状態から、ブルに当てろと言われているようなもんだ。さっきまでのギャップから、やたら小さく感じるのは、きっと仕様なのだろう
だ、だがまぁ、幸い今の相手は亀だ。ターゲットマークの動きは遅い。
慌てずに照準を合わせて、発射、っと! うむ、ばっちり!
俺が発射コマンドをした瞬間、俺のキャラがまとっていた闇のエフェクトが攻撃エフェクトへと変化し、うねる闇の奔流のようなものが亀へと向かい、闇が広がるように敵に命中した。
〈Daikon〉『は』
〈Jack〉『まじ?』
〈Pyonkichi〉『わーお』
俺自身はもうびっくりして何も言えなかったのだが、俺の攻撃が亀に与えたダメージはカンストダメージの99999。1撃で、普通に戦えば5分はかかる亀が死んだ。
なんだこれ、威力爆上げ? 防御力無視? どんな効果なんだ。いやしかし……。
〈Zero〉『つよ』
うん。苦労して手に入れた甲斐あったわ。
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