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第2章
可愛いものは可愛い
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さすが平日。土日には家族連れで溢れる動物園、正式名称井の頭自然文化園も今ばかりは空いていた。
ここに来るのは……あー、思い出さなきゃよかった。
うん、もちろん亜衣菜とデートで来て以来だよ。
ここに今、だいと来ている不思議。
というかやっぱ、これ、デートだよな!?
男女で動物園とか、どう考えてもデートだよな!?
だがこいつの場合、本当に一人だと行きづらいからという可能性も否めない……。
ああ、舞い上がってるのは俺ばかりか?
「ゼロやんは、動物は好き?」
「え、なんだよいきなり」
「さっき答えてくれなかったじゃない」
「あー、割と好きな方だよ」
「そっか」
そっか、ってなんだ聞いといて! 聞く気あんのか!
というかお前がさっき俺に聞いたのは「動物は嫌い?」だからな。……まぁ、これは俺の屁理屈か。
「見たいのあったらごめんだけど、15時までだから、先に行きたいところ行ってもいい?」
「え、どこだよ?」
「こっちよ」
入園するや否や、だいは何か目的があったみたいで早足で歩き出す。
というか、ちゃんと目的語をはっきりしてほしいんですけど!
さくさく進むこいつに置いていかれないように俺も少し早歩きになる。
しかし7月の日差しは暑く、急ぐとまた汗まみれなりそうだなぁ……。
それでもだいが歩くたびにふわふわと揺れるワンピース姿が可愛くて、ゆっくり歩こうなんて、俺には言えないんだけどね。
「あそこよ」
「あ、なるほど」
「うん、アレルギーとか、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ」
「ならよかった」
だいが指差したのは、モルモットとのふれあいコーナー。
たしかにここは土日は子どもで溢れかえるから、大人一人じゃちょっと来れないよな。
でもさすが平日。今は5,6人くらいしか客はいないようだ。
隅っこの方に固まる、丸っこくてふわふわしたモルモットたち。
見ているだけど、可愛いと思う。
「あぁ……」
そのうちの一匹、茶色と白の混ざり模様の子を捕まえて、ベンチに座って膝の上に置くだい。
なんというか、見たこともないような、慈愛に満ちた表情をしている。
いやー。やばいね。
俺の気持ちはもはや言わずもがなだと思うけど、うん、これはずるい。
その眼福な光景に、俺は立ち尽くしてしまうほどだ。
優しくモルモットを撫でてあげる姿に、俺もモルモットになりたいとか思う。
あ、これはキモいね。やっぱり撤回します。
「な、何よ?」
「え?」
「自分で捕まえられないの?」
「あ、いや」
「ほら、この子持ってて」
「え、あ、はい」
俺の視線に気づいただいは、一瞬でいつものモードに変わったのだが、どうやら俺がどうすればいいか分からなくなってると勘違いしたようだ。
俺をだいが座っていた隣に座らせると、撫でていたモルモットを俺に渡して立ち上がる。
しかし、こいつ、だいの膝の上にいたときは落ち着いてたのに、俺の膝の上なった途端あばれてるような!?
くそ、こいつ絶対オスだろ!
「ゼロやんに似てる子は……あ、この子とかどうだろ」
ぼそぼそと呟きつつ、今度はだいがぽつんと一匹だけぼーっとしていた、黒っぽい毛のモルモットを捕まえる。
「はい」
「あ、ありがと」
だいが捕まえてきた子を受け取り、俺の膝の上から最初に捕まえた子を優しく抱えて、だいが俺の隣に座る。
やばい。俺今、幸せだ。
「可愛いわよね」
「そ、そうだな」
だいから渡された子は、俺の膝の上でも少しだけ鼻をひくひくさせたまま、じっとしていた。
触っても逃げなさそうだったので、俺もだいと同じく、モルモットを撫でてあげる。
「だいは、動物好きなんだ?」
「ええ、好きよ」
間髪いれずに返ってきた答えに、一瞬ドキっとしてしまった。
俺に対して言われたものではないが、「好き」という言葉に反応してしまう。
ああもう、こんな風になるとか、童貞かよ……!
「私、実家で猫飼ってるから」
「あ、アイコンの子?」
「そう。よもぎって言うんだけど。ずっと一緒にいられるわ」
よもぎて!
〈Daikon〉につづいて猫がよもぎて!
思わず俺は小さく笑ってしまった。
でも、猫とたわむれるだいかぁ……。
「にゃあ」とか言ってんのかなぁ……。
「……気持ち悪い顔してるわよ?」
「え!? 嘘!?」
やばい、顔にでたか!
な、なんとか挽回しないと!!
「ね、猫飼えるとこに住もうとか思わないの?」
「それも考えたんだけど、実家に戻ればよもぎもいるし、全然実家に戻らなくなっちゃいそうだから」
「あー、なるほど。溺愛してんだなぁ」
「うん、よもぎは子猫の時にうちの畑の近くに捨てられた子でね、小さい頃から見てきたから、すごく大切なの」
「いつ頃?」
「ええと、私が高校生だったから……もう8年前かしら」
「そうなんだ。……じゃあ実家に残って、千葉で先生やろうと思わなかったのか?」
「え、そ、それは考えたけど……」
「ん?」
「別に! それはどうでもいいでしょ」
えええええ!?
普通の質問だと思ったのに、なんでか分からんがそっぽを向くだい。
分からん。全然わからん。なんかのタブーだったのか!?
「そ、そっか……俺は実家で犬飼ってたんだけど、猫も可愛いよなぁ」
「え、犬派、なの?」
「んー、どっちかってーと猫派な気はするけど、犬も飼ってた分好きだな。懐かしいな、柴犬だったんだけど、小さい頃はよく一緒に遊んでたよ」
「小さい頃……い、今は?」
「俺が小さい頃なんて何年前だって? とっくに死んじゃったよ。たしか、俺が高校生の時だな。そしたら当時中学の妹が号泣でさ、そっからペットの話題するだけですぐ泣くから、ペットの話すらタブーになったんだぜ?」
「あ、そうなんだ……ごめんなさいね、変な話聞いて」
「別にもうだいぶ前だし、気にすんなよ」
犬派猫派については、飼ったことないけど俺は猫派だと思う。
野良猫とか見ると足を止めることもあるしな。
でも、飼ってた犬を思い出すと、ちょっと懐かしくなる。
やっぱペットって、いるだけで家族を温かくしてくれるんだよなー。
うん、俺はどっちも派だな!
「でも、ゼロやん妹さんいたんだ」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「ええ、初めて聞いたわ」
「そっか。妹は俺の4つ下で今年24になる年かな。地元で市役所職員やってるよ」
「そうなんだ。優秀な妹さんね」
「そうだなぁ。昔に比べてしっかりしてきたかな。だいは、兄弟いるの?」
「私は10個上の兄と8個上の姉がいるわ」
「へぇ、けっこう上なんだな」
「農家だからね。お母さん、結婚早かったみたいだし」
「あー、それはよく聞くなぁ」
末っ子だったのか。ちょっと意外だな。
亜衣菜なんか典型的な妹で、案の定お兄さんいたけど、だいは年下の弟妹がいると思ってたけど。
でもやっぱ、7年前から知り合いだとはいえ、リアルで会ったのが最近ってなると、知らないことって多いなぁ。
LAの中だから話せること、LAの中じゃ話せないこと、いろいろあるってことか……。
俺はこれからも、こいつのことを知っていけるんだろうか?
「あぁ、でもやっぱり可愛いわね」
「あ、ああ。そうだな」
この同意は、たぶんだいの言葉の意味とは違う。
モルモットを嬉しそうに撫でるだいを見て、俺が同意したのは、俺の中だけの秘密である。
ここに来るのは……あー、思い出さなきゃよかった。
うん、もちろん亜衣菜とデートで来て以来だよ。
ここに今、だいと来ている不思議。
というかやっぱ、これ、デートだよな!?
男女で動物園とか、どう考えてもデートだよな!?
だがこいつの場合、本当に一人だと行きづらいからという可能性も否めない……。
ああ、舞い上がってるのは俺ばかりか?
「ゼロやんは、動物は好き?」
「え、なんだよいきなり」
「さっき答えてくれなかったじゃない」
「あー、割と好きな方だよ」
「そっか」
そっか、ってなんだ聞いといて! 聞く気あんのか!
というかお前がさっき俺に聞いたのは「動物は嫌い?」だからな。……まぁ、これは俺の屁理屈か。
「見たいのあったらごめんだけど、15時までだから、先に行きたいところ行ってもいい?」
「え、どこだよ?」
「こっちよ」
入園するや否や、だいは何か目的があったみたいで早足で歩き出す。
というか、ちゃんと目的語をはっきりしてほしいんですけど!
さくさく進むこいつに置いていかれないように俺も少し早歩きになる。
しかし7月の日差しは暑く、急ぐとまた汗まみれなりそうだなぁ……。
それでもだいが歩くたびにふわふわと揺れるワンピース姿が可愛くて、ゆっくり歩こうなんて、俺には言えないんだけどね。
「あそこよ」
「あ、なるほど」
「うん、アレルギーとか、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ」
「ならよかった」
だいが指差したのは、モルモットとのふれあいコーナー。
たしかにここは土日は子どもで溢れかえるから、大人一人じゃちょっと来れないよな。
でもさすが平日。今は5,6人くらいしか客はいないようだ。
隅っこの方に固まる、丸っこくてふわふわしたモルモットたち。
見ているだけど、可愛いと思う。
「あぁ……」
そのうちの一匹、茶色と白の混ざり模様の子を捕まえて、ベンチに座って膝の上に置くだい。
なんというか、見たこともないような、慈愛に満ちた表情をしている。
いやー。やばいね。
俺の気持ちはもはや言わずもがなだと思うけど、うん、これはずるい。
その眼福な光景に、俺は立ち尽くしてしまうほどだ。
優しくモルモットを撫でてあげる姿に、俺もモルモットになりたいとか思う。
あ、これはキモいね。やっぱり撤回します。
「な、何よ?」
「え?」
「自分で捕まえられないの?」
「あ、いや」
「ほら、この子持ってて」
「え、あ、はい」
俺の視線に気づいただいは、一瞬でいつものモードに変わったのだが、どうやら俺がどうすればいいか分からなくなってると勘違いしたようだ。
俺をだいが座っていた隣に座らせると、撫でていたモルモットを俺に渡して立ち上がる。
しかし、こいつ、だいの膝の上にいたときは落ち着いてたのに、俺の膝の上なった途端あばれてるような!?
くそ、こいつ絶対オスだろ!
「ゼロやんに似てる子は……あ、この子とかどうだろ」
ぼそぼそと呟きつつ、今度はだいがぽつんと一匹だけぼーっとしていた、黒っぽい毛のモルモットを捕まえる。
「はい」
「あ、ありがと」
だいが捕まえてきた子を受け取り、俺の膝の上から最初に捕まえた子を優しく抱えて、だいが俺の隣に座る。
やばい。俺今、幸せだ。
「可愛いわよね」
「そ、そうだな」
だいから渡された子は、俺の膝の上でも少しだけ鼻をひくひくさせたまま、じっとしていた。
触っても逃げなさそうだったので、俺もだいと同じく、モルモットを撫でてあげる。
「だいは、動物好きなんだ?」
「ええ、好きよ」
間髪いれずに返ってきた答えに、一瞬ドキっとしてしまった。
俺に対して言われたものではないが、「好き」という言葉に反応してしまう。
ああもう、こんな風になるとか、童貞かよ……!
「私、実家で猫飼ってるから」
「あ、アイコンの子?」
「そう。よもぎって言うんだけど。ずっと一緒にいられるわ」
よもぎて!
〈Daikon〉につづいて猫がよもぎて!
思わず俺は小さく笑ってしまった。
でも、猫とたわむれるだいかぁ……。
「にゃあ」とか言ってんのかなぁ……。
「……気持ち悪い顔してるわよ?」
「え!? 嘘!?」
やばい、顔にでたか!
な、なんとか挽回しないと!!
「ね、猫飼えるとこに住もうとか思わないの?」
「それも考えたんだけど、実家に戻ればよもぎもいるし、全然実家に戻らなくなっちゃいそうだから」
「あー、なるほど。溺愛してんだなぁ」
「うん、よもぎは子猫の時にうちの畑の近くに捨てられた子でね、小さい頃から見てきたから、すごく大切なの」
「いつ頃?」
「ええと、私が高校生だったから……もう8年前かしら」
「そうなんだ。……じゃあ実家に残って、千葉で先生やろうと思わなかったのか?」
「え、そ、それは考えたけど……」
「ん?」
「別に! それはどうでもいいでしょ」
えええええ!?
普通の質問だと思ったのに、なんでか分からんがそっぽを向くだい。
分からん。全然わからん。なんかのタブーだったのか!?
「そ、そっか……俺は実家で犬飼ってたんだけど、猫も可愛いよなぁ」
「え、犬派、なの?」
「んー、どっちかってーと猫派な気はするけど、犬も飼ってた分好きだな。懐かしいな、柴犬だったんだけど、小さい頃はよく一緒に遊んでたよ」
「小さい頃……い、今は?」
「俺が小さい頃なんて何年前だって? とっくに死んじゃったよ。たしか、俺が高校生の時だな。そしたら当時中学の妹が号泣でさ、そっからペットの話題するだけですぐ泣くから、ペットの話すらタブーになったんだぜ?」
「あ、そうなんだ……ごめんなさいね、変な話聞いて」
「別にもうだいぶ前だし、気にすんなよ」
犬派猫派については、飼ったことないけど俺は猫派だと思う。
野良猫とか見ると足を止めることもあるしな。
でも、飼ってた犬を思い出すと、ちょっと懐かしくなる。
やっぱペットって、いるだけで家族を温かくしてくれるんだよなー。
うん、俺はどっちも派だな!
「でも、ゼロやん妹さんいたんだ」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「ええ、初めて聞いたわ」
「そっか。妹は俺の4つ下で今年24になる年かな。地元で市役所職員やってるよ」
「そうなんだ。優秀な妹さんね」
「そうだなぁ。昔に比べてしっかりしてきたかな。だいは、兄弟いるの?」
「私は10個上の兄と8個上の姉がいるわ」
「へぇ、けっこう上なんだな」
「農家だからね。お母さん、結婚早かったみたいだし」
「あー、それはよく聞くなぁ」
末っ子だったのか。ちょっと意外だな。
亜衣菜なんか典型的な妹で、案の定お兄さんいたけど、だいは年下の弟妹がいると思ってたけど。
でもやっぱ、7年前から知り合いだとはいえ、リアルで会ったのが最近ってなると、知らないことって多いなぁ。
LAの中だから話せること、LAの中じゃ話せないこと、いろいろあるってことか……。
俺はこれからも、こいつのことを知っていけるんだろうか?
「あぁ、でもやっぱり可愛いわね」
「あ、ああ。そうだな」
この同意は、たぶんだいの言葉の意味とは違う。
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