オフ会から始まるワンダフルライフ 人生を彩るのはオンラインゲーム!?

佐藤哲太

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第4章

合同チーム初陣へ

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「里見先生、久しぶりだね」
「河合先生もお変わりないようで。お元気そうで何よりです。今日は申し出を受け入れていただきありがとうございます」
「里見先生みたいな美人のお願いに応えるのは男の務めだろ! はっはっは!」
「相変わらずですね」

 うちも世田谷商業も選手たちがアップをしている最中、俺とだいは世田谷商業の監督が座るベンチの方へ足を運んでいた。
 世田谷商業率いる河合先生はたしか元々月見ヶ丘にいたんだったっけか。しかし、ベテランって感じだなー。

「星見台の北条です。今日はありがとうございます」
「おお、世田商の河合だ! よろしくな! しっかし北条先生はイケメンってやつだなぁ! 結婚は?」
「え!? あ、いや、自分はまだ独身です……」

 ほんと、ベテランって感じのザ・おじいちゃん教師。
 嫌味もなくだいに美人って言ったり、俺に既婚かどうか聞いてくるのは、年齢と人柄の合わせ技だな。
 うちの学年主任にちょっと似てる。

「おお、独身か! 里見先生もまだじゃろ? こういう縁を大事にするんだぞ!」

 そう言って高らかに笑う河合先生。
 俺とだいがまさか付き合ってるとも言えるわけもなく、俺とだいは二人して気まずく黙るしかなかったのは、言うまでもない。

「それで、今日は変則ダブルでもいいか?」
「え?」
「せっかく来たんだ。どうせなら多くイニングを経験させたい」
「どういう変則ですか?」
「5イニング2試合はどうだ?」
「私は構いませんけど……」

 俺とだいに河合先生が何を思ったかは分からないが、話の流れが試合の話に変わった。
 ダブルってのは、ダブルヘッダー。1日に2試合することを意味する。
 ソフトボールは通常が1試合7イニング制なんだけど、それを5イニングで提案してきたから、変則って枕詞まくらことばがついてるわけだな。

 基本的に話を進めてくれただいがそれを了承し、俺にも意見を求めるようにこちらを見てくる。
 だがちょっと5×2は、俺の本意ではない。
 あと何試合できるか分からないから、1つは絶対にやりたいことがあるのだ。

「7イニングと5イニングでは?」
「お、さらに増やすのか! うちはいいぞ」

 よし、快諾してくれてよかった。
 まぁ世田谷商業は単独で部員15人くらいいるし、イニング多くないとなかなか全員試合に出しづらいもんな。
 強豪校みたいに1軍・2軍で分けて練習や試合ができるわけもないし、なるべく全員にいい経験をさせたいってのは顧問の悩みだよなー。

「ではそれでお願いします」

 だいの言葉で話を締めて、俺とだいは河合先生に一礼し再び自軍のベンチへ戻る。
 あ、ちなみに俺らがホーム側だから1塁側、世田谷商業がアウェイだから3塁側ベンチな。


「7回、市原さんだけで投げ切らせるの?」
「それがやりたかったからな」
「久々で、こんなに暑くて大丈夫かしら?」
「ダメそうな顔なったら柴田に変えるよ。1試合目のマウンドはうちに任せろ」
「ん、わかった」

 ベンチに戻ってだいと言葉を交わす。
 さすがに選手たちが今は外野の方でキャッチボールをしてるから、敬語じゃないぞ。

「でも、河合先生いい人そうだなー」
「そうね、色々セクハラまがいなことを言う人だけど、嫌味がないのよね」
「体育科?」
「偏見よそれ」
「す、すみません」
「体育科だけど」
「合ってんのかよ!」

 体育の先生はノリがいい人が多い。でも体育の男の先生でソフト専門って人はまずいないだろうから、河合先生は野球上がりなのかな、きっと。
 まぁ世田谷商業は野球部ないからってとこか。

 どかっとベンチに座る河合先生をじっと見ながら、彼がどんな采配を振るうのか、少しだけ楽しみになった俺なのだった。



「それでは世田谷商業と月見ヶ丘・星見台の練習試合を始めます。礼!」
「「「おねがいしまーっす」」」
「「「おねがいしまーっす」」」

 相手チームと審判に向けて2度礼をし、選手たちが散っていく。

 淡々とした試合開始の宣言で、いよいよ俺たちの試合の幕が切って落とされた。
 ちなみに審判は世田谷商業の副顧問の男の先生が務めてくれている。でも雰囲気的に野球かソフトの経験はなさそうだから、フォローはしないとな。
 変なジャッジで赤城キレたりすんなよー?

 俺たちは後攻なので、今マウンドに立つのは市原だ。
 いつも通り軽く投げるだけの投球練習。
 入学以来ずっとこうなんだから、きっとこいつの癖なんだろう。

 でも何というか、やっぱこいつはマウンドが似合う。
 絵に描いたような美少女で、エース。しかも実力もある。
 なんかの漫画か小説の主人公みたいな設定だと顧問ながらに思わざるを得ない。

 普段はおバカな女子高生でしかないんだけど。

「っしゃ! 1回! しまってこー!」
 
 ボールバックし(※投球練習中に内野や外野が練習で使っていたボールをベンチに戻すこと)、2塁送球を終えた赤城が、威勢のいい声でチームに声をかける。
 もうこの辺は見てて安心する頼もしさだ。
 赤城の声に応える選手たちもいい声が出てる。
 レフトの戸倉さんだけ、ちょっと不安そうだけど。

「プレイボール!」

 世田谷商業の先頭バッターは左の子バッター。構えからしてもきっとセーフティセーフティバントだろうな。
 さ、黒澤出番だぞっと。

 分かりやすい相手の構えに、既に幾度となくバント処理を経験してきた黒澤は俺に言われなくてもじりじりと前に守備位置をずらしていた。
 サードってバッターとの距離が近いからけっこうむずいんだけど、この辺は安心である。

 そして市原の第1球。
 相手は初球からしかけてきた。
 予想通りの動きに黒澤が対応……とはいかず、相手の打球は一塁側に転がされた。

「そら!」「おっけい!」
「まなか!」「はい!」

 ボールが転がった瞬間、赤城の指示が飛ぶ。
 そしてそう言われるのが分かっていたように、市原は華麗なフィールディングを見せファーストを守る飯田さんより素早い動きで打球を処理。セカンドの佐々岡さんも見事な早さで一塁のベースカバーに入り、市原の一塁送球を捕球し、バッターアウト。

「「「ナイスー!」」」

 見事な投内連携。
 そのプレーにチームメイトたちからも称賛の声が上げられる。
 やはりその試合のトップバッターをアウトにできるかどうかはチームの士気に大きく関わるから、正直かなりほっとした。
 ちらっと横目にだいを見れば、彼女も安心したような顔を浮かべている。
 思ってることは、一緒みたいだな。

「おっけいワンウトッ!!」
 
 ベースカバーに入った佐々岡さんがマウンドまで市原にボールを手渡しに行った時、二人ともいい顔をしていた。

 まだ会って3回目の合同だけど、これもしかして、けっこういいんじゃね?

「あの子、みなみが狙われるの分かってたんでしょうね」
「え?」
黒澤さんサードが前に出てるのに気づいたバッターが、狙いをみなみファーストにしたのを察したんでしょう。みなみはお世辞にも守備は上手くないし、左バッターがスイングしてきたら、って怖さもまだ抜けないみたいだから」
「なるほど」
「たぶん赤城さんキャッチャーも、愛花セカンドもそれを察してた。赤城さんは一塁側に転がしやすいインコースのゆるめのボールを要求してたし、愛花もベースカバーが早かった」
「ほほう」
「ヒッティングされたら綺麗に打たれそうなボールだったけど、この子たちの読み勝ちですね」
「そうなぁ」

 スコアブックに今のプレーを記録しながら話すだいに、俺は雑な相槌しか打てなかった。
 だってなぁ、一番の驚きはそこまで見抜いただいだよな、南川さん。

 9人が試合に出ている関係で、ベンチには俺ら大人二人と控えの南川さんしかいない。萩原が遅刻してるせいだけど。

「彩香も今のプレー、ただアウトにしただけじゃないってよく覚えておくのよ」
「は、はいっ」

 しっかし、ほんとよく見てるなこいつ。
 俺は逆に赤城と市原の性格を知ってる分、たまたまだったんじゃねーかと思っちまってるよ……。
 うーん、あいつらもいつの間にか成長してるってこと、なのかな。

 俺があれこれ考えている間に、市原は2番バッターをショートゴロで打ち取り、3番バッターをセンターフライで打ち取って、初回を三者凡退に抑えていた。
 後続バッターに対する市原を、だいがじっと見てたのが気になったけど、まずは出だしは上々だな。

 攻守交替。市原や打球の処理をした真田さんや柴田を褒めつつ選手たちが戻ってくる。
 しかし全員汗だくだなー。
 見てる俺らですらそうなんだから、試合で動いてるこいつらは数倍きついだろうな。
 でもまだ時刻は午前10時半くらい。まだまだ気温は上がりそう。
 頼むからバテるなよー?

「集まらなくていい、座って聞けよー」

 攻撃前の円陣を組まず、俺はさっさと選手たちを座らせ、水分を取らせながら声をかけた。
 監督の前に集まろうとした月見ヶ丘の選手たちは少し戸惑っているが、とりあえずみんな座ってくれた。

「いいか? この試合で使うサインは盗塁だけな。今日は監督の俺が右手首の直後に胸を触ったら盗塁だ。いいか、右手首だぞ? 時計着けてないほうな?」

 言い方が馬鹿っぽくなるのはしょうがない。
 うちのチームにはけっこうな馬鹿がいるからな!

「市原、わかったか?」
「おっけー」
「右ってどっちだ?」
「え、こっち」
「俺のだよ!」

 一番理解してなさそうな奴に確認を取るのは、顧問の基本。
 俺は市原の前に立ち、両腕を突き出して右がどちらか選ばせようとしたのに、案の定市原は自分の右手を上げてきた。
 そのやり取りに選手たちから笑いが溢れる。だいも地味に口元抑えてるし。
 俺普段こんなのの相手してんだぜ? 苦労がわかったかー?

「あ、そういうことか! 右でしょ、ってことは、時計の方!」
「うん、俺はお前の鏡かな?」

 俺の左手を指さす市原。
 また選手たちが笑うが、だいの目は「え? この子大丈夫?」に変わっていた。
 すまんなだい、これが現実だ……!

「あとは、今日はバントのサインはなし。セーフティならいいけど、やっても1打席のみ。基本盗塁とヒッティングで点を取りに行くぞ」

 市原とのサイン確認を終えた俺の言葉に、月見ヶ丘のメンバーが戸惑いを見せる。
 だがだいが何も言わないということは、これは顧問同士の意見なのだろうと察した彼女たちは、頷いてくれた。

「バッティングセンスは試合の中でしか見えないものもあるから、今日は自分に出来る限りのバッティングをしてみてくれ」
「「「はいっ」」」
「よし、じゃあいこう!」

 ちなみにこの話は試合前にだいに伝えてある。
 なので、俺の指示が終わるまでだいは黙って俺の言葉を聞いてくれていた。
 俺の指示が終わると、個別に月見ヶ丘の選手たちに何かしらのアドバイスをしてたけどね。
 そこらへんは、色々言いたくなる顧問心だろう。

「初回! しまってこう!」

 相手の投球練習が終わり相手キャッチャーもいい声を出す。その声のあと、打席に柴田が向かう。
 ピッチャーのレベルは市原には及ばず、柴田自身と同等のレベルかな。
 このくらいのピッチャーに苦戦するわけにはいかない。
 とりあえず初回の攻撃で点取ってみせてくれよー?

 さぁ、頼むぜ切り込み隊長柴田
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