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第6章
作戦DAH
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「どれが美味しかったですか?」
「え、あー。全部美味かった、と思うけど」
駐車場へ戻る道すがら、俺はゆきむらとジャックと並んで歩いていた。
ぴょんの目線がまだ俺すらだいの隣を歩くことは許してくれず、だいとぴょんとゆめはお手洗いに寄ってから車に戻るとのこと。
俺さえもだいから離される状況はちょっと悲しい。
「たくさん食べる勝負ってなったから、正直どこのとかはあんまり覚えてねぇや」
「そうなんですか。じゃあ、また一緒に来ましょうね」
「うん、みんなでな」
「そうですか……」
「ゆっきーは相変わらずだね~~」
俺の言葉に少し残念そうにしたゆきむらを見て、ジャックが笑う。
「そいえばさ~~、ゼロやんあーすと仲良くなった~~?」
「ん、ああ。色々話したし、最初よりは」
「あーすさん、私に一緒に頑張ろうって言ってましたけど、あれはどういう意味なんですか?」
「え、あ、いや、何だったんだろうな」
「ほほ~~」
流石にあーすが昔だいのこと好きだったらしいよなんか、あーすのプライバシーに関わることだし俺の口からは言えない。
というかそんなこと言っても絶対にいいことがない。
そんな考えなので、俺は雑にゆきむらの言葉をはぐらかした。
ジャックは、たぶん何かを察してしまっただろうけど。
「だいは、もう大丈夫そう?」
「そだね~~。餃子食べて、みんなと話して落ち着いた感じだね~~。いや~~、でもあの細い身体であんなに食べるとは、びっくりだよ~~」
「だいさんが一番食べてましたよね」
「そだね~~、みんなが選んできたお店のもちょいちょいもらってたから、6皿分くらいは一人で食べてたんじゃないかな~~」
「マジかよ……」
あーすどころか、俺より全然食ってるやないか!
「美味しそうに食べてると、こっちもなんか食べれるような気がしましたね」
「そだね~~。でも、あんなに食べてもあの細さ、羨ましいというかなんというか~~」
「つくべきところにだけ、ついていってるのでしょうか……」
自分のお腹あたりに手をやるジャックと、胸に手をやるゆきむら。
俺の前でそれはリアクションに困るから、やめてください。
「まぁ、あいつが元気なったんだったらよかったわ。ありがとな」
「う~~ん、でもやっぱりあーすと二人で話すのは、避けてあげてね~~」
「なんでなんだ?」
「それはあたしの口からはちょっと言えないよ~~」
「え? まさか?」
「ゼロやんも、まだそっとしといてあげてね~~」
「いや、だから何で俺まで?」
「まぁまぁ我慢我慢~~。何もずっと秘密にするってわけじゃないから、とりあえず落ち着いて話せる夜までは待ってあげてね~~?」
「うーん……」
「そういえば、ゼロさんはリダにプロポーズの話聞けたんですか?」
「え? あ、そういや聞けてない、というかリダずっと餃子食ってから、あんまり話出来てないんだよな」
「じゃあ、次はその話聞かないとね~~。あーすのことはあたしたちにお任せあれ~~」
「お、おう……」
やはり釈然としない部分はあるんだけど、ジャックたちのおかげでだいが回復してきたのは感謝してるから、とりあえず俺はそこで引き下がることにした。
何故だいとあーすを避けさせるのか、だいの話をしてくれないのか、もやもやはするけど、リアルでリダと話す機会なんてそうそうないだろうから、リダの話は聞けるうちに聞いておきたい。
やはり既婚者という人生の先輩だし、教えを請いたい部分もある。
LAの話でしたいこともあるし、とりあえず今は、女性陣に従うしかないか。
そんなこんなで車に到着し、他の3人が来るまで待機する俺たち。
当たり前のようにゆきむらは助手席に座るけど、もはや何も言うまい。
「次の行先はどこなんですか?」
「ええとね、大谷資料館だって~~」
「あー、採掘場のやつか」
「ゼロさん博識ですね」
「昔テレビで見ただけだよ」
「こっからそんな離れてないみたいだし、ネットで画像見るにけっこうワクワクしそうだね~~。あ、ゆっきー住所ここね~~」
「はい」
3人が来るのを待つ間、ジャックが教えてくれた行先をゆきむらがナビに入力する。
ここからだと20分くらいで行けるみたいなので、たしかに行くにはちょうどよさそうである。
行先を確認しつつ、3人で話をしていると。
「やっぱ外はあちーな! アルコール全部抜けた気がする!」
「そんな簡単に抜けるの……?」
「ぴょんからしたらビール3杯はセーブしたほうだよね~」
ガラッとドアを開けて、後続の3人登場。
後列にだいを押し込めつつ、また隣にぴょんが座り、二列目のジャックの隣にゆめが着席した。
「次の作戦DAHを発表する!」
「作戦DAH?」
「何ですかそれ?」
「だいを・あーすから・離す、に決まってんだろ!」
最後列から響く、大きな声。
さっきみたいにこそこそした会話じゃない分ありがたいけど、その作戦いつ考えたんだおい。どこの芸能人だお前は。
「あーすなら、Eじゃないの~~?」
「細かいことは気にしない!」
ぴょんの言葉に俺だけでなくゆきむらもジャックも疑問だったみたいだけど、これはあれか、車に来るまで3人で話してたのかな。
「あたしとゆめであーすに付くから、だいはあーすから離れて、ゼロやんは嫁キングからあるべき父親像を学ぶこと!」
「あ、やっぱりリダにまだ聞けてないみたいだよ~~」
「なんだと!? この役立たずがっ!」
「やっ!? え、ひどくね!?」
「じゃあゼロやんはリダと嫁キングから話をしっかり聞くこと!」
「ちゃんとプロポーズ聞くんだよ~?」
「ジャックとゆっきーは各自遊撃部隊として行動せよ!」
なんだこのノリは、とツッコミたくなる気持ちはあったものの、ゆめの「プロポーズちゃんと学べよクズ」としか聞こえない発言に俺はツッコミもままならず。
しかしなんだ遊撃部隊って。俺たちは何と戦うんだ?
運転を開始しながら、俺はそんな疑問を抱く。
「りょ~~か~~い。ゆっきーは、だいとせんかんとどっちと歩く~~?」
「そうですね……せんかんさんはゼロさんと同じ職場なので、せんかんさんと話してみようと思います」
「おっけ~~。じゃあだいはあたしと歩こ~~」
「うん、ありがとね」
女性陣は、だいとあーすの関係についてみんな聞いてるんだろうけど、俺だけ仲間外れなのが寂しい限り。
しかしゆきむらと大和の組み合わせか、全然会話の想像付かないな。
あいつゆきむらに変なこと言わなきゃいいけど……。
そんな不安を覚えつつ、俺は見慣れぬ光景の中、車を走らせるのだった。
午後2時43分。
俺たちは大谷資料館の駐車場に到着した。
ここは大正時代から良質な石材の採掘が行われていた採石場跡地が有名とか、そんな場所。
昔テレビで見た感じ、何かRPGのダンジョンみたいな、けっこう幻想的な場所として公開されてるんだったかな。
ちなみに大和からは『受付で待つ』と連絡が来てたので、俺たちも車を降りて移動開始。
うだるような暑さの中、駐車場から坂道を上ると採掘場跡地の入口が見えてきた。
おお、ほんとにダンジョンの入口みたいだ。
ちょっとワクワク。
「あちー」
「でも中は涼しいらしいよ~~」
「そうなの~?」
「むしろちょっと寒いくらいかも~~」
「え、あたし寒いの苦手なんだけど!」
「たしかにその恰好じゃ寒さは耐えられないわよね」
「気合ですね」
「ゆっきースパルタだな~~」
一人先頭を歩く俺の後方からは、女性たちの会話が聞こえてくる。
とりあえず、大和たちはどこだろうか?
「っと、いたいた」
受付っぽい建物の入り口に立つ黒い男を発見。どうやら少しは胃も回復もしたのか、はつらつとした笑顔で俺たちに気づいた大和は手を振ってくれていた。
驚異の回復力。あーすに胃薬もらったとしたって、そんな即効性ねえよな、普通。
「お待たせ~」
だいを最後方に置きつつ、先頭の俺の隣にやってきたゆめがみんなに声をかける。
「おうっ! 中は少し寒いけど、テンション上がるはずだからそれで乗り切ろう!」
「寒いの苦手だったら、ブランケットも借りれるからねっ」
「借りる借りる!」
「私も借りようかな」
精神論をかましてきたリダをさらっと流しつつ、丁寧な説明をくれた嫁キングの言葉に女性陣が反応し、どうやらみんなブランケットを借りるようで。
「男は気合だろ」
「え、僕も?」
「あたりめーだろ!」
男性陣で一番線の細いあーすも借りようとしたのは、大和に止められていた。
若干パワハラ臭するけど、とりあえずあーす相手だし無視無視。
そしてみんな入館料を払い終えたところで。
「あーす、わたしと回ろ~」
「えっ、ゆ、ゆめちゃんっ!?」
「あたしもあーすと色々話したいな!」
早速ゆめが動いた。
ごく自然な流れで、あーすの腕を抱くようにくっつくゆめ。それに続いてぴょんが反対側に立ち、あーすの肩に手を置く。
さすがにぴょんはゆめみたいにはできなかったみたいだけど、ああなってはもうあーすには何もできまい。あの二人の突破力は他の追随を許さないからな。
ちょっと慌てた顔になりつつも、そのままあーすは入口の方に引っ張られていった。
「ゆめってあんな積極的なんだねっ」
「いやぁ、若いっていいな!」
傍から見れば、可愛い子がイケメンにくっつきに行った光景だったせいか、ゆめの本性を知らないリダ夫婦がそんな風に言うけど、違いますよ?
あれはゆめの演技力ですよ?
全く恐ろしい女性である。
「せんかんさん、一緒に回ってもらっていいですか?」
「え? 俺?」
「はい。学校の話とか、教えて欲しいので」
「え、俺より倫の方がいいんじゃ?」
「ゼロさんは、任務があるのでダメです」
「に、任務? まぁ、そう言うならいいけど」
「では、よろしくお願いします」
「お、おう」
続いてゆきむらが大和の隣に立ち、いつもの空気で大和にエスコートを依頼する。
ちょっと慌てた様子の大和は、俺に何か言いたげに視線を送ってきたので、俺はとりあえず黙って頷いた。
存分にゆきむらの天然を満喫してきてくれ。
「じゃあ、俺はさっきあんまり話せなかったから、リダたちと話がてら一緒に行っていいかな?」
「おう! いいぞ!」
「あ、仁のこと抱っこするっ?」
「えっ、あっ、いいの?」
「もちろんだよっ。あ、でも落としたりしないでね?」
「しないっしないっ」
最後尾をだいにして、あーすたちと距離を取るために、続いて俺はリダ夫婦に話しかけた。
その流れで、仁くんが俺に渡される。
「だぁー」
おお、動く! う、動くぞこいつ!
丁寧に丁寧に抱きかかえようとするが、やはりちょっと緊張気味になる俺。
めちゃくちゃ可愛いけど、もぞもぞと動く仁くんに俺はちょっと悪戦苦闘。
「パパの予行演習ね」
「え?」
「あたしたちはもうみんな抱っこさせてもらったしね~~」
「今日は色んな人に抱っこしてもらえて楽しいな! 仁!」
不意を突くように言われただいの言葉に、思わずドキッとしてしまった。
でもたしかにな! 子育ては夫婦でやるものだし、その練習か!
その時のママは、だいがいいなぁなんて思いつつ、やる気をいれた俺は仁くんをしっかりと抱きかかえる。
ブランケットにくるんで、なんとなくおさまりがいいポジションを見つけ、準備完了である。
「似合ってるわよ」
「あ、ありがとう?」
そう言ってくれただいは、優しそうな顔で笑いかけてくれた。
「あ、でも危ないからこれは外しとくね」
「あ、そっか。さんきゅ」
そう言って俺の首に腕を回しただいが、仁くんがタッチしたりしていた俺のネックレスを外してくれる。
久々の近距離に、思わず俺は顔が赤くなってしまったかもしれない。
ってか、リダたちにはまだ言ってないんだけど、これ、バレちゃったかな!?
リダ夫婦もジャックも、何も言わずにこやかに俺たちを見守ってくれてたけど……。
そして俺から取ったネックレスを自分のと重ねるように2つつけるだいに、ちょっとほっこり。
しかし短いけれど、久々にだいと話せてちょっと嬉しい。
うん、やっぱり俺はこいつが好きなんだなぁ。
「じゃ、行くかっ!」
「おう」
リダの声に応え、俺は仁くんを抱きかかえつつ、リダ夫婦と一緒に採掘場内へと向かうのだった。
「え、あー。全部美味かった、と思うけど」
駐車場へ戻る道すがら、俺はゆきむらとジャックと並んで歩いていた。
ぴょんの目線がまだ俺すらだいの隣を歩くことは許してくれず、だいとぴょんとゆめはお手洗いに寄ってから車に戻るとのこと。
俺さえもだいから離される状況はちょっと悲しい。
「たくさん食べる勝負ってなったから、正直どこのとかはあんまり覚えてねぇや」
「そうなんですか。じゃあ、また一緒に来ましょうね」
「うん、みんなでな」
「そうですか……」
「ゆっきーは相変わらずだね~~」
俺の言葉に少し残念そうにしたゆきむらを見て、ジャックが笑う。
「そいえばさ~~、ゼロやんあーすと仲良くなった~~?」
「ん、ああ。色々話したし、最初よりは」
「あーすさん、私に一緒に頑張ろうって言ってましたけど、あれはどういう意味なんですか?」
「え、あ、いや、何だったんだろうな」
「ほほ~~」
流石にあーすが昔だいのこと好きだったらしいよなんか、あーすのプライバシーに関わることだし俺の口からは言えない。
というかそんなこと言っても絶対にいいことがない。
そんな考えなので、俺は雑にゆきむらの言葉をはぐらかした。
ジャックは、たぶん何かを察してしまっただろうけど。
「だいは、もう大丈夫そう?」
「そだね~~。餃子食べて、みんなと話して落ち着いた感じだね~~。いや~~、でもあの細い身体であんなに食べるとは、びっくりだよ~~」
「だいさんが一番食べてましたよね」
「そだね~~、みんなが選んできたお店のもちょいちょいもらってたから、6皿分くらいは一人で食べてたんじゃないかな~~」
「マジかよ……」
あーすどころか、俺より全然食ってるやないか!
「美味しそうに食べてると、こっちもなんか食べれるような気がしましたね」
「そだね~~。でも、あんなに食べてもあの細さ、羨ましいというかなんというか~~」
「つくべきところにだけ、ついていってるのでしょうか……」
自分のお腹あたりに手をやるジャックと、胸に手をやるゆきむら。
俺の前でそれはリアクションに困るから、やめてください。
「まぁ、あいつが元気なったんだったらよかったわ。ありがとな」
「う~~ん、でもやっぱりあーすと二人で話すのは、避けてあげてね~~」
「なんでなんだ?」
「それはあたしの口からはちょっと言えないよ~~」
「え? まさか?」
「ゼロやんも、まだそっとしといてあげてね~~」
「いや、だから何で俺まで?」
「まぁまぁ我慢我慢~~。何もずっと秘密にするってわけじゃないから、とりあえず落ち着いて話せる夜までは待ってあげてね~~?」
「うーん……」
「そういえば、ゼロさんはリダにプロポーズの話聞けたんですか?」
「え? あ、そういや聞けてない、というかリダずっと餃子食ってから、あんまり話出来てないんだよな」
「じゃあ、次はその話聞かないとね~~。あーすのことはあたしたちにお任せあれ~~」
「お、おう……」
やはり釈然としない部分はあるんだけど、ジャックたちのおかげでだいが回復してきたのは感謝してるから、とりあえず俺はそこで引き下がることにした。
何故だいとあーすを避けさせるのか、だいの話をしてくれないのか、もやもやはするけど、リアルでリダと話す機会なんてそうそうないだろうから、リダの話は聞けるうちに聞いておきたい。
やはり既婚者という人生の先輩だし、教えを請いたい部分もある。
LAの話でしたいこともあるし、とりあえず今は、女性陣に従うしかないか。
そんなこんなで車に到着し、他の3人が来るまで待機する俺たち。
当たり前のようにゆきむらは助手席に座るけど、もはや何も言うまい。
「次の行先はどこなんですか?」
「ええとね、大谷資料館だって~~」
「あー、採掘場のやつか」
「ゼロさん博識ですね」
「昔テレビで見ただけだよ」
「こっからそんな離れてないみたいだし、ネットで画像見るにけっこうワクワクしそうだね~~。あ、ゆっきー住所ここね~~」
「はい」
3人が来るのを待つ間、ジャックが教えてくれた行先をゆきむらがナビに入力する。
ここからだと20分くらいで行けるみたいなので、たしかに行くにはちょうどよさそうである。
行先を確認しつつ、3人で話をしていると。
「やっぱ外はあちーな! アルコール全部抜けた気がする!」
「そんな簡単に抜けるの……?」
「ぴょんからしたらビール3杯はセーブしたほうだよね~」
ガラッとドアを開けて、後続の3人登場。
後列にだいを押し込めつつ、また隣にぴょんが座り、二列目のジャックの隣にゆめが着席した。
「次の作戦DAHを発表する!」
「作戦DAH?」
「何ですかそれ?」
「だいを・あーすから・離す、に決まってんだろ!」
最後列から響く、大きな声。
さっきみたいにこそこそした会話じゃない分ありがたいけど、その作戦いつ考えたんだおい。どこの芸能人だお前は。
「あーすなら、Eじゃないの~~?」
「細かいことは気にしない!」
ぴょんの言葉に俺だけでなくゆきむらもジャックも疑問だったみたいだけど、これはあれか、車に来るまで3人で話してたのかな。
「あたしとゆめであーすに付くから、だいはあーすから離れて、ゼロやんは嫁キングからあるべき父親像を学ぶこと!」
「あ、やっぱりリダにまだ聞けてないみたいだよ~~」
「なんだと!? この役立たずがっ!」
「やっ!? え、ひどくね!?」
「じゃあゼロやんはリダと嫁キングから話をしっかり聞くこと!」
「ちゃんとプロポーズ聞くんだよ~?」
「ジャックとゆっきーは各自遊撃部隊として行動せよ!」
なんだこのノリは、とツッコミたくなる気持ちはあったものの、ゆめの「プロポーズちゃんと学べよクズ」としか聞こえない発言に俺はツッコミもままならず。
しかしなんだ遊撃部隊って。俺たちは何と戦うんだ?
運転を開始しながら、俺はそんな疑問を抱く。
「りょ~~か~~い。ゆっきーは、だいとせんかんとどっちと歩く~~?」
「そうですね……せんかんさんはゼロさんと同じ職場なので、せんかんさんと話してみようと思います」
「おっけ~~。じゃあだいはあたしと歩こ~~」
「うん、ありがとね」
女性陣は、だいとあーすの関係についてみんな聞いてるんだろうけど、俺だけ仲間外れなのが寂しい限り。
しかしゆきむらと大和の組み合わせか、全然会話の想像付かないな。
あいつゆきむらに変なこと言わなきゃいいけど……。
そんな不安を覚えつつ、俺は見慣れぬ光景の中、車を走らせるのだった。
午後2時43分。
俺たちは大谷資料館の駐車場に到着した。
ここは大正時代から良質な石材の採掘が行われていた採石場跡地が有名とか、そんな場所。
昔テレビで見た感じ、何かRPGのダンジョンみたいな、けっこう幻想的な場所として公開されてるんだったかな。
ちなみに大和からは『受付で待つ』と連絡が来てたので、俺たちも車を降りて移動開始。
うだるような暑さの中、駐車場から坂道を上ると採掘場跡地の入口が見えてきた。
おお、ほんとにダンジョンの入口みたいだ。
ちょっとワクワク。
「あちー」
「でも中は涼しいらしいよ~~」
「そうなの~?」
「むしろちょっと寒いくらいかも~~」
「え、あたし寒いの苦手なんだけど!」
「たしかにその恰好じゃ寒さは耐えられないわよね」
「気合ですね」
「ゆっきースパルタだな~~」
一人先頭を歩く俺の後方からは、女性たちの会話が聞こえてくる。
とりあえず、大和たちはどこだろうか?
「っと、いたいた」
受付っぽい建物の入り口に立つ黒い男を発見。どうやら少しは胃も回復もしたのか、はつらつとした笑顔で俺たちに気づいた大和は手を振ってくれていた。
驚異の回復力。あーすに胃薬もらったとしたって、そんな即効性ねえよな、普通。
「お待たせ~」
だいを最後方に置きつつ、先頭の俺の隣にやってきたゆめがみんなに声をかける。
「おうっ! 中は少し寒いけど、テンション上がるはずだからそれで乗り切ろう!」
「寒いの苦手だったら、ブランケットも借りれるからねっ」
「借りる借りる!」
「私も借りようかな」
精神論をかましてきたリダをさらっと流しつつ、丁寧な説明をくれた嫁キングの言葉に女性陣が反応し、どうやらみんなブランケットを借りるようで。
「男は気合だろ」
「え、僕も?」
「あたりめーだろ!」
男性陣で一番線の細いあーすも借りようとしたのは、大和に止められていた。
若干パワハラ臭するけど、とりあえずあーす相手だし無視無視。
そしてみんな入館料を払い終えたところで。
「あーす、わたしと回ろ~」
「えっ、ゆ、ゆめちゃんっ!?」
「あたしもあーすと色々話したいな!」
早速ゆめが動いた。
ごく自然な流れで、あーすの腕を抱くようにくっつくゆめ。それに続いてぴょんが反対側に立ち、あーすの肩に手を置く。
さすがにぴょんはゆめみたいにはできなかったみたいだけど、ああなってはもうあーすには何もできまい。あの二人の突破力は他の追随を許さないからな。
ちょっと慌てた顔になりつつも、そのままあーすは入口の方に引っ張られていった。
「ゆめってあんな積極的なんだねっ」
「いやぁ、若いっていいな!」
傍から見れば、可愛い子がイケメンにくっつきに行った光景だったせいか、ゆめの本性を知らないリダ夫婦がそんな風に言うけど、違いますよ?
あれはゆめの演技力ですよ?
全く恐ろしい女性である。
「せんかんさん、一緒に回ってもらっていいですか?」
「え? 俺?」
「はい。学校の話とか、教えて欲しいので」
「え、俺より倫の方がいいんじゃ?」
「ゼロさんは、任務があるのでダメです」
「に、任務? まぁ、そう言うならいいけど」
「では、よろしくお願いします」
「お、おう」
続いてゆきむらが大和の隣に立ち、いつもの空気で大和にエスコートを依頼する。
ちょっと慌てた様子の大和は、俺に何か言いたげに視線を送ってきたので、俺はとりあえず黙って頷いた。
存分にゆきむらの天然を満喫してきてくれ。
「じゃあ、俺はさっきあんまり話せなかったから、リダたちと話がてら一緒に行っていいかな?」
「おう! いいぞ!」
「あ、仁のこと抱っこするっ?」
「えっ、あっ、いいの?」
「もちろんだよっ。あ、でも落としたりしないでね?」
「しないっしないっ」
最後尾をだいにして、あーすたちと距離を取るために、続いて俺はリダ夫婦に話しかけた。
その流れで、仁くんが俺に渡される。
「だぁー」
おお、動く! う、動くぞこいつ!
丁寧に丁寧に抱きかかえようとするが、やはりちょっと緊張気味になる俺。
めちゃくちゃ可愛いけど、もぞもぞと動く仁くんに俺はちょっと悪戦苦闘。
「パパの予行演習ね」
「え?」
「あたしたちはもうみんな抱っこさせてもらったしね~~」
「今日は色んな人に抱っこしてもらえて楽しいな! 仁!」
不意を突くように言われただいの言葉に、思わずドキッとしてしまった。
でもたしかにな! 子育ては夫婦でやるものだし、その練習か!
その時のママは、だいがいいなぁなんて思いつつ、やる気をいれた俺は仁くんをしっかりと抱きかかえる。
ブランケットにくるんで、なんとなくおさまりがいいポジションを見つけ、準備完了である。
「似合ってるわよ」
「あ、ありがとう?」
そう言ってくれただいは、優しそうな顔で笑いかけてくれた。
「あ、でも危ないからこれは外しとくね」
「あ、そっか。さんきゅ」
そう言って俺の首に腕を回しただいが、仁くんがタッチしたりしていた俺のネックレスを外してくれる。
久々の近距離に、思わず俺は顔が赤くなってしまったかもしれない。
ってか、リダたちにはまだ言ってないんだけど、これ、バレちゃったかな!?
リダ夫婦もジャックも、何も言わずにこやかに俺たちを見守ってくれてたけど……。
そして俺から取ったネックレスを自分のと重ねるように2つつけるだいに、ちょっとほっこり。
しかし短いけれど、久々にだいと話せてちょっと嬉しい。
うん、やっぱり俺はこいつが好きなんだなぁ。
「じゃ、行くかっ!」
「おう」
リダの声に応え、俺は仁くんを抱きかかえつつ、リダ夫婦と一緒に採掘場内へと向かうのだった。
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「家庭教師です。住まわせてください」
突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。
桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。
偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。
咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。
距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。
「データじゃなくて、私がそう思っています」
嘘をついているような顔じゃなかった。
偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。
不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。
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