9ライブズナイフ

犬宰要

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 さすがに義腕と義手をとってハルミンに装着なんてどう見ても出来るものじゃないと思った。人間はロボットじゃないし、パーツの付け替えとかできるわけじゃないからだ。
「あ、さすがにこれを着けるわけじゃないですよ。そのアビリティ・スキルが追加されたのでハルミンに合ったものが出てくると思うんです」
 僕は自分のアビリティ・スキルを表示させ、義腕や義手があるところを探した。
「アビリティ・スキルの特殊・自動化の中に義体覧が見れるようになってます」
 ツバサが興奮気味に言ったので、僕はそこを確かめるとたしかに今まで見えなかったのが見えるようになっているのがわかった。すぐに表示させ、知りたいという意識で見ていくと、説明文が表示された。
 
 失った箇所を補うためのスキル。肉体の時と比べはるかに強く、精度および耐久性が高い。また感覚もあるため、実質的な強化となる。
 
 強化、強化ね……僕は書かれている言葉に苛立ちを覚えた。まるでそう仕向けられたような気がしたからだ。
 
「ヨーちゃん?」
 マナチが心配して僕の顔を伺っていた。
「大丈夫だ、大丈夫だよ」
 僕は自然と怖い顔をしていたようだった。
「ツバサ、ありがとう。これでハルミンは多分大丈夫なのかな……?」
「た、多分」
 不安げな言葉がツバサから発せられたものの、僕は大丈夫だろうと思った。今まで自分たちに合ったものが召喚されてきた。きっとこの義腕や義手だって、ハルミンに合った物になるはずだ。
 
 +
 
 それなりに広い部屋の中で他に何かないか調べていて、もう調べる事がなく、突如アビリティ・スキルがそれ以上追加される事もないまま数十分過ぎた。
 
 ハルミンからうめき声がしたので、近寄るとハルミンが目覚めていた。
 
「おはよ……はは、今度は両腕かぁ……みんなごめん、ごめんね。私はこ、ここ、ここまでだよ」
 彼女は泣きはじめた。
「片目失って、両腕失って、私、私、私さ、私が何したっていうの……ははっ、うえ、うえぇぇぇぇん!!」
 マナチが寝ている彼女を覆いかぶさるように抱いた。
「大丈夫だよ! ずっと一緒だよ! 大丈夫だよ!」
「もう無理だよ! 両腕ないのに、ひぐっ! どう、どうやって! みん、なと、戦うの!? うぁぁぁん!!」
 僕はツバサを見て頷いた。
「ハルミン! アビリティ・スキルの特殊・自動化を見てみてくれ、そこに義腕と義手があるはずだ。うまく行くかわからないけれど、多分、いやきっとうまくいく! 見てくれ!」
 僕が言うとマナチがゆっくりとハルミンから離れ、ハルミンの目から流れている涙を彼女が拭ってあげた。
 
 ハルミンは唇を震わせながら、彼女だけが見えるアビリティ・スキルを表示させて、何かを見ていた。
「こ、これ、これね。ちょっとやってみる」
 泣きながら彼女は義腕と義手を召喚したのだろうか、一瞬だけ彼女の顔が歪んだ。
「い、いったぁぁい!!」
 痛みを訴えかけた後に、彼女の両腕と両手が復活した。元の彼女の大きさの両腕と両手だった。ただ、違うのは、皮膚に線のようなものが描かれていた。
「え、嘘!?」
 ハルミンは自分の両腕と両手を触っては自由に動かしていた。グーパーと手を開いては閉じたりした。
「え、これどういうこと?」
 そして首を傾げた。
「つ、ツバサ説明を頼む」
 僕はツバサに投げた。こういう時、もっとオタク的な知識があれば説明できたんだろうなと思った。説明を投げられたツバサはハルミンに義腕と義手について、どういうものか説明した。壁にかかっている義腕と義手を見せながら説明し、アビリティ・スキルが追加された事を話しをしていった。
 ハルミンにわかりやすく説明したのか、彼女は頷きながら自分の両腕と両手が元に戻ったわけではないことを理解していった。
 
「でも触ってる感触や触られてるってわかるけれど、これ本当の腕と手じゃないんだ……機械の腕と手かぁ、でもまだ戦える。あのよくわからない奴は絶対に、絶対に許さない」
 彼女の顔が憤怒に染まっていた。
「あの、その、義腕と義手にして筋力が変わったと思うのですが、確かめた方がいいと思います」
 ツバサが怒り顔のハルミンにおどおどしながら話を続けていた。
「あ、ごめんごめん。うん、そうだよね、ちょっと銃を持って――」
 ハルミンは何か考え、二つの銃を召喚した。
 それはムッツーとタッツーの銃だった。どちらも片手で持ち、右手にはタッツーの軽量機関銃RPK-Tカスタム、左手にはアサルトライフルAK-Mカスタムを携えていた。
「全然、重くない。二人の銃が持てる……持てた」
「う、嘘……え?」
 ツバサが驚いていた。僕も正直、驚いた。義腕と義手にするだけで持てるものなのか?
 
 僕は再度アビリティ・スキルを表示させ、特殊・自動化の義体の部分を知りたいと意識した。すると身体の一部を義腕や義手などに換装した場合、骨格や筋肉など通常の肉体部分に負荷がないように改造強化されると表示された。
 さらに他に人工筋肉と人体強化のアビリティ・スキルが追加されていた。僕はそれを確かめてみると義体を解放し、使用することで解放される事がわかり、それが自動的にハルミンに適応されたと知った。
 
「つ、ツバサとジュリ、ちょっと話の途中ですまない。アビリティ・スキルが追加されてる。特殊・自動化の中に人工筋肉と人体強化が追加されている」
「「えっ」」
 
 この人工筋肉と人体強化で僕は強くなれると思った。

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