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入学~一年目 さぁ恋、なぐり愛
02_入学したけど、退学になりたい。
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学園長の長い話が終わり、ユウヴィーはハッと改めて学園長の見ると整えられたヒゲに白髪交じりのオールバックの筋肉質なイイおじ様だった事に気づいた。ばっちりと視線が合い、学園長からニコリと微笑まれ、何か知らないが好感度が上がったと思うのだった。
単純に、学園長の話の最中に真剣、かつ真面目に聞いてるように見ていたからである。光の魔法を使う特待生は違うな、という認識を持たれたのだ。本人は気づいていない。
その後、新入生の男子代表挨拶があり、壇上に上がっていったのは並木道で出会った金髪の彼だった。
「はじめましての人も、はじめましてじゃない人も、私はアライン・フェルグリーヴ・サンウォーカー。サンウォーカー国の王太子です――」
並木道で出会った彼はやはり王太子であり、本来なら不敬にあたるようなやり取りだった事にやってしまった事に頭痛がするユウヴィーだった。だが同時にここは乙女ゲーの世界だと感じ始めていた。
(あのイケメン、どことなく私が好きだった推しに似ているような……ううっ、ダメだ。前世の記憶と今の私の記憶がごっちゃになって気持ち悪い。でも、推しに似てるって何か嫌な予感がする)
気持ち悪さがあるものの、姿勢を崩さず、可能な限り表情に出さないで思い出そうとしていた。ここは各国の王族と貴族が集う場所であり、彼女は身の振り方については散々言われたからだ。
(そういえば、知ってる乙女ゲーで鳥と戯れる推しが最初に出てくるのがあったっけ……あれ? そういえば、それって主人公の使い魔じゃ……)
そこで思い出すのであった、あの並木道での一連の流れが犬の使い魔ではなく、小鳥が本来の使い魔だということに。そして、本来の使い魔の小鳥はとうの昔に狩りをし、討ち取り、食したことを。
(し、しまった……聖鳥を焼き鳥にして食してしまったーーッ!!)
表情に出さないものの、背中は汗びっしょりであった。
(貧乏子爵家、しかも田舎だから、猟をして野鳥やらウサギを狩っていたけれど、それで珍しい鳥を見つけて狩ったんだった――ッ!!)
頭を抱えそうになる過去の事を思い出しながらも、あの時食べた時のおいしさの感動も思い出したのだった。
(あの鳥って聖鳥じゃない!! ってことはこの世界はロマンティックフロントライン~愛を貫く真実の物語~の世界じゃない!! 略してロマフロぉぉ!! いやぁぁぁ!!!! 私がヒロイン――ッ!!)
辛うじて、入学式中なので強張った顔して聞いているフリをしていたが、これが個室だったら叫んでいただろう。乙女ゲームの世界に転生してしまったことを自覚するのだった。
グッドエンド全てが、ヒロインが死亡する。正確にはヒロインと結ばれる相手と共に心中する事で世界が平和になる乙女ゲームだった。殉愛、世界のために二人が愛の力で犠牲になり、平和になり伝説となるというネタバレ厳禁の乙女ゲームだった。なお特別十八禁止版もあり、没頭連動型VR拡張パックも発売されるほど、人気を博したものだった。
(あわ、あわわ……)
推しの王太子による男子生徒代表挨拶が頭に入ってこないユウヴィーだった。
気持ちをなんとか切り替えて、自分だけが転生者ならまだ助かる道があると考えるようにした。
(自分だけが転生者なら、このゲームは全員に嫌われれば死ななくて済んだ、はず……オープニングで第一フラグを回収してしまったのなら、まだ間に合う……よね?)
冷や汗ダラッダラにかきながら、顔面蒼白気味になっていた。答えのない質問を自分に投げかけている間に、男子生徒代表の挨拶が終わり、あたりに拍手が鳴り響き、ハッとするユウヴィーだった。
続いて、女性生徒代表挨拶が始まり、そこでユウヴィーは悪役令嬢が壇上に上がるのを思い出し、目で追っていく、そこで確信したのだった。悪役令嬢である彼女も転生者だと知るのだった。
乙女ゲームでは、使い魔の黒猫ではなく、黒豹であるのにただのデブ猫を引きつ入れていたからだ。そして、ユウヴィーは彼女と目が合うと勝利を確信したような笑みをされた。
(ちくしょう!! あの悪役令嬢も転生者だぁぁぁ!!)
相手もこのゲームを知っているとユウヴィーは直感したのだった。どうしたらいいのか、という答えがすぐに出るわけでもない事を悶々と考えているうちに入学式は滞りなく終わるのだった。
+
入学式が終わり、ユウヴィーは自室へ向かった。そこにはすでに荷物が入れられており、爵位が低いため同じ位、または特待生の令嬢と同室である。
「私はハープ・マスカリッドよ。伯爵家なんだけれども、特待生の事は知っているわ。これからよろしくね!」
部屋に入るとすでに荷物の整理をしている伯爵家の令嬢のハープが挨拶をしてきた。ユウヴィーは貴族流の挨拶をし、名乗る。
「身もふたもなく言うけれど、あなたは特待生だから相手を選び放題だと思うのよ。だから、私が狙う相手は絶対に譲ってよね」
「え、譲るというのは?」
「決まってるじゃない、玉の輿の相手よ! あなただって親から言われてるでしょ? なので良さそうな雰囲気になったり、相手から好意があったり、そういうのは情報共有して行きましょ!」
(あ、これゲームで相手の好感度がおおよそ教えてくれる親友キャラだ)
あの悪役令嬢も転生者だろうし、協力は多分できないだろう。そうなってくるとどうやって生き残るか、うまくこの子から情報を聞き出して行動しなければいけないとユウヴィーは思うのだった。
ユウヴィーは素早く、頭を切り替えた。
(多分、きっとなんとかなるはず!)
単純に、学園長の話の最中に真剣、かつ真面目に聞いてるように見ていたからである。光の魔法を使う特待生は違うな、という認識を持たれたのだ。本人は気づいていない。
その後、新入生の男子代表挨拶があり、壇上に上がっていったのは並木道で出会った金髪の彼だった。
「はじめましての人も、はじめましてじゃない人も、私はアライン・フェルグリーヴ・サンウォーカー。サンウォーカー国の王太子です――」
並木道で出会った彼はやはり王太子であり、本来なら不敬にあたるようなやり取りだった事にやってしまった事に頭痛がするユウヴィーだった。だが同時にここは乙女ゲーの世界だと感じ始めていた。
(あのイケメン、どことなく私が好きだった推しに似ているような……ううっ、ダメだ。前世の記憶と今の私の記憶がごっちゃになって気持ち悪い。でも、推しに似てるって何か嫌な予感がする)
気持ち悪さがあるものの、姿勢を崩さず、可能な限り表情に出さないで思い出そうとしていた。ここは各国の王族と貴族が集う場所であり、彼女は身の振り方については散々言われたからだ。
(そういえば、知ってる乙女ゲーで鳥と戯れる推しが最初に出てくるのがあったっけ……あれ? そういえば、それって主人公の使い魔じゃ……)
そこで思い出すのであった、あの並木道での一連の流れが犬の使い魔ではなく、小鳥が本来の使い魔だということに。そして、本来の使い魔の小鳥はとうの昔に狩りをし、討ち取り、食したことを。
(し、しまった……聖鳥を焼き鳥にして食してしまったーーッ!!)
表情に出さないものの、背中は汗びっしょりであった。
(貧乏子爵家、しかも田舎だから、猟をして野鳥やらウサギを狩っていたけれど、それで珍しい鳥を見つけて狩ったんだった――ッ!!)
頭を抱えそうになる過去の事を思い出しながらも、あの時食べた時のおいしさの感動も思い出したのだった。
(あの鳥って聖鳥じゃない!! ってことはこの世界はロマンティックフロントライン~愛を貫く真実の物語~の世界じゃない!! 略してロマフロぉぉ!! いやぁぁぁ!!!! 私がヒロイン――ッ!!)
辛うじて、入学式中なので強張った顔して聞いているフリをしていたが、これが個室だったら叫んでいただろう。乙女ゲームの世界に転生してしまったことを自覚するのだった。
グッドエンド全てが、ヒロインが死亡する。正確にはヒロインと結ばれる相手と共に心中する事で世界が平和になる乙女ゲームだった。殉愛、世界のために二人が愛の力で犠牲になり、平和になり伝説となるというネタバレ厳禁の乙女ゲームだった。なお特別十八禁止版もあり、没頭連動型VR拡張パックも発売されるほど、人気を博したものだった。
(あわ、あわわ……)
推しの王太子による男子生徒代表挨拶が頭に入ってこないユウヴィーだった。
気持ちをなんとか切り替えて、自分だけが転生者ならまだ助かる道があると考えるようにした。
(自分だけが転生者なら、このゲームは全員に嫌われれば死ななくて済んだ、はず……オープニングで第一フラグを回収してしまったのなら、まだ間に合う……よね?)
冷や汗ダラッダラにかきながら、顔面蒼白気味になっていた。答えのない質問を自分に投げかけている間に、男子生徒代表の挨拶が終わり、あたりに拍手が鳴り響き、ハッとするユウヴィーだった。
続いて、女性生徒代表挨拶が始まり、そこでユウヴィーは悪役令嬢が壇上に上がるのを思い出し、目で追っていく、そこで確信したのだった。悪役令嬢である彼女も転生者だと知るのだった。
乙女ゲームでは、使い魔の黒猫ではなく、黒豹であるのにただのデブ猫を引きつ入れていたからだ。そして、ユウヴィーは彼女と目が合うと勝利を確信したような笑みをされた。
(ちくしょう!! あの悪役令嬢も転生者だぁぁぁ!!)
相手もこのゲームを知っているとユウヴィーは直感したのだった。どうしたらいいのか、という答えがすぐに出るわけでもない事を悶々と考えているうちに入学式は滞りなく終わるのだった。
+
入学式が終わり、ユウヴィーは自室へ向かった。そこにはすでに荷物が入れられており、爵位が低いため同じ位、または特待生の令嬢と同室である。
「私はハープ・マスカリッドよ。伯爵家なんだけれども、特待生の事は知っているわ。これからよろしくね!」
部屋に入るとすでに荷物の整理をしている伯爵家の令嬢のハープが挨拶をしてきた。ユウヴィーは貴族流の挨拶をし、名乗る。
「身もふたもなく言うけれど、あなたは特待生だから相手を選び放題だと思うのよ。だから、私が狙う相手は絶対に譲ってよね」
「え、譲るというのは?」
「決まってるじゃない、玉の輿の相手よ! あなただって親から言われてるでしょ? なので良さそうな雰囲気になったり、相手から好意があったり、そういうのは情報共有して行きましょ!」
(あ、これゲームで相手の好感度がおおよそ教えてくれる親友キャラだ)
あの悪役令嬢も転生者だろうし、協力は多分できないだろう。そうなってくるとどうやって生き残るか、うまくこの子から情報を聞き出して行動しなければいけないとユウヴィーは思うのだった。
ユウヴィーは素早く、頭を切り替えた。
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