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入学~一年目 さぁ恋、なぐり愛
05_悪役令嬢エリーレイド・パテンター・サンシェードは転生者である。
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エリーレイド・パテンター・サンシェード、彼女は公爵家の令嬢である。公爵家のため自室が割り当てられており、従者もいる。広めの部屋がいくつかあり、くつろげるソファで彼女は座り、苦々しい表情を浮かべながら二足で器用に立っている太った黒豹の使い魔を見ていた。
「使い魔の名前がスナギモってなんなの? 思わず吹いてしまったわ! あれ間違いなく転生者じゃない!! ていうか、鳥は? 聖鳥じゃなくて、どうして犬? いやあれは狼?」
ヒロインが並木道で王太子に会い、そこで「ブフォッ!」と吹いてしまったのは彼女である。
「我が主、この攻略本によれば聖鳥セレティが使い魔が、あの場面でこの国の王太子とあられる方と戯れると記載されているのですが……誤植でしょうか?」
使い魔は流暢なイケメンボイスで喋り、エリーレイドに質問をしていた。まるまるとデブ太った黒豹はエリーレイドの使い魔のマーベラスという名前だった。エリーレイドはマーベちゃんと呼び、一日一回は必ず吸っている。
そんなマーベラスが持っているのは、彼女が記憶がうろ覚えになる前に綴った一冊の本である。通称攻略本。
「ヒロインも転生者だったわ、事前に調べても出てこなかったのも、貴族名がデフォルトエマノンって何よ。初期設定がデフォルト、エマノンってnoname、名無しを逆から読んだって事じゃない!!」
「我が主……」
使い魔のマーベラスは取り乱しているご主人様であるエリーレイドを見て、狼狽していた。
「攻略本にものってないじゃない、って書いたの私だけど!」
彼女が前世の記憶を思い出したのは、幼少の頃に王太子と顔合わせした時だった。その後、難なく顔合わせを終わらせた後に、王妃になるべく教育をされる中でこの世界がドはまりした乙女ゲーの世界だと知り、頭抱えたのだ。
新たに詰め込まれる王妃教育と年齢と共に薄れ行く記憶を紙に綴って残し、対策を講じてきたのだ。ヒロインと違い、早めに気づけた事によって行動も早かった。
ヒロインの情報は貴族名簿と各領地から調べまくったが、光の魔法を使える情報やヒロインに繋がりそうな情報はなかった。貴族名簿も完璧なものではなかったのだ、なにせ登記情報を一括管理してるデジタル機器がない魔法の世界なのだ。何よりも、乙女ゲームの主人公の名前が決められている事の方が少ない。声優から自分の名前、またはいくつかあるデフォルトの名前から選択するとその名前が音声付きで呼ばれるのだ。
「はぁ、事前に監視できなかったのは痛かった。でもとりあえずフラグは立てれたから問題ないわね」
エリーレイドの前世は渡辺葉菜(わたなべはな)という名前で営業職だった。激務の末、過労死。
「今後は影魔法で見張っていけばいいわ、抜け漏れは仕方ないもの」
彼女は光の魔法と対のような影の魔法を使うのだった。相手は光の魔法を使うため、影とは相性が抜群に悪く、監視していることがバレる可能性もある。
「我が主、バレてしまう可能性は?」
「マーベちゃん、バレてもいいのよ。だって私は悪役令嬢だし」
マーベラスは、この攻略本の管理を任されていた。その内容からこの乙女ゲームの悪役令嬢がどうなるのかというのも知っていた。そのため、マーベラスはマーベラスでご主人様に幸せになってもらいたいと思っていたのだった。
「何辛気臭い顔してるの? 大丈夫よ、今までの努力の成果とこれからの努力次第よ。前世で培ってきた事と数々の発明や根回しや社交界での立ち回り、超がんばったからヒロインのハッピーエンドでザマァされても私がハッピーエンドよ! おーっほっほっほっほ!」
高笑いを上げるエリーレイドは悪役令嬢として型が決まっていた。もちろん事前にロールプレイングと呼ばれる練習をマーベラスとやってきたのだ。
「それでも皆目見当がつかないのが瘴気問題よね。どういう仕組みなのかしら……」
幼少の頃に前世の記憶が蘇ったとはいえ、乙女ゲームの世界観設定では瘴気について詳しく語られる事が無かった。エリーレイドは幼少の頃から瘴気問題を解決すれば、本編である学園生活編が変わると考えていたのだった。
影の魔法は、瘴気と相性がとても悪いのも起因していた。影の魔法では瘴気を浄化できなく、そのため、エリーレイドが幼少の頃に鍛えた魔法は瘴気の前では無力に等しかったのだ。
「くぅ、やはり歯がゆいわ。これが乙女ゲームの強制力ね、どうあってもどれかのルートに歩ませようとしてる気がするわ」
彼女の前世は仕事の合間、休みの日、乙女ゲーム、少女漫画、ロマンス小説などを嗜むオタクだった。ドヤ顔で使い魔のマーベラスに言うさまは決まっていた。
なんだかんだで彼女は悪役令嬢を楽しんでいる風でもあった。
「この乙女ゲームのシナリオ強制力から、どちらかが確実に殉愛、つまりは死ぬわ。でも悪役令嬢の私の方はヒロインをくっつけるチャンスは何回もある。勝ったわ! これは勝ち確定ね!」
余裕があるのも、悪役令嬢の婚約者は入学式前にヒロインが会った王太子であるアライン・フェルグリーヴ・サンウォーカーなのだ。
「最初のフラグは立ってる。あとは私が悪役令嬢として立ち回ればいいだけよ」
彼女は幼少の頃から前世の記憶を取り戻していたが、精神年齢だけは前世の過労死した時とそう変わらなかった。
「我が主、人の心というのはそう簡単に――」
「いい、マーベちゃん。乙女っていうのはね、イケメンに弱いのよ!」
つまり、彼女は残念だった。
「使い魔の名前がスナギモってなんなの? 思わず吹いてしまったわ! あれ間違いなく転生者じゃない!! ていうか、鳥は? 聖鳥じゃなくて、どうして犬? いやあれは狼?」
ヒロインが並木道で王太子に会い、そこで「ブフォッ!」と吹いてしまったのは彼女である。
「我が主、この攻略本によれば聖鳥セレティが使い魔が、あの場面でこの国の王太子とあられる方と戯れると記載されているのですが……誤植でしょうか?」
使い魔は流暢なイケメンボイスで喋り、エリーレイドに質問をしていた。まるまるとデブ太った黒豹はエリーレイドの使い魔のマーベラスという名前だった。エリーレイドはマーベちゃんと呼び、一日一回は必ず吸っている。
そんなマーベラスが持っているのは、彼女が記憶がうろ覚えになる前に綴った一冊の本である。通称攻略本。
「ヒロインも転生者だったわ、事前に調べても出てこなかったのも、貴族名がデフォルトエマノンって何よ。初期設定がデフォルト、エマノンってnoname、名無しを逆から読んだって事じゃない!!」
「我が主……」
使い魔のマーベラスは取り乱しているご主人様であるエリーレイドを見て、狼狽していた。
「攻略本にものってないじゃない、って書いたの私だけど!」
彼女が前世の記憶を思い出したのは、幼少の頃に王太子と顔合わせした時だった。その後、難なく顔合わせを終わらせた後に、王妃になるべく教育をされる中でこの世界がドはまりした乙女ゲーの世界だと知り、頭抱えたのだ。
新たに詰め込まれる王妃教育と年齢と共に薄れ行く記憶を紙に綴って残し、対策を講じてきたのだ。ヒロインと違い、早めに気づけた事によって行動も早かった。
ヒロインの情報は貴族名簿と各領地から調べまくったが、光の魔法を使える情報やヒロインに繋がりそうな情報はなかった。貴族名簿も完璧なものではなかったのだ、なにせ登記情報を一括管理してるデジタル機器がない魔法の世界なのだ。何よりも、乙女ゲームの主人公の名前が決められている事の方が少ない。声優から自分の名前、またはいくつかあるデフォルトの名前から選択するとその名前が音声付きで呼ばれるのだ。
「はぁ、事前に監視できなかったのは痛かった。でもとりあえずフラグは立てれたから問題ないわね」
エリーレイドの前世は渡辺葉菜(わたなべはな)という名前で営業職だった。激務の末、過労死。
「今後は影魔法で見張っていけばいいわ、抜け漏れは仕方ないもの」
彼女は光の魔法と対のような影の魔法を使うのだった。相手は光の魔法を使うため、影とは相性が抜群に悪く、監視していることがバレる可能性もある。
「我が主、バレてしまう可能性は?」
「マーベちゃん、バレてもいいのよ。だって私は悪役令嬢だし」
マーベラスは、この攻略本の管理を任されていた。その内容からこの乙女ゲームの悪役令嬢がどうなるのかというのも知っていた。そのため、マーベラスはマーベラスでご主人様に幸せになってもらいたいと思っていたのだった。
「何辛気臭い顔してるの? 大丈夫よ、今までの努力の成果とこれからの努力次第よ。前世で培ってきた事と数々の発明や根回しや社交界での立ち回り、超がんばったからヒロインのハッピーエンドでザマァされても私がハッピーエンドよ! おーっほっほっほっほ!」
高笑いを上げるエリーレイドは悪役令嬢として型が決まっていた。もちろん事前にロールプレイングと呼ばれる練習をマーベラスとやってきたのだ。
「それでも皆目見当がつかないのが瘴気問題よね。どういう仕組みなのかしら……」
幼少の頃に前世の記憶が蘇ったとはいえ、乙女ゲームの世界観設定では瘴気について詳しく語られる事が無かった。エリーレイドは幼少の頃から瘴気問題を解決すれば、本編である学園生活編が変わると考えていたのだった。
影の魔法は、瘴気と相性がとても悪いのも起因していた。影の魔法では瘴気を浄化できなく、そのため、エリーレイドが幼少の頃に鍛えた魔法は瘴気の前では無力に等しかったのだ。
「くぅ、やはり歯がゆいわ。これが乙女ゲームの強制力ね、どうあってもどれかのルートに歩ませようとしてる気がするわ」
彼女の前世は仕事の合間、休みの日、乙女ゲーム、少女漫画、ロマンス小説などを嗜むオタクだった。ドヤ顔で使い魔のマーベラスに言うさまは決まっていた。
なんだかんだで彼女は悪役令嬢を楽しんでいる風でもあった。
「この乙女ゲームのシナリオ強制力から、どちらかが確実に殉愛、つまりは死ぬわ。でも悪役令嬢の私の方はヒロインをくっつけるチャンスは何回もある。勝ったわ! これは勝ち確定ね!」
余裕があるのも、悪役令嬢の婚約者は入学式前にヒロインが会った王太子であるアライン・フェルグリーヴ・サンウォーカーなのだ。
「最初のフラグは立ってる。あとは私が悪役令嬢として立ち回ればいいだけよ」
彼女は幼少の頃から前世の記憶を取り戻していたが、精神年齢だけは前世の過労死した時とそう変わらなかった。
「我が主、人の心というのはそう簡単に――」
「いい、マーベちゃん。乙女っていうのはね、イケメンに弱いのよ!」
つまり、彼女は残念だった。
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