6 / 46
入学~一年目 さぁ恋、なぐり愛
05_悪役令嬢エリーレイド・パテンター・サンシェードは転生者である。
しおりを挟む
エリーレイド・パテンター・サンシェード、彼女は公爵家の令嬢である。公爵家のため自室が割り当てられており、従者もいる。広めの部屋がいくつかあり、くつろげるソファで彼女は座り、苦々しい表情を浮かべながら二足で器用に立っている太った黒豹の使い魔を見ていた。
「使い魔の名前がスナギモってなんなの? 思わず吹いてしまったわ! あれ間違いなく転生者じゃない!! ていうか、鳥は? 聖鳥じゃなくて、どうして犬? いやあれは狼?」
ヒロインが並木道で王太子に会い、そこで「ブフォッ!」と吹いてしまったのは彼女である。
「我が主、この攻略本によれば聖鳥セレティが使い魔が、あの場面でこの国の王太子とあられる方と戯れると記載されているのですが……誤植でしょうか?」
使い魔は流暢なイケメンボイスで喋り、エリーレイドに質問をしていた。まるまるとデブ太った黒豹はエリーレイドの使い魔のマーベラスという名前だった。エリーレイドはマーベちゃんと呼び、一日一回は必ず吸っている。
そんなマーベラスが持っているのは、彼女が記憶がうろ覚えになる前に綴った一冊の本である。通称攻略本。
「ヒロインも転生者だったわ、事前に調べても出てこなかったのも、貴族名がデフォルトエマノンって何よ。初期設定がデフォルト、エマノンってnoname、名無しを逆から読んだって事じゃない!!」
「我が主……」
使い魔のマーベラスは取り乱しているご主人様であるエリーレイドを見て、狼狽していた。
「攻略本にものってないじゃない、って書いたの私だけど!」
彼女が前世の記憶を思い出したのは、幼少の頃に王太子と顔合わせした時だった。その後、難なく顔合わせを終わらせた後に、王妃になるべく教育をされる中でこの世界がドはまりした乙女ゲーの世界だと知り、頭抱えたのだ。
新たに詰め込まれる王妃教育と年齢と共に薄れ行く記憶を紙に綴って残し、対策を講じてきたのだ。ヒロインと違い、早めに気づけた事によって行動も早かった。
ヒロインの情報は貴族名簿と各領地から調べまくったが、光の魔法を使える情報やヒロインに繋がりそうな情報はなかった。貴族名簿も完璧なものではなかったのだ、なにせ登記情報を一括管理してるデジタル機器がない魔法の世界なのだ。何よりも、乙女ゲームの主人公の名前が決められている事の方が少ない。声優から自分の名前、またはいくつかあるデフォルトの名前から選択するとその名前が音声付きで呼ばれるのだ。
「はぁ、事前に監視できなかったのは痛かった。でもとりあえずフラグは立てれたから問題ないわね」
エリーレイドの前世は渡辺葉菜(わたなべはな)という名前で営業職だった。激務の末、過労死。
「今後は影魔法で見張っていけばいいわ、抜け漏れは仕方ないもの」
彼女は光の魔法と対のような影の魔法を使うのだった。相手は光の魔法を使うため、影とは相性が抜群に悪く、監視していることがバレる可能性もある。
「我が主、バレてしまう可能性は?」
「マーベちゃん、バレてもいいのよ。だって私は悪役令嬢だし」
マーベラスは、この攻略本の管理を任されていた。その内容からこの乙女ゲームの悪役令嬢がどうなるのかというのも知っていた。そのため、マーベラスはマーベラスでご主人様に幸せになってもらいたいと思っていたのだった。
「何辛気臭い顔してるの? 大丈夫よ、今までの努力の成果とこれからの努力次第よ。前世で培ってきた事と数々の発明や根回しや社交界での立ち回り、超がんばったからヒロインのハッピーエンドでザマァされても私がハッピーエンドよ! おーっほっほっほっほ!」
高笑いを上げるエリーレイドは悪役令嬢として型が決まっていた。もちろん事前にロールプレイングと呼ばれる練習をマーベラスとやってきたのだ。
「それでも皆目見当がつかないのが瘴気問題よね。どういう仕組みなのかしら……」
幼少の頃に前世の記憶が蘇ったとはいえ、乙女ゲームの世界観設定では瘴気について詳しく語られる事が無かった。エリーレイドは幼少の頃から瘴気問題を解決すれば、本編である学園生活編が変わると考えていたのだった。
影の魔法は、瘴気と相性がとても悪いのも起因していた。影の魔法では瘴気を浄化できなく、そのため、エリーレイドが幼少の頃に鍛えた魔法は瘴気の前では無力に等しかったのだ。
「くぅ、やはり歯がゆいわ。これが乙女ゲームの強制力ね、どうあってもどれかのルートに歩ませようとしてる気がするわ」
彼女の前世は仕事の合間、休みの日、乙女ゲーム、少女漫画、ロマンス小説などを嗜むオタクだった。ドヤ顔で使い魔のマーベラスに言うさまは決まっていた。
なんだかんだで彼女は悪役令嬢を楽しんでいる風でもあった。
「この乙女ゲームのシナリオ強制力から、どちらかが確実に殉愛、つまりは死ぬわ。でも悪役令嬢の私の方はヒロインをくっつけるチャンスは何回もある。勝ったわ! これは勝ち確定ね!」
余裕があるのも、悪役令嬢の婚約者は入学式前にヒロインが会った王太子であるアライン・フェルグリーヴ・サンウォーカーなのだ。
「最初のフラグは立ってる。あとは私が悪役令嬢として立ち回ればいいだけよ」
彼女は幼少の頃から前世の記憶を取り戻していたが、精神年齢だけは前世の過労死した時とそう変わらなかった。
「我が主、人の心というのはそう簡単に――」
「いい、マーベちゃん。乙女っていうのはね、イケメンに弱いのよ!」
つまり、彼女は残念だった。
「使い魔の名前がスナギモってなんなの? 思わず吹いてしまったわ! あれ間違いなく転生者じゃない!! ていうか、鳥は? 聖鳥じゃなくて、どうして犬? いやあれは狼?」
ヒロインが並木道で王太子に会い、そこで「ブフォッ!」と吹いてしまったのは彼女である。
「我が主、この攻略本によれば聖鳥セレティが使い魔が、あの場面でこの国の王太子とあられる方と戯れると記載されているのですが……誤植でしょうか?」
使い魔は流暢なイケメンボイスで喋り、エリーレイドに質問をしていた。まるまるとデブ太った黒豹はエリーレイドの使い魔のマーベラスという名前だった。エリーレイドはマーベちゃんと呼び、一日一回は必ず吸っている。
そんなマーベラスが持っているのは、彼女が記憶がうろ覚えになる前に綴った一冊の本である。通称攻略本。
「ヒロインも転生者だったわ、事前に調べても出てこなかったのも、貴族名がデフォルトエマノンって何よ。初期設定がデフォルト、エマノンってnoname、名無しを逆から読んだって事じゃない!!」
「我が主……」
使い魔のマーベラスは取り乱しているご主人様であるエリーレイドを見て、狼狽していた。
「攻略本にものってないじゃない、って書いたの私だけど!」
彼女が前世の記憶を思い出したのは、幼少の頃に王太子と顔合わせした時だった。その後、難なく顔合わせを終わらせた後に、王妃になるべく教育をされる中でこの世界がドはまりした乙女ゲーの世界だと知り、頭抱えたのだ。
新たに詰め込まれる王妃教育と年齢と共に薄れ行く記憶を紙に綴って残し、対策を講じてきたのだ。ヒロインと違い、早めに気づけた事によって行動も早かった。
ヒロインの情報は貴族名簿と各領地から調べまくったが、光の魔法を使える情報やヒロインに繋がりそうな情報はなかった。貴族名簿も完璧なものではなかったのだ、なにせ登記情報を一括管理してるデジタル機器がない魔法の世界なのだ。何よりも、乙女ゲームの主人公の名前が決められている事の方が少ない。声優から自分の名前、またはいくつかあるデフォルトの名前から選択するとその名前が音声付きで呼ばれるのだ。
「はぁ、事前に監視できなかったのは痛かった。でもとりあえずフラグは立てれたから問題ないわね」
エリーレイドの前世は渡辺葉菜(わたなべはな)という名前で営業職だった。激務の末、過労死。
「今後は影魔法で見張っていけばいいわ、抜け漏れは仕方ないもの」
彼女は光の魔法と対のような影の魔法を使うのだった。相手は光の魔法を使うため、影とは相性が抜群に悪く、監視していることがバレる可能性もある。
「我が主、バレてしまう可能性は?」
「マーベちゃん、バレてもいいのよ。だって私は悪役令嬢だし」
マーベラスは、この攻略本の管理を任されていた。その内容からこの乙女ゲームの悪役令嬢がどうなるのかというのも知っていた。そのため、マーベラスはマーベラスでご主人様に幸せになってもらいたいと思っていたのだった。
「何辛気臭い顔してるの? 大丈夫よ、今までの努力の成果とこれからの努力次第よ。前世で培ってきた事と数々の発明や根回しや社交界での立ち回り、超がんばったからヒロインのハッピーエンドでザマァされても私がハッピーエンドよ! おーっほっほっほっほ!」
高笑いを上げるエリーレイドは悪役令嬢として型が決まっていた。もちろん事前にロールプレイングと呼ばれる練習をマーベラスとやってきたのだ。
「それでも皆目見当がつかないのが瘴気問題よね。どういう仕組みなのかしら……」
幼少の頃に前世の記憶が蘇ったとはいえ、乙女ゲームの世界観設定では瘴気について詳しく語られる事が無かった。エリーレイドは幼少の頃から瘴気問題を解決すれば、本編である学園生活編が変わると考えていたのだった。
影の魔法は、瘴気と相性がとても悪いのも起因していた。影の魔法では瘴気を浄化できなく、そのため、エリーレイドが幼少の頃に鍛えた魔法は瘴気の前では無力に等しかったのだ。
「くぅ、やはり歯がゆいわ。これが乙女ゲームの強制力ね、どうあってもどれかのルートに歩ませようとしてる気がするわ」
彼女の前世は仕事の合間、休みの日、乙女ゲーム、少女漫画、ロマンス小説などを嗜むオタクだった。ドヤ顔で使い魔のマーベラスに言うさまは決まっていた。
なんだかんだで彼女は悪役令嬢を楽しんでいる風でもあった。
「この乙女ゲームのシナリオ強制力から、どちらかが確実に殉愛、つまりは死ぬわ。でも悪役令嬢の私の方はヒロインをくっつけるチャンスは何回もある。勝ったわ! これは勝ち確定ね!」
余裕があるのも、悪役令嬢の婚約者は入学式前にヒロインが会った王太子であるアライン・フェルグリーヴ・サンウォーカーなのだ。
「最初のフラグは立ってる。あとは私が悪役令嬢として立ち回ればいいだけよ」
彼女は幼少の頃から前世の記憶を取り戻していたが、精神年齢だけは前世の過労死した時とそう変わらなかった。
「我が主、人の心というのはそう簡単に――」
「いい、マーベちゃん。乙女っていうのはね、イケメンに弱いのよ!」
つまり、彼女は残念だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる