転生令嬢は恋愛しま戦 かかって恋、愛てになるわ!

犬宰要

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二年目 恋よ、愛てにとって不足はない

28 瘴気の原因

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 その日はユウヴィー自身の不甲斐なさと光の魔法が万能ではないことを痛感させられるはじまりだった。エリーレイドから研究区画に行くように朝一に言われた。
「ご自身の力を過信しない事、肝に銘じておきなさい」
 ユウヴィーは研究区画に行くと浄化したはずの動物たちがまた瘴気に汚染されていたのだった。
 
「浄化したはず……なのに、どうして?」
 
 ついこぼれてしまった言葉に、研究区画の人も左右に頭を振っていた。
 
「どういうことだ? ちゃんと浄化されたはずではないのか?」
 困惑しているユウヴィーに追い打ちをかけるように声をかけていた。
 
「わからないけれど、この動物そのものに瘴気の原因があるわけじゃない事はわかる。私の浄化はその体内にある瘴気をなくすものだから、外部から外からやってきているとしか……」
「くっ……」
 リンクは自分たちが使い魔を欲しいという理由で持ってこさせたことが彼の国特有の瘴気を学園にもたらしてしまった事に、後悔をにじみ出させていた。
 
 リンクはひとまず、館に戻る事になった。
 
 ユウヴィーはエリーレイドなら前世の記憶を思い出しているのなら、何か知っていて解決策の糸口を見つけられるかもしれないと思い会う事にした。
 
+
 
「それで私の所に聞きに来たわけね……」
「お願いします、何か知っていたら教えてください!」
「……前世の記憶があろうとなかろうと聖女の器、か」
「?」
 ぼそっとエリーレイドが言うがユウヴィーには聞こえてなかった。
「ハマト国とサンウォーカー国では文化が違います。私たちが住んでいた家と彼らの家は様式が異なります。昔の日本の一軒家みたいな家と洋風な家とでは、虫が家に入ってくるのは当たり前の生活をしています。ユウヴィー、今回の瘴気は虫です」
「えっ、虫?」
 ユウヴィーはハッとした表情で顔を上げたが、それでも腑に落ちなかった。浄化をする時にそんな虫を見ていないのだ。蚊のような虫だったら飛んでいるのがわかる。ハエなども衛生上、研究区画の人は見つけ次第殺しているくらいだ。
 エリーレイドは不機嫌になりながら、言う事をいったのでその場から去っていった。
「ありがとうございます!」
 
(虫……)
 
 ユウヴィーは虫と言われてもピンとこなかったのだった。
 数時間後、浄化した人たちも含め新たに瘴気汚染を発症したという連絡が届き、向かった。
 
 再発症した人たちと新たに発症した人たちをユウヴィーは会って浄化をし、聞き込みをしていった。リンクも責任を感じてなのか、その場に居たのだった。
 そこで発症している部分に掻いたような痕があったのだった。
(蚊なの?)
 
「掻いたような痕があるのですが、蚊とかに刺されたりしました?」
 浄化した人に聞いてみる事にした。
「いやぁ、なんか瘴気に汚染されたあとに気づいたら痒くて……」
(刺された直後じゃなくて時間差、気づかなかったって事?)
「ありがとうございます」
「いやいや浄化してくださり、こちらこそありがとうごじざいます」
 
 ユウヴィーは運び屋の人やハマト国の人を中心に瘴気に汚染されていたのが気にかかっていた。彼らの服装は手足が露出しており、サンウォーカー国や他の国と違って軽装だった。そして、一様にその部分が瘴気の汚染をみせていた。
 
(虫……虫……)
「あのここに来るまでの道中って野営をされたりしたんですか?」
「陸路だから、野営はしつつこの学園に向かったのは間違いないが、それがどうしたんだ?」
 ユウヴィーに聞かれたリンクは何を当たり前のことと思っていた。
「リンク皇子と彼らの野営は同じですか?」
「いや、わからないな」
 二人は彼らに野営時の事を聞き、ユウヴィーは虫の正体を知ることになった。彼らもその虫を知ってはいるものの、瘴気として見えていない程、小さかったのだ。
 
「ダニがどうかしたのか?」
 リンクは気にも留めていなかった。視認できるサイズではなく、見つけたとしても瘴気に汚染されているのかわからない。わからない程、小さいのなら瘴気に汚染されていると思わないからだ。
 
(まさか、ダニだったとは……植物性の野営道具だったり、江戸時代のような生活様式風ならば、あり得るのってことなのね)
 
「瘴気の汚染の正体はダニなのがわかったのよ」
「な、んだって……」
 
 ダニが寄生しており、瘴気に汚染されたダニは小さく瘴気そのものが視認が難しかった。よく目を凝らしても隠れてしまう為、見つけにくい。ユウヴィーが使った浄化が範囲ではなく、瘴気汚染した身体そのものに浄化しただけだったので、ダニが浄化されてなかったのだった。
 リンクはあたりを見合し、瘴気が視認できない事と目を凝らさないと見えないダニ、見えたとしてもすぐに見えなくなる小さなダニに顔を引きつらせていた。
 
「それじゃ、この学園に見えない瘴気に汚染されたダニを解き放ったというのか……私が……」
 
(ってことは、うちのスナギモにもダニが寄生しているんじゃ?)
 
 ユウヴィーは使い魔のスナギモの毛をかき分けて確かめてみると、ダニがいるのを発見する。だが、すぐに毛の奥へと隠れていった。
 
「浄化ぁぁ!」
 
 全身に鳥肌が立つような気持ち悪さがユウヴィーに襲い、咄嗟に使い魔のスナギモを覆うように浄化を行ったのだった。
 
(き、気持ち悪かった……)
 
 再度、使い魔のスナギモの体毛をかき分けるとそこには元気なダニがまだいたのだった。
 
(ああっ!! あああーっ!!)
 
「大丈夫かユウヴィー!?」
「え、ええ、大丈夫よ」
 
 すぐさま飛びのき、心の中で悲鳴を上げたのだった。青白い顔をしながら、浄化をしても瘴気に汚染されたダニが汚染されていないダニと接触してしまえば止められないことを悟るのだった。また浄化してもダニを死滅させることができないことに、悔しさを感じるのだった。
 
「リンク皇子、ダニについて調べましょう。何か手はあるはず……」
「わ、わかった。協力しよう」
 
+
 
 ユウヴィーとリンクはダニについて調べる為に、図書館に向かった。なぜサンウォーカー国にダニがそこまで深刻な状態で現れていないのか、使い魔のスナギモと生活しているのになぜ自分はダニに噛まれていないのか、わからなかったからだ。
 光の魔法を使えるとしても、蚊には刺されるし、虫だって寄ってきたりする。ダニに噛まれないなんてことはないため、ユウヴィーには理解できなかったのだった。
 
(火の魔法が弱点なのはわかるけれど、火傷してしまう。普段の生活で火の魔法を使ってダニをどうこうするような文化はうちの国にはないのよね。なぜハマト国以外ではダニ問題がないのだろう?)
 
 ユウヴィーとリンクは答えが出ず、図書館をあとにし自室に戻ったのだった。
 
 今日一日に疲れをシャワーを浴び、アロマオイルを身体に塗った。いつものようにアロマオイルのお香を焚いて、使い魔のスナギモについているダニを確認しようとした。
(あれ、ダニがいない?)
 毛並みを確かめていくと、そこにはダニの死骸があったのだった。
 
(んんん?)
 
 意味がわからず、次の日に研究区画に行き、ダニについて話をするとアロマオイルがダニを死滅させるものだと知るのだった。普段、アロマオイルのお香は臭い消しと虫よけとして使われている事から、一般的だという事だった。
 
「我がハマト国では、それは使われていないな……普段、熱い湯につかってダニなどを死滅させていたが、そもそも瘴気に汚染されたダニに寄生されたとし、湯に使ったところでダニは死滅しても、感染したままでは……ははっ、何たることだ」
 リンクは涙していた。
 
「アロマオイルのお香で寄生される前に、死滅させてしまえるなら、他の国で症状が出なかったわけか……ユウヴィーありがとう、ありがとう」
 
「皇子、おめでとうございます。これで我が国のスニノイ・ココニアの問題が解決しますね」
 ハマト国から派遣されたがりっがりで目の下にクマがこびりついた人も涙していた。
 
(これで、これで解決なのかしら……?)
 
 彼女の中にまだ言い寄れぬ不安が拭いされていなかったのだった。

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