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二年目 恋よ、愛てにとって不足はない

43 悪役令嬢のエリーレイドの疑問

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 ユウヴィーと喧嘩みたいな事をし、その後にアラインに近況を聞かれたので、ちょっと口論になったけれども大したことはないと答えたのが原因でアラインがユウヴィーに接触するとは思わなかったエリーレイドだった。また、サロンでのやり取りで最後にユウヴィーが怒りながら退出しているのが噂としてあったため、アラインが調べていたというのは予想外と彼女は思っていたのだった。
 
「まさか殿下がちゃっかり監視したりしていたとはね……あとユウヴィーが王太子が推し、だったなんてね。とはいえ、その前に他の攻略候補とくっつく事もあるでしょ」
 
 誰に言うまでもなく、使い魔のマーベラスは静かに主の独り言に耳を傾けていた。だらしなくソファに寝ころびながらのエリーレイドは主として品位は現在無かった。
 
「推しと恋愛は別、か」
 
 エリーレイドの前世では、一度だけではなく、何度も夢女として抱いた妄想はたくさんある。そのためユウヴィーが言っていた推しと恋愛は別という意味は理解できなかった。相手は二次元であり、リアルではない。たとえ、芸能人といったリアルであったとしてもそういったシチュエーションを妄想し、夢女の妄想をし、活力を得たりする。
 
 思い焦がれるのは自由であり、他人に迷惑をかけるものではない。
 
「そういえば、途中から盗聴が出来なくなったのよね。何の話をしていたのかしら? もしかして情事に至ったとか?」
「我が主、この攻略本によれば段階を踏まないとそういったシチュエーションに突入されないと記載されています」
「そうなのよねぇ」
 
 光の魔法、浄化によって盗聴ができなくなったからその後どんな話をしたかわからない。乙女ゲームの強制力があるため、そういった十八禁止な行為はさすがにすっ飛ばして行われる事はない。
 
「となると何の話をしていたのか、という事が気になるわね。何か書いてあったっけ?」
「我が主、この攻略本によれば悪役令嬢であるエリーレイドの数々の嫌がらせ行為に対しての吐露と記載されています。そしてその件について王太子殿下は耳を傾けて、真実がどうかご自身で確かめるべく行動し、近日中にエリーレイド嬢の身辺操作の内に、詰問されると記載されています。……これらの情報はのちに王太子殿下からあの時は、と回想シーン、とやらで語られると補足で書いてあります」
 
「となると、近日中にアライン殿下から呼び出されるからその時にわかるわね。ありがとうマーベちゃん」
 
 これから起こる出来事を記載した自著攻略本は彼女にとって大事な指針であり、予言の書だった。それでも精神的な気苦労は減るわけでもなく、定期的に使い魔のマーベラスを吸う習慣は無くなるわけではなかった。
 
「マーベちゃん、ちょっとここに乗って」
「……はい」
 
 マーベラスはソファの上で寝転がっているエリーレイドの顔に寝そべるのだった。
 
――すーはーすーはー
 
 +
 
 数日後、アラインの行動がやけに活発的で何かに投資していた事業や新たに別事業も立ち上げなどしていたのを知る。
 
「いったいユウヴィーは何を話したのかしら?」
 
「我が主、この攻略本によるとアライン殿下が何か執心になるといった記載はなく、恋愛時には盲目に一時的になるものの国に対して、王族として、責務を全うされる人物と記載されています」
 
 器用に本を開き、そこに書かれている人物別詳細ページを読み上げるマーベラスだった。
 
 呼び出される前にエリーレイド自身の近辺調査などが行われると思い、彼女はどんと構えつつもアライン殿下の同行を盗み見ていた。だが、一向に自身の調査がはじまるどころか、原作では知らない行動をしているため、エリーレイドは困惑していた。
 
「うーん、よくわからないから経過観察しておきましょう。もしかしたら欺くため、というのが目的かもしれないわ」
「我が主、かしこまりました」
 
 さらに数日経ち、それが欺くためではなく本腰を入れた趣味趣向を布教行為と新たな事業発展させる行為だと知ったのだった。
 
「私の見間違いではなければ、あれは動物の耳やしっぽを販売してるお店よね」
「我が主、間違いありません」
「ねぇ、あのカフェって動物の耳としっぽをつけて、接客してるのは幻ではないわよね」
「我が主、現実です」
 
 アラインの手腕により、店舗、グッズの販路拡大は瞬く間に成され認知しだしたのだった。諸外国にも興味がある層が一定数いたのか、そこへ通う貴族も存在する事を確認したのだった。また、エリーレイドの元に各国の知り合いからそのグッズについて婚約者なのだから融通してくれないか、という連絡が届くほどだった。
 
「なにこれ? どういうことなの??」
 
 理解が出来なく、前世の記憶には無かった出来事に彼女は思考停止したのだった。

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