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前世
5.学園の入学式
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アンジェリーヌが12歳になった時、現王妃様が身罷られ、国王陛下は、その後ただ一人でクリストファー殿下をお育てになられました。
といっても、側近がしっかりと脇を固め、侍従も侍女も、適任者がその仕事を全うしていたから、一人で育てたわけではない。
そして、その頃には、アンジェリーヌは国政をすでに補佐していた。
なぜならクリストファー殿下は、誰の目からもお世辞にも賢王と言い難く、もっとも程遠い存在であった。たとえて言うならば、中の下ぐらい?
おそらくクリストファー殿下も国王と王妃様の間に生まれなければ、もっと自由に好きな道を歩めただろうに、賢王の呼び名が高い父親を持ってプレッシャーは計り知れない。
その結果、クリストファー殿下がやらなければいけない仕事のしわ寄せが一気にアンジェリーヌへと流れてしまう。
お妃教育だけでも大変なのに、その上、国政の問題の是非の判断までしなくてはならなくなる。
そんな時、国王陛下は、よくアンジェリーヌの元を訪ねてくださる。もちろんそれは、娘として気を遣っていただけているわけだけど、当時のアンジェリーヌはまだ幼くて、本当はどういった意味で訪ねてこられるかなどの真意を考えたことすらなかっただけかもしれない。案外、あわよくばという下心で訪ねてきてくださっていたのかもしれない。
王妃様を失くされてから、一人の側妃も身近に置くことをなさらないから、きっとお寂しかったのだろうか?
というか、バカ息子の存在がそうさせなかったのではないかと思う。
もし、バカ息子以外の息子ができてしまい、バカ息子を廃嫡せねばならないときが来た時、生きている王妃の発言力が大きくなる。
それだけ亡き王妃様のことを愛していらっしゃったからなのではと思う。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
時は流れ、学園に入学する頃には、すっかりバカのいっちょ前が出来上がってしまっていた。
クリストファー殿下は、バカの癖にプライドだけは高く俺様気取りでなんでもアンジェリーヌに命令してくる。
アンジェリーヌは、この頃にはすでに王宮を退去し、マキャベリ公爵家のタウンハウスから学園に通うことになったのであるが、その通学経路についてもイチャモンを付けてくる有り様で、救いようがないバカに成長していた。
王宮を退去するには、条件があり、お妃教育の終了を意味する。成人した年頃の男女が一つ屋根の下に暮らすということに問題があると判断され、結婚式が済むまでの3年間は別居状態に入るということ。
その間に実家に戻り、花嫁修業らしきことをせよという意味なのだろうが、亡き王妃様は、手芸に励んでいらっしゃったとかで、アンジェリーヌも里帰りしてからは、いそいそと刺繍にレース編みに、とせっせと手を動かしている。
それにもしもの時のために、調理も覚えておいた方がいいということで、料理長に頼み、厨房で簡単なお料理の手ほどきを受けている。
それにいざとなった時、王子を連れて逃げ出さないといけないことがあるかもしれないから剣術の稽古と乗馬の訓練と余念がない。
幼いとき、あれほど乗馬がしたいとせがんでも、はしたないと言われ、させてもらえなかったのに、今では、乗馬服まで誂えてもらって、ドレスでの横乗りから騎乗まで、何でも乗りこなすようになっている。
そうして準備万端調って、入学式を迎えた時、新入生代表の挨拶がクリストファー王太子殿下のはずが、急遽、アンジェリーヌにお鉢が回ってきてしまい、面食らったことこの上なし。
アンジェリーヌはいつものことだと、半ばあきらめているが、学園長は、どうしても譲れないらしく、そのあたりの折衝から丸投げされてしまったのだ。
といっても、側近がしっかりと脇を固め、侍従も侍女も、適任者がその仕事を全うしていたから、一人で育てたわけではない。
そして、その頃には、アンジェリーヌは国政をすでに補佐していた。
なぜならクリストファー殿下は、誰の目からもお世辞にも賢王と言い難く、もっとも程遠い存在であった。たとえて言うならば、中の下ぐらい?
おそらくクリストファー殿下も国王と王妃様の間に生まれなければ、もっと自由に好きな道を歩めただろうに、賢王の呼び名が高い父親を持ってプレッシャーは計り知れない。
その結果、クリストファー殿下がやらなければいけない仕事のしわ寄せが一気にアンジェリーヌへと流れてしまう。
お妃教育だけでも大変なのに、その上、国政の問題の是非の判断までしなくてはならなくなる。
そんな時、国王陛下は、よくアンジェリーヌの元を訪ねてくださる。もちろんそれは、娘として気を遣っていただけているわけだけど、当時のアンジェリーヌはまだ幼くて、本当はどういった意味で訪ねてこられるかなどの真意を考えたことすらなかっただけかもしれない。案外、あわよくばという下心で訪ねてきてくださっていたのかもしれない。
王妃様を失くされてから、一人の側妃も身近に置くことをなさらないから、きっとお寂しかったのだろうか?
というか、バカ息子の存在がそうさせなかったのではないかと思う。
もし、バカ息子以外の息子ができてしまい、バカ息子を廃嫡せねばならないときが来た時、生きている王妃の発言力が大きくなる。
それだけ亡き王妃様のことを愛していらっしゃったからなのではと思う。
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時は流れ、学園に入学する頃には、すっかりバカのいっちょ前が出来上がってしまっていた。
クリストファー殿下は、バカの癖にプライドだけは高く俺様気取りでなんでもアンジェリーヌに命令してくる。
アンジェリーヌは、この頃にはすでに王宮を退去し、マキャベリ公爵家のタウンハウスから学園に通うことになったのであるが、その通学経路についてもイチャモンを付けてくる有り様で、救いようがないバカに成長していた。
王宮を退去するには、条件があり、お妃教育の終了を意味する。成人した年頃の男女が一つ屋根の下に暮らすということに問題があると判断され、結婚式が済むまでの3年間は別居状態に入るということ。
その間に実家に戻り、花嫁修業らしきことをせよという意味なのだろうが、亡き王妃様は、手芸に励んでいらっしゃったとかで、アンジェリーヌも里帰りしてからは、いそいそと刺繍にレース編みに、とせっせと手を動かしている。
それにもしもの時のために、調理も覚えておいた方がいいということで、料理長に頼み、厨房で簡単なお料理の手ほどきを受けている。
それにいざとなった時、王子を連れて逃げ出さないといけないことがあるかもしれないから剣術の稽古と乗馬の訓練と余念がない。
幼いとき、あれほど乗馬がしたいとせがんでも、はしたないと言われ、させてもらえなかったのに、今では、乗馬服まで誂えてもらって、ドレスでの横乗りから騎乗まで、何でも乗りこなすようになっている。
そうして準備万端調って、入学式を迎えた時、新入生代表の挨拶がクリストファー王太子殿下のはずが、急遽、アンジェリーヌにお鉢が回ってきてしまい、面食らったことこの上なし。
アンジェリーヌはいつものことだと、半ばあきらめているが、学園長は、どうしても譲れないらしく、そのあたりの折衝から丸投げされてしまったのだ。
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