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公爵令嬢ルイーズ・メゾネット16歳は、お妃教育の帰り、婚約者の王太子フレッド殿下の居住空間である中宮を通りがかる。
今日は、ダンスレッスンの日で、パートナー役を務めるはずのフレッド殿下が終ぞ、来なかったため、文句のひとつも言ってやろうと中宮に入っていく。
廊下を歩くと何やら悩まし気な声が聞こえてくる。
いつもなら、護衛の騎士が見張り番をしているはずなのに、なぜか今日は誰も廊下に出ていない。
ふと見ると、王太子殿下の御部屋の前も、いない。ここの警備は一体どうなっているのかしら?訝しげにフレッド殿下の部屋に近づくと扉は施錠されていなく、半開き状態になっていた。
あの悩まし気な声も、この部屋から漏れていたのだとわかる。
「あっはっ……っ……ん……あっはっ……っ……ん……」
「お前は、ほんとイヤらしいカラダをしているな。もう、ほらグチョグチョだぞ」
「どうか、お許しを……あっはっ……っ……ん……んん……ルイーズ様に知れたら申し訳なく……あっはっ……っ……ん……」
「あんなビスクドールのような女は、抱いてもおもしろくない。あの吊り上がった眼を見て見ろ、どう見ても、あれは魔女の眼だ。オイオイ、そんなに煽るな」
なんですって!ビスクドールに、魔女の眼とは!?人がせっかく苦労して、お妃教育を受けてやっているというのに!
自分は、侍女とイチャイチャ浮気ですかっ!
腹が立ったルイーズは、扉を蹴破り、わざとコツコツとハイヒールの音を響かせながら歩いても、当の本人たちは、情事に夢中で、気づかない。
何がイヤよ、イヤよ、よ。それでは、まるで好きで、もっとしてと強請っているようなものではないの!
ルイーズは、どちらに制裁を与えようか、考えるが、こちらに向けてマヌケな白い尻が昂っているのをみて、つい、そのふくらみにケリを入れる。
ダンスのために履いてきたピンヒールのかかとがズボっと食い込んだような感覚がしたけど、お構いなしに引き抜く。
さすがに、ここまでされたら、フレッドは気づいて、思わず振り向くも、侍女のカラダを離せない。というより、侍女のナカから抜けない?
「痛っ!……お。おま……い、いや、違うんだ。これは閨教育の一環で……その……」
「誰がビスクドールですってぇー、誰が魔女の眼ですってぇー!」
「い、いや、いや、違うんだ。待ってくれ、ルイーズ!」
ルイーズは激怒しながら、フレッドの部屋にあったクッションを二人に向かって投げつける。
そして、フレッドの部屋の奥まで行き、バルコニーへと通じる扉を開ける。
「待て。落ち着け。ルイーズ、待って」
この期に及んで、まだトロンとした目つきをしている侍女を放り出し、素っ裸のままで追いかけてくる。
腰には、辛うじて、白いシーツが巻き付いているが、シーツを抑えながらのため風が吹くと、肝心なものは丸見えになる。
追いかけてこられれば、逃げたくなるのが性分で。
ついに、逃げ場を失ってしまったルイーゼに残された道は、ただひとつ、ビルの5階はあるという高さから落ちたら、確実に死ねるのだろうか?
その瞬間、ルイーズは、空を飛んでいた。
今日は、ダンスレッスンの日で、パートナー役を務めるはずのフレッド殿下が終ぞ、来なかったため、文句のひとつも言ってやろうと中宮に入っていく。
廊下を歩くと何やら悩まし気な声が聞こえてくる。
いつもなら、護衛の騎士が見張り番をしているはずなのに、なぜか今日は誰も廊下に出ていない。
ふと見ると、王太子殿下の御部屋の前も、いない。ここの警備は一体どうなっているのかしら?訝しげにフレッド殿下の部屋に近づくと扉は施錠されていなく、半開き状態になっていた。
あの悩まし気な声も、この部屋から漏れていたのだとわかる。
「あっはっ……っ……ん……あっはっ……っ……ん……」
「お前は、ほんとイヤらしいカラダをしているな。もう、ほらグチョグチョだぞ」
「どうか、お許しを……あっはっ……っ……ん……んん……ルイーズ様に知れたら申し訳なく……あっはっ……っ……ん……」
「あんなビスクドールのような女は、抱いてもおもしろくない。あの吊り上がった眼を見て見ろ、どう見ても、あれは魔女の眼だ。オイオイ、そんなに煽るな」
なんですって!ビスクドールに、魔女の眼とは!?人がせっかく苦労して、お妃教育を受けてやっているというのに!
自分は、侍女とイチャイチャ浮気ですかっ!
腹が立ったルイーズは、扉を蹴破り、わざとコツコツとハイヒールの音を響かせながら歩いても、当の本人たちは、情事に夢中で、気づかない。
何がイヤよ、イヤよ、よ。それでは、まるで好きで、もっとしてと強請っているようなものではないの!
ルイーズは、どちらに制裁を与えようか、考えるが、こちらに向けてマヌケな白い尻が昂っているのをみて、つい、そのふくらみにケリを入れる。
ダンスのために履いてきたピンヒールのかかとがズボっと食い込んだような感覚がしたけど、お構いなしに引き抜く。
さすがに、ここまでされたら、フレッドは気づいて、思わず振り向くも、侍女のカラダを離せない。というより、侍女のナカから抜けない?
「痛っ!……お。おま……い、いや、違うんだ。これは閨教育の一環で……その……」
「誰がビスクドールですってぇー、誰が魔女の眼ですってぇー!」
「い、いや、いや、違うんだ。待ってくれ、ルイーズ!」
ルイーズは激怒しながら、フレッドの部屋にあったクッションを二人に向かって投げつける。
そして、フレッドの部屋の奥まで行き、バルコニーへと通じる扉を開ける。
「待て。落ち着け。ルイーズ、待って」
この期に及んで、まだトロンとした目つきをしている侍女を放り出し、素っ裸のままで追いかけてくる。
腰には、辛うじて、白いシーツが巻き付いているが、シーツを抑えながらのため風が吹くと、肝心なものは丸見えになる。
追いかけてこられれば、逃げたくなるのが性分で。
ついに、逃げ場を失ってしまったルイーゼに残された道は、ただひとつ、ビルの5階はあるという高さから落ちたら、確実に死ねるのだろうか?
その瞬間、ルイーズは、空を飛んでいた。
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