裏口診療所 ~貧乏医者、現代医療で成り上がり

青の雀

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江戸時代編

2.井戸クリニック

 インフルエンザ予防注射の季節到来である。
 今週から、京都市では、60歳以上の予防接種が解禁になり、朝から大賑わいだ。
 1本4000円のワクチンが飛ぶように売れる?してくれと言われる。

 中には、2回注射してくれと言われることがある。そういう時は、3週間後に予約を入れて、再び受診してもらう。
 だいたい10日から2週間ぐらいで抗体ができる。

 複数回打つとインフルエンザにかかりにくくなり、もし、かかってもすぐ治る。

 医療関係者は、3か月に1回注射を打つ念の入れようだ。

 65歳以上の高齢者で一定所得以下の者は、1本2000円で受けられ、さらに高齢者になると無料になる。

 午前の診療は終わった。

 一息入れて、コーヒーを飲んでいると、妻から食事の支度ができたと声がかかった。

 「お父さん、長屋の人たちにもワクチン打っといたほうが、どうかしら?」

 「うーん。裏口がインフルエンザ禍したら、困るな。」

 「今年は、多目にワクチンを仕入れたから、いっちょサービスしとくか」

 午後から、長屋のみんなに集まってもらうように、裏口で叫んだ。
 全員が集まったのは、結局、夕方だった。
 昼間は、仕事でみんな出払っている。

 普通の注射でなくインフルエンザのワクチンは、医者でないと注射ができない。原則は。開業医の中には、看護師にさせているところも一部ある。医師が高齢で手が震えるなどの理由からだ。俺はまだ自分で打てる。

 今日は、夜の診療がない時なので、長屋の連中を一人ずつ診察室へ招き入れた。

 長屋の連中は、昼間以上の明るさの白い部屋に驚いた。丸いスツールに座らせ、二の腕をチューブ管で縛り肩口のところをアルコール綿で消毒するのは、妻だ。
 用意ができたら俺がワクチンを注射していく。

 「はい、チクっとしますよ。はい、大丈夫です。お疲れさまでした。」
 小さい子供は、驚いて泣き出したので、キャラメルをやったら、すぐ泣き止んだ。
 大の男が針を見ただけで、暴れるので押さえつけるのに苦労した。チョコレートを食べさせてやったらおとなしくなった。

 長屋の全員に注射し終わってから、「今夜は風呂へ入ってはいけません。酒も今夜は飲んではいけません。」と注意事項を説明した。

 「今年は、流行り病にかかる心配が減りました。」と告げて、全員を帰した。

 それからは、ちょくちょく裏口診療所に人が来た。
 珍しい菓子が食えると噂になったらしい。

 俺ん家は菓子屋じゃねぇぞ、と怒ったが長屋の連中が健康になってくれるのだから、いいと思った。

 その菓子を用意してくれるのは愛妻、だから文句が言えないのは、仕方がない。
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