裏口診療所 ~貧乏医者、現代医療で成り上がり

青の雀

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江戸時代編

4.タミフル

 裏口長屋(俺ん家の裏口の前にあるから、これからそう呼ぶ)の住人が奉公している先のお店の主人が流行り風邪にかかったらしい。
 この時代、インフルエンザにかかるとほぼ間違いなく死に至る。

 しかし、俺は往診に行けない。裏口から出られないのだ。
 現代のクリニックの玄関から出て、路地を通って裏口に周っても、そこは、現代の京都であり、江戸時代の京ではない。

 お店の主人を裏口まで連れてきてもらうしか、診察、検査ができない。
 俺は、江戸時代の住人ではない。非力なのだ。

 もし、連れてくるなら、身体を冷やさないように布団に包んで暖めて、来させるように、それと現代のアベノマスクを渡し、口もとにこれで覆うように伝えた。

 裏口長屋の連中が奉公先のお店の内儀を説得して、主人を戸板に乗せて、裏口まで運んできた。主人の顔色は、悪く死にかけ状態であった。

 とにかく主人を入院させることにした。内儀は主人に付き添うと言うので、よく消毒させてから入室を認めた。
 エアコンをつけ部屋を暖め、水分を取らせ、点滴をした。点滴は食事の代わりで、主にぶどう糖液である。
 
 俺は、タミフルなどの経口薬を使うか、吸入するか、注射を静脈に打つか迷った。いずれも副作用があるから。内儀に決めさせてもいいが、どうせ言っても理解できないだろう。

 抗インフルエンザウィルス薬ペラ〇ビルを点滴に混ぜた。注射の代わりである。即効性があり、体力が落ちた患者には有効である。約300~400年後の薬が効くと信じている。

 内儀は心配そうに見つめていた主人の息が安定してきたのを認め、お礼を述べた。
 聞けば、主人は婿養子で先代(内儀の父)が見込んだ相手だそうだ。もし、主人に何かあれば、同業者にあっという間に店を乗っ取られるか、また誰かと結婚しなければならないそうだ。誰かと結婚したとしても、先代がなくなった今では、家付き娘だった自分を大事にしてくれるかどうかわからないし、追い出されて後添いをもらうかもしれない。そうなると先祖代々の店が店でなくなり、ご先祖様に顔向けができないという話を、延々聞かされた。

 俺は、「はぁ、そうですか。」としか言いようがない。

 妻が食事の用意ができた。と呼びに来てくれて、ほっとした。
 食事は、もちろん内儀の分もある。
 今日のメニューは、ハンバーグ♪キャベツの千切りとポテトサラダ、豆腐とわかめの味噌汁、ご飯、デザートはリンゴだ。
 こういう和洋折衷の料理が好きだ。

 内儀は、見たこともない料理だが、妙に食欲がそそるニオイにそわそわしている。

 俺が「いただきまーす。」と言って食べ始めた。妻も同様に「いただきます」と食べた。それから、ようやく食べ方がわかったのか恐る恐る、口をつけた。

 「美味しいです。どうやって作るのですか?」作り方を妻に聞き出していた。

 その日は、病室の隣の部屋のベッドで泊ってもらった。一応、バス、トイレ付きの個室です。部屋代はいりません。ナースコールを渡して何かあれば、これを押してくださいと付け加えた。
 バスとトイレの使い方だけ教えて、私たちも休んだ。
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