3 / 18
3 かつ丼
しおりを挟む
今日は、なんとなく豚肉の生姜焼きが食べたい。単なる個人的趣味だけど、前世の我が子が好きだったとんかつも併せて作ってみることにする。生姜焼きの豚肉は薄切りロースなんだけど、なんとなく、ヒレが食べたいと念じてみたら、ヒレの塊が落ちてきたので、とんかつと一口ヒレカツも作ってみることにしたのである。
とんかつには、冷えたビールが美味しい。
ついでに豚の角煮も作ろう。圧力鍋があるから、これも簡単にできる。角煮には、日本酒が合う。
生姜焼きのお供は何と言っても白い炊き立てご飯が合う。豚肉と水菜のハリハリ鍋もいいかもしれない。お酒は、やはり日本酒が合うと思う。
とんかつを作るのならば、かつ丼も作らなきゃね。卵を割りほぐし準備をしていく。玉ねぎを刻んでいると涙が出てくる。
玉ねぎを刻んで泣いていたら、まだ準備中にもかかわらず、ご新規のお客様がそっとハンカチを差し出してくれたので驚く。
玉ねぎの刻むことにより細胞が壊れ、硫化アリルという物質が鼻や目の粘膜を刺激して起こるのだが、この世界の人はそんなこと知らないだろうけど。それにしてもどこから入ったのかしら。外には、護衛の騎士がいるはずで入れないのだけど。
「開店までまだですが、何か飲みますか?それとも食べます?」
昨日の残り物のぶり大根と日本酒を提供したのである。
「いや、扉が開いていたので、いい匂いがしていたからのぞいただけですし、そうしたら君が泣いていたので、ビックリして……。せっかくだからいただこう。」
「泣いていたのではなくて、玉ねぎを刻むと生理現象で涙が出るのですよ。」
「そうなんだ。この魚も大根も美味しい。」
「うふ、その魚はブリと言って出世魚と呼ばれるものなのですよ。」
「ほう、魚でも出世するのですか?」
「名前が大きく成長するにつれて、どんどん変わっていくのね。縁起がいい魚だから、召し上がってください。」
「今日の料理は豚肉を使ったものです。よければとんかつやかつ丼、これは勝つに掛けているので、何か勝負事などに縁起がいい食べ物ですよ。」
「この店は、縁起がいい名前の料理がたくさん出てくるのですね。」
そういえば、前世の夫が、料理で人生の機運を変えるみたいなことを言っていたな……、彼は今頃どうしているのかしら。一度は、たぶん愛し合って結婚したのだろう。名前も顔も全然思い出さないけど、もみじや梅の花が咲くと、料理に活かせないか、いろいろ考えていた後ろ姿だけが印象的によく覚えているが、それ以外は、サッパリ忘れている。
結局、ご新規のお客様は、その後もずっと店の中に居続け、いろいろとおしゃべりをしたわ。若い男性だから、今が一番、食べごろ?変な意味じゃないよ。
ミドルティーンから、そうね。30歳前半ぐらいまでの男性は、めちゃくちゃ食べる。それぐらいの男性が家にいると家計を圧迫するかと思うほど、よく食べる。一番身体ができる年頃なのかもしれない。
ご新規様は、ぶり大根を食べた後、シュークリームにマカロン、プリンを食べてコーヒーを入れてあげると、「変わったお茶ですか?」
「これは、茶葉ではありません。ある豆を粉にしたものを焙煎してできた飲み物です。お好みでお砂糖やミルク、牛の乳を入れて召し上がってくださいね。カフェインが含まれているので、朝飲むとシャキっと目が覚めます。」
「代金はいかほど支払えばいいですか?」
「ああ、これは昨夜の残り物と賄いなので、いりませんよ。わたくしのおやつみたいなものですから、だけどとんかつやかつ丼は1食銀貨1枚いただきますわ。お酒は、一杯銅貨6枚です。ぶり大根と一緒にお出ししたお酒は、サービスです。」
「いいんですか?こんなにごちそうになって。ありがたくいただいておきます。私は隣国からの旅人で、しばらくこちらで滞在する予定です。ディヴィッドと申す若輩者です。レディのお料理を大変気に入りました。できれば、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「わたくしは、この店のオーナーで、ミルフィーユ・マドレーヌと申します。それで、マドレーヌ亭と店の名前ですわ。またのお越しをお待ち申し上げています。ハンカチどうもありがとうございます。明日まで、お預かりさせていただきますわ。」
ディヴィッド様は、せっかくだからと、かつ丼も召し上がられて、上機嫌で帰って行かれたわ。
その日また、仕事帰りに王宮の兵士や騎士がわんさか来てくださって、平穏な一日が終わりました。とんかつにビールの組み合わせがよく、たくさん売れましたわ。商売繁盛で何よりです。
とんかつには、冷えたビールが美味しい。
ついでに豚の角煮も作ろう。圧力鍋があるから、これも簡単にできる。角煮には、日本酒が合う。
生姜焼きのお供は何と言っても白い炊き立てご飯が合う。豚肉と水菜のハリハリ鍋もいいかもしれない。お酒は、やはり日本酒が合うと思う。
とんかつを作るのならば、かつ丼も作らなきゃね。卵を割りほぐし準備をしていく。玉ねぎを刻んでいると涙が出てくる。
玉ねぎを刻んで泣いていたら、まだ準備中にもかかわらず、ご新規のお客様がそっとハンカチを差し出してくれたので驚く。
玉ねぎの刻むことにより細胞が壊れ、硫化アリルという物質が鼻や目の粘膜を刺激して起こるのだが、この世界の人はそんなこと知らないだろうけど。それにしてもどこから入ったのかしら。外には、護衛の騎士がいるはずで入れないのだけど。
「開店までまだですが、何か飲みますか?それとも食べます?」
昨日の残り物のぶり大根と日本酒を提供したのである。
「いや、扉が開いていたので、いい匂いがしていたからのぞいただけですし、そうしたら君が泣いていたので、ビックリして……。せっかくだからいただこう。」
「泣いていたのではなくて、玉ねぎを刻むと生理現象で涙が出るのですよ。」
「そうなんだ。この魚も大根も美味しい。」
「うふ、その魚はブリと言って出世魚と呼ばれるものなのですよ。」
「ほう、魚でも出世するのですか?」
「名前が大きく成長するにつれて、どんどん変わっていくのね。縁起がいい魚だから、召し上がってください。」
「今日の料理は豚肉を使ったものです。よければとんかつやかつ丼、これは勝つに掛けているので、何か勝負事などに縁起がいい食べ物ですよ。」
「この店は、縁起がいい名前の料理がたくさん出てくるのですね。」
そういえば、前世の夫が、料理で人生の機運を変えるみたいなことを言っていたな……、彼は今頃どうしているのかしら。一度は、たぶん愛し合って結婚したのだろう。名前も顔も全然思い出さないけど、もみじや梅の花が咲くと、料理に活かせないか、いろいろ考えていた後ろ姿だけが印象的によく覚えているが、それ以外は、サッパリ忘れている。
結局、ご新規のお客様は、その後もずっと店の中に居続け、いろいろとおしゃべりをしたわ。若い男性だから、今が一番、食べごろ?変な意味じゃないよ。
ミドルティーンから、そうね。30歳前半ぐらいまでの男性は、めちゃくちゃ食べる。それぐらいの男性が家にいると家計を圧迫するかと思うほど、よく食べる。一番身体ができる年頃なのかもしれない。
ご新規様は、ぶり大根を食べた後、シュークリームにマカロン、プリンを食べてコーヒーを入れてあげると、「変わったお茶ですか?」
「これは、茶葉ではありません。ある豆を粉にしたものを焙煎してできた飲み物です。お好みでお砂糖やミルク、牛の乳を入れて召し上がってくださいね。カフェインが含まれているので、朝飲むとシャキっと目が覚めます。」
「代金はいかほど支払えばいいですか?」
「ああ、これは昨夜の残り物と賄いなので、いりませんよ。わたくしのおやつみたいなものですから、だけどとんかつやかつ丼は1食銀貨1枚いただきますわ。お酒は、一杯銅貨6枚です。ぶり大根と一緒にお出ししたお酒は、サービスです。」
「いいんですか?こんなにごちそうになって。ありがたくいただいておきます。私は隣国からの旅人で、しばらくこちらで滞在する予定です。ディヴィッドと申す若輩者です。レディのお料理を大変気に入りました。できれば、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「わたくしは、この店のオーナーで、ミルフィーユ・マドレーヌと申します。それで、マドレーヌ亭と店の名前ですわ。またのお越しをお待ち申し上げています。ハンカチどうもありがとうございます。明日まで、お預かりさせていただきますわ。」
ディヴィッド様は、せっかくだからと、かつ丼も召し上がられて、上機嫌で帰って行かれたわ。
その日また、仕事帰りに王宮の兵士や騎士がわんさか来てくださって、平穏な一日が終わりました。とんかつにビールの組み合わせがよく、たくさん売れましたわ。商売繁盛で何よりです。
2
あなたにおすすめの小説
離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています
鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」
そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。
お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。
「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」
あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。
「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。
戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」
――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。
彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。
「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」
「……本当に、離婚したいのか?」
最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。
やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。
【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜
きゅちゃん
恋愛
名門エルトリア公爵家レオンと婚約していた伯爵令嬢のエレナ・ローズウッドは、レオンから婚約破棄を宣言される。屈辱に震えるエレナだが、その瞬間、彼女にしか見えない精霊王アキュラが現れて...?!地味で魔法の才能にも恵まれなかったエレナが、新たな自分と恋を見つけていくうちに、大冒険に巻き込まれてしまう物語。
冷徹婚約者に追放された令嬢、異国の辺境で最強公爵に見初められ、今さら「帰ってきて」と泣かれてももう遅い
nacat
恋愛
婚約者である王太子に濡れ衣を着せられ、断罪の末に国外追放された伯爵令嬢レティシア。
絶望の果てにたどり着いた辺境の国で、孤高と噂の公爵に助けられる。
彼は彼女に穏やかに微笑み、たった一言「ここにいなさい」と囁いた。
やがてレティシアは、その地で新しい居場所と愛を見つける。
だが、彼女を見捨てた王太子が、後悔と未練を胸に彼女を追って現れて――。
「どうか許してくれ、レティシア……!」
もう遅い。彼女は優しく強くなって、誰より愛される人生を歩き始めていた。
婚約破棄された悪役令嬢、放浪先で最強公爵に溺愛される
鍛高譚
恋愛
「スカーレット・ヨーク、お前との婚約は破棄する!」
王太子アルバートの突然の宣言により、伯爵令嬢スカーレットの人生は一変した。
すべては“聖女”を名乗る平民アメリアの企み。でっち上げられた罪で糾弾され、名誉を失い、実家からも追放されてしまう。
頼る宛もなく王都をさまよった彼女は、行き倒れ寸前のところを隣国ルーヴェル王国の公爵、ゼイン・ファーガスに救われる。
「……しばらく俺のもとで休め。安全は保証する」
冷徹な印象とは裏腹に、ゼインはスカーレットを庇護し、“形だけの婚約者”として身を守ってくれることに。
公爵家で静かな日々を過ごすうちに、スカーレットの聡明さや誇り高さは次第に評価され、彼女自身もゼインに心惹かれていく。
だがその裏で、王太子とアメリアの暴走は止まらず、スカーレットの両親までもが処刑の危機に――!
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
「冷酷で理屈っぽい」と捨てられましたが、この国を影から支えていたの、実は私なんです
水上
恋愛
【全7話完結】
「冷酷で理屈っぽい」
そう断じられ婚約破棄されたヴィオラ。
しかし、追放先の辺境で、その知識を用いて泥沼の街道を舗装し、極上のチーズや保湿クリームを開発して大活躍!
一方、彼女を捨てたことで、王都では様々な問題が発生する。
馬車が揺れを制御できなくなり、隣国の大使が王都で嘔吐。
それが外交問題に発展して……。
毒と薬は使いよう〜辺境の毒りんご姫は側室候補となりました
和島逆
恋愛
辺境の令嬢シャノンには、毒りんごを生み出す異能があった。
「辺境の毒りんご姫」と呼ばれる彼女を警戒し、国王ランベルトは側室候補としてシャノンを王都に召喚する。初対面から彼女を威圧し、本音を探ろうとするランベルトだったが──
「この毒りんごに、他者を殺める力はございません」
「わたくしは決して毒好きなわけではなく、わたくしが愛でているのはあくまで毒りんごなのです」
ランベルトの予想はことごとく外れ、いつの間にかマイペースな彼女にすっかり振り回されていくのであった。
前世は、座敷わらしの末裔でした。婚約破棄、追放されました……お家が滅亡しても知りません。
鷹 綾
恋愛
『前世は、座敷わらしの末裔でした。婚約破棄、追放されました……お家が滅亡しても知りません。
> 「福をもたらす家には、必ず“わらし”がいる。」
そう言われてきた古い言い伝え――
けれど、この令嬢が“本物”だったなんて、誰が信じただろう?
──侯爵令嬢ユーフィリア・ローゼンベルク。
幼い頃から“福を呼ぶ娘”と噂され、人も作物も彼女のそばではなぜか笑顔になる。
だが、その“幸福体質”はいつしか嫉妬の対象となり、
ついには王太子から婚約破棄を突きつけられる。
「君のような不気味な女、もううんざりだ!」
「そうですか。では……どうぞお幸せに。
――わたくしの“福”は、もうあなたにはあげませんわ。」
その夜、ユーフィリアは静かに家を去る。
しかし、彼女が出ていったその瞬間――
ローゼンベルク家はまるで呪われたように没落していく。
食糧庫は腐り、金庫は空になり、家臣たちは次々に離反。
けれどユーフィリアは言う。
> 「あら、お家が滅亡しても知りませんわ。
“福”は、感謝する者のもとにしか残らないものですから。」
追放の末、彼女が流れ着いた辺境の村で起こる奇跡。
枯れた畑に花が咲き、貧民街の子どもたちに笑顔が戻る。
そして出会うのは――かつての婚約者とは違う、“真に福を信じる王”。
「貴女がいるだけで、国が光に包まれる。
その力を“呪い”ではなく、“祝福”と呼びたい。」
やがて明かされる真実。
ユーフィリアの前世は、
かつてこの世界に“幸福”をもたらした座敷わらしの末裔だった――。
滅びた家も、失われた名誉も、もう要らない。
彼女は笑って言う。
> 「わたくしの“福”は、誰かの笑顔でできていますの。」
やがて、彼女が撒いた小さな“福”は国を包み、
世界にまで届く“奇跡”へと変わっていく。
滅びから始まる、幸福の逆転劇。
愛も、運命も、全部ひっくり返す“座敷わらし令嬢”の物語――。
🌸 『前世、座敷わらしの末裔でした。婚約破棄されました……お家が滅亡しても知りません。』 🌸
> 失った家よりも、得た笑顔のほうが、ずっと大切。
これは、“福”で世界を変えた少女の優しいざまぁ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる